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被観察者視点

お久しぶりです

後方から足音を確認、人数は、1人。



…歩調は遅い、やや引きずっているようにも聞こえる…。


………音が止まった、…視線、こちらに向けて……凝視…その視線に敵意は……背中を向けているのでよくわからない。


だけど、今振り向くのはちょっと不味い気がする。なんとなくだけど。



『ここには、君が恐れるような上官も、君のことをあまり良く思っていなかった同僚も、君を殺そうとする敵軍も、みんなみーんな、いないんだよ!』



数時間前に、くろーばーという名の少女が自分にかけた言葉を思い出す。

ここは、彼女が作った新しい世界なんだそう。…あまり実感が無いというか、未だによく理解し切れていないが、"俺"という生き物がここに存在しているということは、つまりそういうことなんだと現状を受け止めるほかない。


だから、背後からの視線も、横にいる少女も、"そういうこと"なんだと一人勝手に理解し、受け止める。否定したところで状況は変わらないし、丸腰の俺には何も出来ない。


ぼんやりとそんなことを考えていると、横から小さなため息が聞こえてきた。


「……手、止まってるよ、おじさん」


やけに冷ややかな、だけど幼い声。視線を向けると、全長およそ俺の膝ほどしかなさそうな少女は、子供にしては気難しそうな表情を浮かべていた。…おじさん?


「まわりに気くばりができるのはとても良いこと。だけど、いまは、わたしとあそぶの。おしろ、つくれない。」


呆れたような、淡々とした口調で、少女が告げる。……おじさん?


「………あぁ、だから貴方はあの時死んでしまったのね、私を庇って、後ろから……、…。」


「君、何を言って…」


「ひがくれちゃう、続き続き」


「………」



………おじさん…………



……きっと、このやたら、図体が大きいのが、俺の実年齢をぼやかしてしまうんだろう。うん、きっとそうだ、そういうことにしておこう。ていうか、ここにいる時点で年齢とかもう関係ないんだったっけ。でも心はあの頃の、…あの頃?とにかく、若いつもり、ていうか若いはず。


…なんでこんなにもハッキリしないんだ、自分のことなのに…。



俺が口をもごもごさせながら沈思している間に、少女は砂を両手でかき集め、時折ぎゅっと小さな手で固めたりしつつ、自分の目の前に山を作っていった。


「どだいは、こんなかんじかな、ねぇ、ソルさん」


「…は、ぇ」


「どうしたの?」


「…いや、なんでもない…あぁ、うん、随分と立派な山になったなぁ。」


「ぜんぜん、まだまだこれからなんだから。しっかりてつだってよね、おじさん。」


やっていることは子供のお遊び。なのに俺は厳しい肉体労働の後に残業を強いられたような気分になった。


そして、先ほどまで感じていた視線のことなどすっかり忘れ、この少女(後でリーと名乗った)と日が暮れるまで、黙々と砂を寄せ集めては固め、寄せ集めては固め、を繰り返すこととなった(あとで砂だらけになってくろーばーに怒られた)。

もしかしたら消したり直したりするかもしれない

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