ひとまず全員集合にはまだ早い
棺桶に入って、もうどれくらいが経つだろうか。
ここに「時間」という概念は存在しないらしいから考えるだけ無駄、ではある。
しかし俺の体は現実世界にあった「時の流れ」を未だに記憶していて、それのどのあたりに今自分が存在するのか、とても気になっている。
しかしもう、それを教えてくれる人はいない。俺は、現実から離れた「生ける屍」なのだから。
多分。
考えるだけ無駄だとわかった昼間っぽい風景の公園、1人散歩をしてみる。
ヒトなど存在しないこの棺桶、ここに訪れるのは屍となった俺だけで、今のところ俺以外の屍は見かけてない。
そこのブランコは独りでに揺れたりしないし、シーソーもどちらかの端っこが上がった状態のまま。
いつもは誰もいない、ただ殺風景なだけの公園……娯楽が少ないこの棺桶での唯一のお気に入りの場所。
だけど今日はなんか違う、まるで今までそこに人がいたかのような形跡がちらほらと見える。…なんとなくだが。
それを視線でざっと辿ると人がいた。砂場のところに2人。
少し離れたところから観察をすることにした。
さっき話したように、ここにヒトが来ることはないらしいので、あの2人も、俺と同じ「生ける屍」なんだろう。
片方は、薄汚れた緑色のジャケットと似たような色のズボン、そして帽子を被っている…多分男、後ろからみてもすごいデカイ。
もう片方はかなりちっちゃい。紫色した髪に、薄黄色の衣類を着ている。髪の長さからして女児だろうと思われる、ちっちゃいし。
そして俺は、どう考えてもこれから先顔を合わせることになるだろう2人の背を眺めつつ、彼らに話しかけるか否かで少し迷っていた。
「……まぁ、いいか。」
3秒で接触を諦め、足音をあまり立てないようそっと公園を出ていく俺であった(情けない)。