飛び降りた先は棺桶
どうやら俺は死んだらしい。
頭に猫耳を生やした変態っぽいのからそういう感じのことを言われたのと、ついさっきまでの浮遊感が身体から離れないのとで、
「あぁ、やっぱり」
といった感じで他人事のように説明を聞いていた。
死んだ、といっても
今俺がいる場所は天国ではない。
そんならここは地獄か?と聞いたら
「違いますぅ〜だぷっぷくぷー」と馬鹿にされた(蹴り倒した)。
「ここはねぇ、仮想世界…ってやつ。私たちは、『仮想棺桶』って呼んでる!」
仮想棺桶
誰かが作った妄想の世界、
現実世界の劣化コピー。
現実から離れてしまった俺は、これからここで生ける屍として、この猫耳と生涯を共にしなくてはならないらしい。
…いやいやどうして俺がそんなところに。なんで普通に死なせてくれなかったんだよという嘆きは大人の事情とやらで聞いちゃくれなかったよどちくしょう。
「まぁでもさ、君がここに来るのは必然だったのだよ。そんなわけで、おかえり。」
「は、はぁ…?」
「もう現実には帰れない、なぜなら君は、棺桶に入った死体だから!!」
「…」
「どうせ帰りたくもないでしょ?ならいいじゃん、ね?」
「はぁ…」
そんなわけで、よくわからないまま俺は「仮想棺桶」の仲間入りを果たしたのだ。
ついでに名前とか誕生日とか、全部捨てなければいけないんだとかで、俺には新しく「芝生」という名前が付いた。
……普通に死んだ方がマシだった。