9話.和食と癒やしって大事だよね
「はぁー……どうしてこうなった」
「デスティニーよ。運命ね」
飛鳥は軽く頭痛を覚えつつ、アパートへと戻り始めた。朝ごはんの為に。
「そういえば、ケルベローズの他の姉妹ももしかして?」
「ああ、あの二人は………現地調達? こう、えいやってね? 見た目似てたし」
「………考えるのはやめとこ」
そんな比較的他愛のない会話をしながら戻ると、エプロンをつけた桜子が朝食を用意していた。ご飯に厚揚げとワカメのみそ汁、たまごに納豆、焼きジャケ、お漬物。見事なまでの和食である。
「瑠美ちゃん飛鳥ちん☆ おかーり☆ 今日の朝は和食だよー☆」
「はいはい、ただいま。いただきます」
「た、ただいま。桜子さんも料理出来たんですね」
「桜子はダンスやってるからじゃない?」
やはりダンスって凄い。
とりあえず、桜子はみそ汁に口をつけた。どうやらちゃんとダシを取っている深みのある味わいだ。厚揚げにもしっかりと味が染み込んでいる。焼きジャケはどうだろう? こちらも絶妙な焼き加減だ。ご飯もまるでかまどで炊いたかのような旨さだ。語彙力が足りないのが惜しい。
「うわ、美味し…」
「ほんと☆ うれすぃー☆」
「桜子、あなたこれだけ作れたのに、毎日作らせてたの?」
「いやー☆ 妥協出来なくて時間かかるからー☆」
一つ一つ丁寧な仕事が施された完成度の高い朝食が、飛鳥の疲れを癒やしていくかのようだ。
「そうだ、飛鳥。今日はとりあえず桜子と基礎知識をかためておきなさい。どうせあのプロデューサーまだ何も教えてくれてないんでしょ?」
「そういや、何も聞いてないや」
「私はちょっとお仕事があるから、桜子よろしくね」
「はーい☆」
瑠美の仕事ってなんだろう? と疑問に思った飛鳥は思い切って聞いてみた。
「ねぇ、瑠美のお仕事ってなに?」
「い、いいいいえるわけないでしょ!!」
「円盤のジャケとIVの撮影だよねー☆」
「桜子!!!」
IV。イメージビデオである。確かに瑠美にとって、飛鳥にバレることはなかなかの恥ずかしさとも言える。健全ではあるがフェチぃイメージ溢れる仕事だ。少なくても、飛鳥と瑠美の中での印象は、としておく。
そのせいか、夜から朝を思い出して、飛鳥は赤面して俯くしかなかった。
「飛鳥ちん、むっつりー?☆」
「ち、ちがうしっ!!」