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《プロローグ》凄腕スナイパー、職業引き篭りです。(修正完了

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 誰でも一度は思った事は無いだろうか・・・もしも、自分が他の世界に行けたら?

 これを読んでいる、人の中に僕と同じ境遇にあった人がいるのならこうも思うだろう。

 

 《どうして、こんな世界に生まれてしまったんだろう》


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 薄暗い部屋の中、パソコンの起動音とキーボードを操作する音だけが虚しく響く。

 

 そんな薄暗く小さな鳥籠の様な部屋で、もう彼此3年来の付き合いになる、赤いジャージと、黒いフレームのメガネを掛けた一人の少年が、黙々と正面のディスプレイと向かい合っていた。

 

 少年がキーボードの操作を初めて、しばらくすると部屋の中を銃声や爆発音が包み込んだ。

 ディスプレイに映し出されているのは、銃を持った男たちがぞろぞろと道を進む光景だった。

 彼が今、やっているのは俗に言うFPSと言われる、戦場の一兵卒となり、戦場を駆け回るという、主観型の戦場シュミレーションゲームだ。


 少年は同じ戦場を共有する、仲間達と物陰に隠れ、応戦しながら徐々に敵陣のある市街地の中心へ向かって少しずつ侵攻していくが、相手側も負けじと弾幕を貼り、こちらの進軍を妨害する。

 

 そんな、両陣一歩も引かない激戦の中、ある異変が起こった。

 

「・・・ハァ~・・・・」

 

 少年は、ディスプレイの光景を見て、思わず溜息をついてしまう。

 

 ゲーム画面には、通常のシステムでは実行不可能な速度で動く、敵兵が数人現れ。その一人が少年の操るキャラクターを一瞬の内に屠っていった。

 そして、彼らはその後も次々とフィールド内のプレイヤー達を蹂躙していくのだ。

 

「・・・また、チーターか・・・」

 少年はその光景を見て、静かに呟くと。再度深いため息を吐いた。


 チーターとは、ゲームのシステムに特殊なプログラムを使うことで、通常は有り得ない速度で動いたり。

 壁を透化またはオートエイム(自動照準)などチートと呼ばれる行為する連中だ。

 FPSにおいてプレーヤーが一番忌み嫌う者である。


(速度上昇、それ以外には特に壁抜けとかもしてないな・・・だったら、何とかなるかな。

 普通なら、部屋変えればいいだけの話なんだけど――)


 「今日は、あのバカとの試合も控えてるし・・肩慣らしにちょうどいいかな」 


 少年は誰に言うでもなく一人そう呟くと、穏やかで幼さが残る童顔の容姿に似合わない。

 不敵な笑みでメガネを外すと、少年は自分の目に意識を向ける。

 すると、少年の目は瞳孔を開き、その中心から三日月が浮き上がった。

 少年の目に三日月が浮き上がると同時に、時は歩みを遅め。動くもの全てに緩慢を齎した。


 その光景を眺めて少年改め、柚姫(ゆずき) (コウ)は、その何処か愛らしい小動物の様な容姿には似合わない。皮肉げに浮かべた笑をさらに深くした。


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 自分曰く、柚木 コウと言う人間には誇れるような、特筆した才も無く。

 取り分け頭が良い訳でも無い、勿論、自分の事をイケメンだと思った事もないし。

 人生=彼女いない歴に加え、顔を合わせるだけで罵詈雑言を浴びせられる事が日常な自分がモテるとは、到底思わない。

 そもそも、恋愛関係に差して興味も無い。

 別に、僻みじゃないよ?僕は美女を遠くから愛でるだけで、精神的に満足すると言う。俗に言う少食系だから、僻みじゃない.....と、思いたいです。

 

 話が逸れたので、本題に戻るとする、

 更に僕は人と話すのが苦手で、集団行動と言う物にとことん向いていない。そもそも、人と話すのが凄く疲れるので、余り他人と関わりたくない。

 話し掛けられて、応じただけで「声が小さい」とか「もっと、ハッキリ喋れ」とか、言われても。こっちとしては、どうすれば人と話せる様になるのか、逆に教えて欲しい。

 おまけに、昔から虐めを受けているせいで、人と話すとどうしても表情を消してしまうと言う、変な癖が付いてしまった。

 その結果として、第一印象は「暗い」、「ネクラ」、「ハムスターにも負けそう」と、本当に負のループとはこういう事を言うのかと、頭を抱えたくなる。


 だが、こんな僕にも一つだけ、普通の人とは違う。

 ある、特殊能力がある。


 それは、僕の両目に宿る。

 常人を域を超越した、動体視力似た能力の事を指す。

 なぜ敢えて、特殊能力というのか。それは通常の動体視力と効果はほとんど同じなのだが、決定的に違う点があるからだ。

 通常、動体視力というのは動くものを捉える能力の事を指す。

 例えば、遠くから野球ボールが飛んでくるとする。それを人は最初見た時、そのボールを合わせて目に映る全てを捉えて、その中から此方に飛んでくるボールを識別するのだが。この目は視覚で捉えた物、動く、動かざる関係なく。全てを捉えて、その動きを把握する。

 それは、あたかも時の流れが遅くなったかの様に感じるのだ。


 だが、時間自体が遅くなったわけではない。飽くまで見る事が出来るのであって、自分の動きも周りと変わらない、スローにかかったようにゆっくりと動くのだ。

 反応しようにも、気持ち悪いぐらい。体へのラグが生じる為に、目で捉えて動こうとした時には既にボールは自分の眼前に迫っている。

 まさに、見えるだけの能力だった。


 厨二病を発症した時は、それはもうこの目を使って色々した。

 この、能力に『隼神の(ホルス・オクルス)』とか言う、意味わからない名前をつけて、「フッ、俺は時を制する男だ」とか色々やってた。


 家族の前で、父さんの外套を纏って演説した時の、あの家族全員の生暖かい目を見て、一瞬で夢から覚めたけどねッ!


 だけど、こんな目を持っていても現実は変わらない。

 最高の目を持つ代わりに、僕には最悪と言っていい。ある欠点を抱えていた。

 それは――僕が生れ付き、どうしようも無い程の運動音痴だったからだ。


 道を歩けば、何もないところで転び。

 走ればキモがられる程の醜いフォームを実現させ。

 体育では皆から嘲笑の的にされる。


 過去に、サッカー、野球、剣道、卓球、弓道、何か自分でも出来る物が無いかと色々試して努力もしたが、結果は見えているだけ、体が全く付いて来ないのだ。

 そのせいで、中学では部活で虐められ、高校に入ってからも一年の体育祭でクラスの足を引っ張り、虐められる原因になってしまった。

 でも、どうしても諦めたくなくて、何とか周りを見返してやりたくて。

 高校二年の体育祭に向けて、必死に努力した。毎日”吐きながら”走り込みをして、反射神経を上げる為に必死に成って練習もした。


 でも、ダメだった、体育祭のメインとも言えるクラス対抗リレーの時。

 周りから、僕への野次が飛ばされてる。

 そんな、中で僕はこれまでの努力を見せようと全力で走った。

 必死過ぎて、周りから笑われている事も気にならないぐらい、必死に走った。

 でも、どれだけ、努力しても結果は変わらなかった。

 あれだけ努力したのに、ダントツの最下位。その時、僕の中で何かが折れた音がした。多分アレが心が折れる音だったんだと思う。


 それからは、本当に何もやる気が湧かなくて、来る日も来る日も学校へ行っては虐められ、家に帰って勉強して寝るだけの生活を繰り返していた。


 そんなある日、兄が僕を見かねて勧めてくれたのが、当時流行っていた。とあるFPSのソフトだった。

 そのゲームは、ネットワーク場で世界中の人々と遊べるというのが売りのゲームらしく。

 多分、僕が対人恐怖症に成り掛けてるのを見かねて、ネットワーク場でもいいから、家族以外の繋がりを持たせようと兄なりの気遣いだったのだろう。


 いつも、人の事を散々馬鹿にするくせに、こう言うところが偶にあるから家族なんだなと改めて思ったりもした。

 それに、僕は今時珍しくゲームという物をやった事が無い人間だった。

 一本5,000円とか8,000円する物を買うより、書籍や漫画、ラノベを買った方が安いし、面白いと思っていたからだ。


 それでも、せっかく兄が気を効かせて、貸してくれたゲームだし、やらない訳にもいかず。

 拙いながらも、兄に聞きながら怖々とゲームを始めた。

 だけど、最初は直ぐに殺されてばっかで、中々楽しさというものが分からなかったが、徐々にキル数が増えてきたり。味方と協力して敵陣を目指す面白さというものが分かってきて。

 いつの間にか、すっかりFPSという物にハマってしまった。ハマり具合で言えば、その為だけにPCを買った程だから、客観的に見ても相当だった。

 そして中でも、僕が一番気に入ったのは狙撃手スナイパーという兵科だった。


 え?、スナイパーがどういう物か知らない?なら、簡単に説明させてもらうと。


 スナイパー(狙撃手)とは、射撃能力に優れた兵士を選別し。

 精密射撃という、一点特化する為に、特別な訓練を受けた兵士たちの事で。

 遥か昔は渡された制式ライフルで、戦場の敵を一人一人狙って狙撃していた。いわば歩兵は最初全て狙撃手(スナイパー)であったと言われるほど、銃が活躍を見せた初期の頃から存在していた者たちであり。

 現在でも、歩兵からは戦場で最も会いたくない相手だと言わしめる。最強の兵士達である。


 僕が始めて、スナイパーという存在に出会った時の衝撃と言ったら。

 本当に言葉では言い表せないほどだった。物陰から高火力、命中制度に特化したスナイパーライフルを構え、的に一撃必中の攻撃を食らわせる。

 まさに、戦場の死神の名を冠するに相応しい。兵科だと僕は思っている。


 それから僕は、学校から帰ると日常から逃げるようにゲームに没頭した。

 いつも、家族以外からは悪意しか受けてこなかった僕に、戦場を一緒に楽しむプレイヤー達は国籍、人種を問わずに、みんな普通に接してくれる。

 中には意気投合したり、僕をクランという物に誘ってくれた事も合った。(プレイヤー達が仲間同士で作るグループみたいな物)

 その時は、まだそういうのには慣れなくて、断っちゃったけど。

 でも、誘ってくれたのは本当に嬉しかった。

 自分には、この目が合っても、それ以外の物で必要とされた事が無かった。

 それが、例えゲームでも自分を必要としてくれたのだ。嬉しくない訳が無い。


 そうやってプレイヤー達と触れ合うのが楽しくて、僕は何時しか現実を見ないようにしていた。

 気づいた頃には、学校に行かないまま3学期が過ぎていた。

 学校に関しては、1学期と2学期は真面に行っていたし。成績も平均ぐらいだったから。

 進級に関しては、ギリギリ問題無いだろうけど、正直4月から学校に行く気力は全く湧いてこない。


 誰が、好き好んで苛められに行きたいだろうか、親に迷惑を掛けたく無いと思うが、正直今更な気がする。

 そんな訳で、絶賛ニートへの第一歩を踏み出している所だ。

 

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 「オラオラ!逃げろ逃げろ!」


 考が能力を発動して、数分が経過した頃。

 一人の男が、逃げ惑うプレイヤーを追って。楽しそうに笑っていた。


 「それにしても、ホストマスターが最初に部屋抜けるとは思わなかったな。」


 その笑い声とは別に、少し低い声をした男が、誰に言うでもなく呟いた。

 ホストマスターとは、部屋を管理するプレイヤーの事を指す。

 ステージや、ルールの設定などを行うことができ。男達のような悪質なチーターや死体撃ちなどのマナーを犯したプレイヤーをキック(部屋から強制的に排除)することができる権限を持つ。

 だが、今回のホストマスターは男達がチートを使いだした時点で、直ぐに部屋から出ており。

 現在ホストマスターの権限を持っているのは、始めて日が浅いのだろう。低階級のプレイヤーだった。


 「へっ、この部屋に世界ランク2位のスナイパーが居るって聞いて、凸って見たが案外大したこと無かったな。ハハハ」

 「そりゃあ、こっちは速度4倍で動いてるんだ。向こうが目視した瞬間に既に終わってる。クヒッ...」

 二人の男は、ゲームとは別に繋いだボイスチャットからでも伝わるような、被虐的な笑を浮かべ蹂躙されていくプレイヤーを見て被虐的な笑を浮かべた。

 だが、その時......

 

 パシュッ!パシュッ!


 そんな気の抜ける音と共に、二人のチーターの体は消滅した。

 「おいッ! 今どっから打たれた!?」

 「い、いや分からなかった。多分、音の方角的にビルの屋上だったと思う。」

 「はぁ? さっき敵探知使った時には、屋上に誰も居なかったぞ!?」


 二人のチーターは突如として、狩る側が狩られるという状況に直面して動揺していた。

 そして、見えない狙撃手は二人の動揺を見抜いたかのように、再びチーター達に向けてトリガーを引いた。

 すぐ近くで、銃声が聞こえた瞬間、二人のディプレイはまたも色を失ったモノクロの画面に切り替わる。


 「クソッ、何だよアイツ! おい、アイツの名前確認したか?」


 チーターの一人は、苛立たしげに画面を睨みつけると。

 相方である、もう一人に怒鳴った。


 「ああ、確認した、名前は『jack』...チッ、俺たちが狙ってたスナイパーだ」


 相方の男は、動揺を隠すように舌打ちすると、自分を倒したプレイヤーの名前を確認した。


 「つまり、アイツが世界ランク2位のスナイパーかよ!」


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 一方、考は消滅していく二人の死体を興味無さげにスコープから覗いていた。

 現在いる場所は敵側のリスポン地点からすぐ近くにある、崩れ落ちたビルの二階に居た。

 ボロボロの床に這いつくばり、《マウザー》のスコープ越しにチーターが出てくるのを待っていた。

 姿が見えている時点で、階級上位のプレイヤーなら直ぐに見つけられる位置なのだが。

 どうやら、チーター二人は相当動揺している様で、一向に此方に気づく気配がない。


 「あ~、これはダメみたいだね。肩慣らしにすら成らない」


 普通のプレイヤーなら、まずスナイパーに狙われたら。

 同じルートは通らずに、後ろから回るか、障害物や建物の中を通って行くのだが。

 チーター達は完全に頭に血が上っているのか。

 加速速度を上げて、道を堂々と走って来る姿が見えた。


 普通のプレイヤーなら、確かにそれで何とかなるだろう。

 反応出来ない速度で、走ってきてオートエイムで殺せばそれで済む。

 だが、一部のランク上位者には、それは只の自殺行為でしかない。


 高ランク同士の戦いに置いて、反応出来ないなど日常茶飯事だ。

 敵の前に出た瞬間にヘッドショットを叩き込まれる世界に置いて。

 敵が目の前に、出てきてから打つのでは既に後手に回っている。

 なら、何が必要か? 簡単な事....


 「ただ、敵が出てくる所に標準を”置いて”おけば良いだけ♪」

 ――パシュッ!――


 敵が標準に入る前に打った弾丸は、一直線に走っていた。チーターの一人の頭に直撃し、地面に倒れ伏した。

 相方が倒された事に気がついた、チーターの片割れが直ぐにこちらを振り返るが...


 ――パシュッ!――


 既に、何もかもが遅く、残されたチーターも地面に倒れ伏した。

 残ったのは少年ただ一人、そこで試合終了を知らせる。

 独特なスコアボードが出現し、両陣のスコアを集計していった。

 しばらく待つと、スコアボードは上に引かれていき、重低音のギターの音と共に青いペンキで【LOST】と表示された。


 結果は敗北――


 だが、考は最初にチーターが現れ。殺害された以外での死亡数は無く。

 考とチーター達との戦いは、紛れも無く。考の勝ちであったと言えるだろう。

 その結果に、満足した考は大きく伸びをすると。

 ディスプレイに映し出された、敵戦歴上位二人を見て。


 「ざまぁ♪」


 考は満面の笑みで、言い放った。

文法?ナニソレ美味しいの?誤字・・・すいません。

まぁ、色々と酷い作品ですが、楽しいと言ってくれる。変わり者の方がいましたら、どうかお付き合いしてやってください。

それでは、また次回お会いしましょう!

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