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水色の約束  作者: TOTO
目覚め
3/4

約束

誠が夢人を追いかけようとすると、千早さんが後ろから引きとめた。


「誠くん、夢人くんがどこにいるかわかるの?」


「…あ。」


「夢人くんはいつも屋上に行ってるわ。私が帰るのを見計らってまたここに来るみたいなの。」


「わかりました。ありがとうございます!」


そう言うと、誠は再び駆け出した。




夢人は屋上で一人空を見ていた。


ー3年前、俺がお前を止めていればお前は今笑ってたか?あの時すぐに謝っていたらお前は今おれのそばにいてくれただろうか?…もういいんだ。俺は自分の大切な人を傷つけた。一緒に上を目指すと約束したのに…。これがその対価というのなら、俺はそれを背負って…


物思いにふけっていると、唐突に名前を呼ばれた。


「夢人!!」


この声は桜咲 誠のものだ。夢人は誠がここへ来た意味を悟って返事をした。


「…誠か。ここに来たって事はおばさんから話は聞いてるんだな。…もうわかったろ。ほっといてくれよ…」


「馬鹿か!?それくらいのことでなんでそんなにふてくされてんだよ!!」


夢人はその言葉が気に入らなかったらしく、


「はぁ?それくらいってなんだ!?俺たちがどんな約束をしたかも知らないくせに!!あいつがどんなに悲しんだかも知らないくせに!!!」


「お前はあの子の事故に関わったか?」


「違う!でも、俺が詩織を事故らせたも同然だ!!」


「確かに詩織さんはその時悲しんだかもしれない。でも!今あの子を悲しませてるのはお前だ!!!」


「………!!!」


「お前は自分の悲しみを水泳のせいにして逃げてるだけだ!!!」


「…じゃあ…じゃあ、どうすればいいんだよ…!!」


「…お前があの子との約束を果たせばいいんだ。」


「……っ!俺は水泳が嫌いなんだ…!そんな事…」


「なら、なんでまだ水泳を捨て切れていない!?」


さすがの夢人も言い返せないようで、


「少し…1人にしてくれ…」


と、力なく言うだけだった。誠は素直にそれに従い家路に着いた。




「俺は水泳なんて嫌いだ。」


ーナンドモ思ッテイルノニ捨テラレナイ…。


「詩織を傷つけたのは俺だ…。」


ーデモ、救エルノモオマエダケダ…。


「ならどうすればいいんだ…?」


ー戦エ。


「…何と?」


ー詩織トオマエノ夢ノ邪魔ヲスルスベテノモノト。





夢人が階段を降り、病室に戻ろうとすると、病室の前に千早が立っていた。


「夢人くん、あなたにこれを渡しておくわ。」


そう言って差し出されたのは携帯だった。


「…この携帯……。」


「そうよ、詩織の携帯。警察に事故の証拠品だかなんだかで押収されてたのが今日帰ってきたのよ。」


それだけ言うと千早は背を向け病院の出口にむかって歩いて行った。


ー俺への悪口が書いてあるんだろうな。まぁ、そりゃそうか。


と自嘲気味につぶやき、携帯の電源を入れる。すると2通メールの下書きを見つけた。一つはあの事故の日付、時刻でもう一つはそれから3日後のものだった。


そこに書いてあったのは夢人の予想とは真逆のものだった。


『夢人、ごめんね 』


『このメールを夢人が読んでくれていると信じて書きます。

まず、あの日のことは私も悪かったと思う。ごめんなさい。私はもう水泳が出来ないみたいだから、私の夢をあなたに託そうと思います。最後に、私はどんなになっても夢人の最初で最高のファンだよ。頑張れ!』




「……っ…」


夢人は声をあげそうになるのを必死に我慢しながら、泣いた。日はすっかり落ち、病室を照らしていたのはいつの間にか太陽から月や星々へと変わってる。


詩織は少し前に寝てしまったようだった。その詩織に夢人は囁きかける。


「ありがとう、詩織。…俺はもう、迷わない。」


そう言い残し病室を後にした。


それからおよそ一月後、高校での全国大会…インターハイへの切符をかけた、県予選が始まる。部長の話によると、このH県では予選は県大会からスタートでその中の上位8チームがKエリア予選へ、さらにその中の上位8チームが全国に行けるという構図になっているということらしい。その説明を受けた誠は


「まあ、勝てばいいんでしょ?」


と実に適当な感想を述べていた。


「皆準備はいいな。後は夢人だけだが、とりあえず奴のことは置いておく。開会式直後、第一種目が800FR(フリーリレー=自由形の200×4リレーの略称)だ。気合い入れて行くぞ!!」


部長の一言で空気が引き締まる。そして開会式を終え、リレーメンバーの努、和人、誠が更衣を終え招集場で呼ばれるのを待っていると、同じジャージを纏う男が歩いてきた。


「遅かったやないか、寝坊か?」


と和人がちゃかし、


「体はあったまってるんだろうな?」


と部長が声をかける。


「その目ならもう大丈夫だな、夢人。」


誠の期待は確信に変わっていた。


「ああ…、思い出したんだ、俺が水泳を捨てきれなかったワケを…!!」



1章が終わりましたが短い…のかな?前に書いてたやつよりは1話ごとのボリュームを増やしたつもりだけど(汗)また、しばらく時間をあけて2章が出来上がったら掲載しようと思うのでその時はちらっとでも見ていってもらえれば嬉しいです。

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