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世界を超えた拉致はじまりました。

 それはある意味、家族会議といってもさし障りのない程度になじんだ相手との会議だった。

 数人で円卓を囲み、各担当領域で起きている世界のバランス崩壊の眼について相談していたころ、けたたましいサイレンが鳴った。

 一堂に会した者が周囲を見渡す者の何もなく…というわけにもいかず、どうやら、私の輪郭が少しずつ薄くなっていくのがわかった。


「これは…召喚だよねぇ?もうやだなぁ、この大変な時に…」

 困ったなぁとつぶやきながら、首をかしげて知人たちを見れば、額に手を添えてがっくりと俯いている者だったり、パラパラと本をめくっている者だったり、あわてて過去の資料を漁りだしてたり…と、皆することがばらばらだった。


「おい”……”。頼むから、向こうの世界滅ぼすなよ?お前が平和主義者だと知ってて言うが。

 頼むから世界だけは壊すなよ?」

 過去の資料を漁りだしてたものが、私に懇願し出した。

「いやだなぁ、平和主義なんだから。そんな無茶なことはしないよ、大丈夫。

 ただちょっと、異世界召喚をしちゃったことを反省して嘆くくらいに…?」

 パラパラと本をめくってる者は顔をあげ

「召喚が始まってから完結するまでの速度がずいぶんゆっくりなので、世界の魔力が枯渇しそうなのか、事前に召喚か送還かをやったかで、世界の魔力自体が空っぽに近いかと思います。そこの調査もしてきてねー」

 指先から始まった、輪郭を失うっていう状態は、まだゆっくりと前進へ行き渡ってない。

 魔力の紐とよばれる呪文だったり魔法陣だったりするものから発せられる魔力の流れが紡ぐ細長いものを見ると、そんなに柔じゃない。

「魔力構成とかの錬度はいいのにねー」

 召喚に必要な最低限の魔力は有るけれど、一気に終わらせるだけの維持する部分の魔力が欠けてるっていう話で。

 なんとも中途半端だなぁって、思ってるとやっと、全身に魔力の紐が絡みついて輪郭がなくなったその先から、徐々に私という形が消えていく。


「悪い、お前に迷惑をかける。俺の所だ、滅ぼさない程度に教育的指導をしてくれてかまわない。因縁もあるだろうから。本当に済まん!」

 思わずなんだろうけれど、他に人がいるんだから土下座はやめてほしい。って思うのは、いけないことだろうか。

「土下座しちゃやだよ。ほら顔あげてよ、ちょっと行ってくるから、話し合い進めておいて?」

 頭を撫でて慰めようと思ったけれど、すでに手が消えてたのを思い出して苦笑する。

 そこにいる別の人に、どうせだから撫でておいてって、いったら苦笑しながら頭をなでてくれた。

 された方も、一応顔を上げてくれたけれど、やっぱりちょっと苦しそう。

「遠慮はいらない。召喚を繰り返した今季のガイレル王によろしく。」

 もうここまでになると、唇を読むしか会話できなくなる。

 音が聞こえなくなってた。


『ほら、忘れ物ですよ。これをお供にどうぞ!』

 ずっと奥で探し物をしてたと思ったら、キーホルダーを投げつけてきた。

 このままでは受け取ることは無理そうだったから、ちょっとその時だけ魔力に逆らって受けとる。


『あ……が…と……う、行……く……る』

 キーホルダーを大事に抱きながら、私の欠片は、世界を超えた。



「行ってしまったな…」

 すっかりとこの場所から召喚という名の強制退去をさせられた"……"を見送って呟く。

「ですね、しかしよりによって…因縁の世界だとは。彼女、生きてるといいですね」


 しかしよりによって、議長役を連れていくことはないじゃないかと思う。

 そうひとりが呟けば、そうだよな。と、皆で一様に肩を落とす。


 湿っぽい雰囲気になって、パンパンっとひとりが手を叩く。

「帰ってくるまでに決めることはたくさんありますよ、皆でまずいたわれるように、先に決めちゃいましょ?」

 飛ばされてしまったのは仕方がないから、その次を目指して頑張ろうと、ひとつため息をついて切り替える。

 案外すぐに戻ってくるかもしれないし、ただその時に何も決まっていないとがっかりしそうだからと、頭を切り替える。


 心配なのは、"……"が世界を滅ぼしてしまわないように。

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