班決め
全員の実力検査が終わった後、教室に戻ってきたロイ先生が言う。
「うし、じゃあ次にお前達は四人から五人の班を作れ」
すると早速、
「先生!何で班なんて作らないといけないんですか?」
という質問が飛んだ。
その質問にロイ先生は、
「それは班でこの学園に依頼された任務を受ける事になるからだ。他にも班ごとに競いあったり、もしくは班の中で競いあったり――そんな事をする為だ」
教卓に手を置きつつ、どういうことかを説明する。
すると皆が近くにいた者を班に誘い出したのを見て、ディアスが隣の席のユイに話しかける。
「ユイ、組もうぜ!」
その途端クラスの男子から凄まじい殺気が立ち上った。
大方、自分達の班に誘おうとでも思っていたのだろう。美少女だからな。
しかしユイがあっさりと「いいですよ。組みましょう!」と言った事によってクラスの男子達の落胆のしようは、見ていて笑えた。
その後、ディアスが俺に
「良かったら、レオンも組まないか?」
と言ってきた。
「……いいのか? 俺みたいな出来損ないなんか班に入れて?」
そう問いを投げ掛けて、帰ってきた言葉に俺はちょっと笑ってしまった。
「何言ってんだよ。友達だろ? そんな事気にするなよ」
友達……ね。まあそうなるのか?
俺が目を細めて考え込んでいると、再び聞いてきた。
「それで、どうする?」
今度は俺も笑って応じる。
「ああ、組ませてくれ!」
「よーし、これで後一人……」
そう言うディアスに俺は言ってみた。
「なあ、こいつなんて、駄目かな?」
そう言う俺の指の先には、俺の隣の席のレイラ=グレイシャルがいる。
「いいんじゃないか?」
ディアスがそう言ったのをいい事に、今度は俺が誘ってみた。
「なあ、同じ班に入らないか?」
すると、彼女は少し驚いたようにしながらも頷く。
「いいわよ」
それを聞いていたディアスがパンッと手を叩いた。
「よし、話は決まりだ!」
そう言って班のメンバーを書いた紙をロイ先生に持って行った。
その時、俺の隣では何やらレイラが考え込んでいた。
(この男の人……男、よね? 女にしか見えないけど。私の雰囲気なんて気にせず話し掛けてきた……)
レイラはそう思いつつ、俺の顔を見た。
(レオンって確か出来損ないなんて呼ばれてるけど、割といい奴かもしれない)
レイラがそんな事を考えている時、そんなことを知らない俺は俺で別の事を考えていた。
(俺ってこの班にいて、大丈夫かな?)
俺は正直、この班の中で剣技だけは一番強いと思っている。
魔力が少く魔法を余り放てない俺は、剣技と体術を極める事に力を注いできたのだ。
もちろん、魔法を如何に魔力を消費せず放てるかなど、魔法の面でも修行を怠らなかった。
しかし、やはりレオンの魔力の少なさはどうにもならなかった。
おかしな点は二つある。
まず一つ目に、俺が物心ついた時に測った魔力の量だ。
魔力を数値に置き換えて考えてみると、あくまでこれはあくまでも例えだが、あの頃の俺と同じ年代の子供が最低でも二百の魔力を持っていたとしよう。
しかし俺の魔力は同じ年代にも関わらず、最低の二百よりも遥かに下回り、数値で表せばせいぜい九十程度だ。
二つ目に、年を重ねるに連れて増えていく魔力の量だ。
魔力の増加量はその者の年代にもよるが、これも数値に置き換えて考えてみるとやはりおかしい。
普通の者が最低でも百の魔力が一気に増加すると考えよう。
しかし俺の魔力の増加量は贔屓目に見ても六十がやっと…お世辞にも多いとは言えない。
そこに来て、この学園の任務は魔獣の討伐任務が多いと聞く。まさかそんな事はないと思うが、もし数を相手にする時は剣技だけではかなりきつい。
つまり、嫌でも魔法が必要になってくるのだ。
「………はっ、まあ考えていても仕方ないか…」
俺はそう呟き、笑いながら言った。
「まあ、何とかなるさ!」
「何が何とかなるって?」
ちょうどディアスが不思議そうに聞いて来たので、俺は笑みをそのままに首を振る。
「ん。まあこっちの話だ、こっちのな」
取り敢えず、そう答えておいた。
その時全員が班を作り終えたのを見て、ロイ先生が話始めた。
「よし、これで話は終わりだ。各自、学園の寮に移動しろ!」
そう言って教室を出て行った。
そして俺達も教室を出る。
「ふう。じゃ、寮に行くとするか!」
俺達は寮へと向かって行った。さて、どんな所だろうな。この学園自体やたらと規模が大きいから、それ相応の規模はあるんだろうが。