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風の覇者I ―王威覚醒―  作者: 神竜王
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ティーン魔法学園

「…ふぅ」


俺は学園の校門を見てため息をつく。


〝ティーン魔法学園入学式〟


そこにはそう書かれた看板があった。


それを見て今までの入学式がロクなことがなかったのを思い出す。


入学式の時にいきなり囲まれて袋叩きにされた事もある。無論、攻撃の大部分は受け流してやったが。


『何でまた学校何かに来てるんだよ』


『来たってどうせ意味ないだろ』


『お前何か来なくていいんだよ』


『そうだ、お前何かさっさと消えろ!』


……………。


以下のやり取りが脳裏に蘇る。


余計なお世話だっての、このヤロー! つうか、消えろってのはこっちの台詞だっ。


心の中で何度そう絶叫したことやら。


「あァ、ちくしょうめ……今回はどうなるんだろうな……」


従って俺の表情は暗い。


そして俺は入学式の会場に入って行った。


会場に入ると既に人が集まっていた。


当たり前だ。開始時刻は八時五十分……そして今の時間は八時四八分。


つまり俺の来る時間がギリギリなだけだ。


そんな事を考えて、二人で話していた最中らしい男女の後ろの列に並ぶと、早速俺に視線が集まった。


しかし全てが全て悪い視線ではなく、中には好奇の視線があった。


「………!!」


まず俺はそれに驚いた。


今までは集まった視線全てが嫌な視線だったからだ。


だから例え好奇の視線でも驚くに値した。


え、その程度でいちいち驚くなって? いや、無理。 今までが今までだったからなぁ……。


そんな事を考えていると、壇上に学園長らしき人が上がり、俺から視線が外れていく。


俺はそれにほっとして学園長の話を聞いていた。


「皆さん、おはようございます。このティーン魔法学園は君たちの魔法の能力や、知識を上達させる場所です。他にも――」


しかしすぐに飽きてしまった俺は立ったまま眠っていた。


それからは他の来賓の方々とやらの話という、どうでもいいコトを聞いた後、最後に学園長が


「それでは、皆さん有意義な学園生活を楽しんで下さい」


と言ったところでちょうど俺は目を覚ました。


寝ていた時、誰かにつつかれたような感じがあったが、まあ気にしない事にした。


その後はそれぞれの教室に移動し、担任の教師の話を聞くだけだ。


そう思って俺が、前もって送られてきた資料に書かれていた教室に向かおうとした時だった。


「よう!」


突然俺の後ろから声が掛かった。



―――――――――――


「さて、と……」


ディアスは入学式の会場に入り、列に並んだ。


そして回りを見ると、幼馴染みのユイがいたので、式が始まるまでユイと話している時だった。


式が始まる時間のギリギリで誰かが会場に入って来た。


当然、皆の視線がそいつに集まる。


しかしそいつを見る皆の視線の多くが嫌悪に満ちているのに気付いた。


何でそんな目であいつを見てるんだろうな……?


俺がそう考えて内心首を傾げていると、そいつはその視線に少し驚いたように固まっていたが、すぐに俺の後ろの列に並んだ。


何となくそいつに話掛けようとしたら、学園長が壇上に現れて式が始まった。


「皆さん、おはようございます。このティーン魔法学園は君たちの魔法の能力や、知識を上達させる場所です。他にも――」


その時、たまたま後ろにいるそいつを見たディアスは「ん?」と思った。


一瞬見た時はそいつは俯いているだけに見えた。


俺はそいつの顔を間近から見て、ちょっと目を疑った。


……アレ? こいつ男だよな? モロに女に見えるんだが。


しかし当の本人であるそいつが俯いた姿勢のまま微動たにしないのを見て、まさかと思ってそいつの頬をつついてみた。


そして思わず噴き出してしまった。


ね、寝てやがる……。しかも立ったまま。


隣ではユイまでクスッと笑っている。


そんな事をしていると、いつの間にか来賓の方々とやらのどうでもいい話が終わり、最後に学園長が、


「それでは、皆さん有意義な学園生活を楽しんで下さい」


などと言って礼をして舞台から降りていき、式が終わった。


ちょうどその時、立ったまま眠っていたそいつが目を覚まし、教室に向かうために移動しようとしていた。


タイミングよく起きたな、オイ。


俺はそう思いつつ、そいつに声を掛けてみた。


「よう!」


俺がそう声を掛けると、そいつはこちらを振り返った。



―――――――――――


ユイが入学式の会場に入って暫く周囲を見渡していると、仲の良いディアスが会場に入って来たので、ディアスと入学式の事で話していた時だった。


もう少しで入学式が始まると言う時間に、誰かが会場に入って来た。


好奇心から会場の入り口を見て、その男の人を見た。


その男の人は皆からの視線を受けて何やら驚いていたが、やがてディアスの後ろの列に並んだ。


すると早速ディアスが話掛けようとしていたが、ちょうど学園長が壇上に出てきて、式が始まった。


「皆さん、おはようございます。このティーン魔法学園は君たちの魔法の能力や、知識を上達させる場所です。他にも――」


そう学園長が話始めた時、突然隣でディアスが噴き出した。


何事かと思い、ディアスを見ると、自分の後ろにいるさっきの男の人の頬をつついていた。


それを見てユイは止めさせようとしたが、その男の人が全くの無反応なのを見て気づいた。


この男の人…立ったまま眠っているの!?


それに、よく見ると女の人にも見える綺麗な顔立ちをしていますね。


それを知って思わずユイは「クスッ」と笑ってしまった。


そんな事をしていると、来賓の方々の話などが終わり、最後に学園長が


「それでは、皆さん有意義な学園生活を楽しんで下さい」


と言って式が終わると、さっきの男の人が教室に移動しようとして、背を向けているのが見えた。


そこにディアスが声を掛けた。


「よう!」


そしてその男の人は振り向いた。



―――――――――――


「よう!」


俺は背後からの陽気な声に応じて振り向いた。


そこには挨拶代わりにか、片手を挙げている金髪の男子と、薄い緑色の髪の女子がいた。


俺がそれをじっと見ていると、男子の方が口早に訊いてくる。


「なあ、名前は何て言うんだ?」


「ん?」


それに対し俺は内心苦笑しつつ、


「ああ、俺の名前は〝レオン〟って言うんだ。姓は無い。好きなように呼んでくれて構わない。お前らは?」


と応じ、首を傾げた。


俺はこうして厚意を持って接してくる者に対しては、同じだけの厚意を持って応じるのである。


えっ、厚意を持たずに接してくる者に対してはどうするかって?


軽くあしらうか、あまりにもウザかったら無視するか――即座に立ち去るっ! ハッハァ、やっぱこれに尽きるね!


俺がそう考えていると、金髪の男子の方が嬉しそうにニカッと笑い、


「俺はディアス。〝ディアス=ヴァーナル〟」


接しやすい雰囲気と共にそう名乗った。


すると女子の方も


「私はユイ。〝ユイ=エアロス〟」


と名乗り、軽くお辞儀してきた。礼儀正しいな、おい。


レオンは二人の名字に何か引っ掛かった物の、内心ではかなり感激していた。


今までは顔を見る度に嫌味を言われていたが、この二人は普通に接してくれたからである。いやいやこれは……正直予想外だな。勿論いい意味で、だ。


そんな事を考えながら俺は頬を緩めつつ、ふと思い付いて問うた。


「俺はDクラスだけど、お前ら――いや、ディアス達はどこのクラス何だ?」


友好的な雰囲気だったので、早速名前で呼ぶことにする。


するとディアスとユイは表情を明るくした。


「おお! 奇遇だな、俺もDクラスだ!」


「あ、私もDクラスです」


おお、同じクラスか。


ここまで綺麗に重なるとは……策略染みたものを感じるな。いや、同じ列に並んでたんだから当然か?


そんなことを考えつつも、それを聞いた俺は久しぶりに純粋に喜んだ。


しかし、その笑みはどこか影があるようにディアス達には写ったようだ。


そんな二人を見た俺は、影があるのを悟られたのを知りながらも敢えて尋ねる。


「どうかしたのか?」


これを聞いてディアスとユイは顔を見合わせた。


そして俺に訊いてくる。


「あの、違っていたら悪いけど……もしかして、あのレオン?」


それを聞いた俺は極普通に…少なくとも表面的には普通に答えた。


「ああ、俺が例の魔力の少なすぎる出来損ないだよ。姓を名乗らなかっただろ?」


そう述べると、俺は二人の様子を探った。


大抵はここで嫌悪の目で見てくるからだ。まあ、それについてはもう達観しているので何とも思わないが。


しかし、俺の予想は外れることになる。


「……そうだったのか」


そうディアスが呟き、すっと手を伸ばして来た。


「……これは?」


俺が意味が分からず訊き返すと、ディアスは明るい声音で言葉を紡いだ。


「俺と友達になってくれないか?」


照れ臭そうに笑う。


それを聞いた俺はちょっと目頭が熱くなってくるのを押さえられなかった。


俺は今までの経験もあって、こういう時に嘘かどうか、ある程度見抜ける。


だから今、ディアスが本心からそう言ってくれているのが分かった。


そして――俺はその手を取った。


「ああ、こちらこそよろしく頼む」


それを横から見ていたユイも手を伸ばして握手を求めてきた。


「私とも、よろしくお願いします」


「ああ、勿論だ」


そう言って俺がユイの手を握った途端、回り(主に男子)から凄まじい殺気が立ち上った。


その後は色々と話をしながら歩いていると、教室についた。


「ここか…」


そのまま三人は教室の中に入って行った。


その途端、ユイに一気に視線(主に男子の)が集まる。


そしてそれぞれの席を探していると、


「あ、席は自由だよ」


先に来ていたクラスメートが教えてくれた。


なるほど、自由席か。俺は近くに空いていた一番後ろの席に座った。


すると自然にディアスが俺の席の前に座った。


そしてユイが座る席を探し出すと、教室内の男子が突然身の回りを片付け出した。


わざとらしく咳払いなどしている者までいる。


俺とディアスはそれを笑いながら見ていた。


皆(特に男子)、美少女であるユイに隣の席に座って欲しかったのだろうが、ユイは申し訳なさそうな顔をしながらディアスの隣に座った。


それを見て男子達はあらかさまに落胆した。


そんな事もあってか、すかさずディアスが口を開いた。


「おー、またまた大人気だな、ユイ」


ニヤニヤ笑いながらからかう。


それを聞いたユイが恥ずかしそうに俯いているのを笑いながら見ているうちに、いつの間にか教室は人で賑わっていた。


しかし、まだ最後の一人が来ていなかった。


何故なら、席がまだ一つ空いているからだ。


因みにその席は俺の隣だ。


「後一人だけだな」


ディアスがそう言った時、最後の一人が入って来た。


するとまた男子達が盛り上がる。


俺は何となくその生徒を眺めて見た。


長い黒髪に青の瞳を持った、かなりの美少女である。


正し、ユイのような可愛さではなく、少し大人びた美しさがあった。


その美少女は最後だったので、席を選ぶまでもなくさっと教室内を見回すと、さっさと俺の横の席に座って頬杖をついた。


早速ディアスが嬉々として話掛けた。


「なあ、名前教えてくれよ」


しかし、その返答は冷たかった。


「名前なんてこの後の自己紹介の時に分かるでしょ?」


「そ、そうだな」


それを聞いたディアスがやや不満の残る表情で前に向き直った。


すると俺達の担任になる教師が入って来て生徒の前に立った。


「よーし、俺が今からお前達の担任になる〝ロイ=リグディ〟ってもんだ。よろしくな」


と言ってからすぐ近くにいた生徒にこんな事を訊いていた。


「えーと、こんな感じか? 今までの教師ってどんな感じだった?」


それを見る俺達の視線は冷たかった。


冷たい視線をその身に浴びたロイ先生は、言い訳っぽくこう述べた。


「仕方ないだろ、新任なんだから」


しかし俺はそんなロイ先生の話を聞かずに、自分の隣に座る美少女に目をやっていた。


何故ならさっきから何かを後悔するような表情をしていたからであった。


「……………」


そこで俺は心の中で謝りつつ、ほとんど口パクにしか見えないくらいの小声で詠唱した。


「我求めるは、その者が持つ心の真実。その者に隠された真実を暴け。【マインドブレイク】」


その途端、俺の頭の中に声が響いた。


(どうしよう。またやってしまったわ……どうにもならないわね、こればっかりは。友人を作るというのはやっぱり苦手だわ)


それを読み取った時、ロイ先生が気だるそうな声音で


「よし、今度は自己紹介だ。各自、前にでてくるように」


なるほど、自己紹介ね……。


素晴らしくかったるいな。つうか、出来損ないと呼ばれるこの身としては、正直やりたくない。


そんな事を考えつつも、自己紹介という言葉を聞いて俺は頭に響く声を遮断した。


何故なら俺は自己紹介の類いが大嫌いだからである。


「拙いな…」


拙い、コレは拙い。これ以上ないくらい――ではないか。でも取り敢えず何かが拙い。


そう考えながら呟いている内に、前の席の奴から自己紹介をしていく。


その間にも必死に打つ手を考える。


(くそっ、一体どうすれば……)


そう思った時だった。


「いってえ!」


そう言って足を押さえてぴょんぴょん跳ねる男子に目を向ける。


そしてどうやら足の小指を机の角に思いっきりぶつけたらしい事が分かった。


ドジなヤツだなぁ……。


それを見たクラスメート達は、総じて肩を揺らして爆笑していた。


「「ははははは!!」」


そして、笑っているクラスメート達を見て俺は閃いた。


(そうだ! 笑いだ! 笑いをとればいい!!)


悪影響を及ぼすことはまずないはず。これでいくしかない。


そう思った時、ロイ先生が「はい、次!」と言って俺を指した。


それに応じて俺は前に歩いて行きながら、行使する魔法を選出する。


(よし。笑いをとるなら、あの魔法でいくぜ! はっはっは、完璧な計画だ!!)


内心でほくそ笑む。


そして俺はクラスメート達の前に立った。


「どうも、俺が例の出来損ないのレオンです」


などと、俺は言ってから皆の様子を見た。


やはり、それだけではディアス達二人を除いて反応はよろしくなかった。


そこで俺はあの計画を実行に移した。


「ここで、皆さんにサプライズがあります」


俺は人差し指を立てて述べてみせる。


すると、クラスメート達は興味津々といった風で俺を見た。


その直後、俺は前以て詠唱していた魔法を発動した。


「凍てつけ!」


その途端部屋中に氷の花弁が舞い、床を始点に渦を作った。


「おおーーー!!」


それを見たクラスが沸き立ち、手を叩いた。


(よしっ、良い反応だ!)


そう思い俺は心の中でガッツポーズを取ったが、すぐにそんなことを考えている場合ではなくなる。


「ファイヤーボール!」


そう詠唱したロイ先生が氷を溶かしたのだ。


「馬鹿、お前は教室の床を凍らすつもりか!」


そう怒られたが、俺はそれどころではなかった。


「うおおおおおっ! あっつ!」


そう言って飛び上がる俺の背中は、ファイヤーボールの火の粉が燃え移り煙が立ち上っていた。


それを見てクラスの奴らは爆笑していた。


「「あっははははは、はははははは!!」」


その笑いは今までのような嫌悪はなく、純粋な笑いだった。


こうして俺は思惑どおり、皆からの印象を(出来損ない→面白い奴)に変える事が出来たが、当の本人である俺はそれどころではなく、火の粉が燃え移った背中をばんばん叩いて消火していた。


「入学早々制服に穴が空くってどうよ…」


そう愚痴りながら俺は修復魔法で制服の穴をふさぎ、席についた。くそっ、ただでさえ少ない魔力を修復魔法に使うことになるとは……。


そして、回りの様子から自分の計画が上手くいった事を知ってほっとした時、ディアスが前で自己紹介をし出した。


「俺の名前は〝ディアス=ヴァーナル〟。得意な魔法は火属性だ。よろしくな!」


それを聞いて俺を覗いたクラスの皆は固まった。


「…?何で固まってるんだ?」


試しに他の奴に聞いて見たら呆れた目付きで見返された。


「お前、知らないのかよ。ヴァーナルって言ったらあのヴァーナルしかないだろ?」


それを聞いて俺の動きもピタリと止まった。


ヴァーナル…。ヴァーナルといえば…


(帝国軍トップの一人、炎王の姓じゃないか!?)


そう考えていた時、俺の前の席にディアスが戻って来た。


早速俺は問い詰める。


「なあ、何で俺に炎王の息子だって黙ってたんだよ?」


するとディアスが驚いたように、


「いや、最初に名乗った時に気づいているものかと思ったから」


と言ってから


「まさか、気づいてなかっただなんて」


「…………」


それに伴って俺の顔がみるみる赤くなっていく。


何故なら「ヴァーナル」と聞いた時点で一瞬で気づいてもおかしくない程、帝国の八軍のトップは知名度が高いのだ。


魔法には火、雷、水、氷、地、風、光、闇の八属性がある。


そして帝国の八軍は、それぞれの魔法を極めた者達が君臨している。


炎王(フレイムロード)の姓はヴァーナル。


雷王(サンダーロード)の姓はハザード。


水王(アクアロード)の姓はアークス。


氷王(アイスロード)の姓はグレイシャル。


地王(アースロード)の姓はグラン。


風王(エアロード)の姓はエアロス。


光王(ライトロード)の姓はミネルヴァ。


闇王(ダークロード)の姓はゲルニカ。


この八人が八軍を治めており、個々の実力は計り知れない。


「………ん?」


そこで俺は首を傾げる。


(いや……ちょっと待て、エアロスって確か……)


そう考えた時、ユイが前に出て自己紹介をした。


「私の名前は〝ユイ=エアロス〟です。得意な魔法は風属性です。よろしくお願いします」


そう言ってユイが礼儀正しくお辞儀した時、レオンは驚きすぎて肘を椅子にぶつけてしまった。


「うおっ!痛てえ!地味に痛てえ!」


そう言って呻く俺にクラス中が笑い、それに対して俺は赤面して机に突っ伏した。


そして俺は思った。


(…何で俺はあの時に気がつかなかったんだよ…)


尤も、俺は「いや……気付いてたよ? うん、ちゃんと気付いていたともさ。ははは」などと呟くことになったが。


そして次に俺の隣の席の美少女が前に出て自己紹介をした。


「私の名前は〝レイラ=グレイシャル〟。得意な魔法は氷属性。よろしく」


それだけ言うと何事もなかったかのように席に戻って来た。


しかし、俺は最早石化してしまっていた。


(グレイシャル!?氷王の娘までいたのか…)


そんな事を考えながら未だに固まっていると、


「いつまで固まっている積もり?驚く程の事じゃないでしょ?」


と美少女…レイラに冷たく言われた。


阿呆、充分驚く程の事だわバカヤロー。


そう考えつつも、俺は思った。


(俺って、こんなんばっかりだよなぁ……)


……そう考えると、自分がかなり情けないのが分かったぜ。畜生、やっていられない。


そんな事を考えていると、他の奴等の自己紹介が終わり、ロイ先生が言った。


「よーし、自己紹介は終わったな?じゃあ実力を計るから一人づつ順番に隣の部屋にこい」


そう言って隣室に消えて行った。


それを聞いて最初の奴が隣室に行った。


実力を計る…それを聞いて俺はどんな事をやるのか気になった。


「なあ、ディアス。実力を計るっつっても、具体的には何をするんだ?」


それを聞いてディアスは軽く笑いながら言う。


「ああ、それなら多分体術と魔法、それとちょっとした知識を見る程度だと思うぞ」


そう答えた。


そこで俺は考える。


実力を計る、か。そうだな、余りにも低く評価されるとそれはそれで困る……仕方ないな。


その間にも順番は回っていき、ディアスの順番になった。


ディアスが隣室に移動するのを見て俺は決心した。


――よし。だったら俺のみが使うオリジナルの魔法を使うか。俺のオリジナル魔法は、どれも俺でも行使可能な魔力消費の少ないものばかりだからな。


そう考えている内にディアスが帰って来た。


「どうだった?」


それに対しディアスも、笑いながら親指を立ててみせる。


「おう!それなりに上手くいったと思うぞ」


「ほぉ? そりゃ結構なコトだな」


そんなやり取りをしていると、遂に俺の順番が来た。


「失礼します」


そう言ってから俺は部屋に入った。


するとロイ先生が立ち上がり、


「よし、まずは体術からだ、こい!」


言い終わる頃にはロイ先生は既に戦闘態勢を取っている。


それに対しレオンも腰を落として構え、ロイ先生に飛び掛かった。


俺はまずロイ先生の顔面に向けて拳を打ち込んだ。


しかしその拳をあっさりとロイ先生に弾かれる。


しかし俺はその反動を利用して左足を支点に大振りな回し蹴りを叩き込んだ。


そう、先ほどのパンチはフェイントで、この蹴りの方が本命の攻撃である。


何故なら俺の体術は主に蹴り技が中心だからだ。


だいたい刀剣の類いを武器にする俺としては、パンチよりも蹴りを使う方が多いからな。


しかし俺のその蹴りもロイ先生は片腕で防御する。


再度蹴りを放ちかけた俺にロイ先生は言った。


「なかなかやるな。体術はここまでだ」


そう言ってロイ先生は息を吐いた。


「よし、次は魔法を見せてくれ」


俺はそれに応じて何を使うか考える。


(そうだな、ここはあの魔法でいこう)


そして俺は詠唱を始めた。


「我求めるは癒しの風、今ここに身心を癒す風を巻き起こせ……【ヒーリングストーム】」


その詠唱を聞いたロイ先生は驚いていた。


(何だこの詠唱は! 風属性の治癒魔法――既知のものにこれはないな……)


ロイ先生は目の前で詠唱している俺の顔をガン見してきた。


(本当にこいつは出来損ないなのか?)


無論、俺は知る由もないがロイ先生がそう考えた時、室内にふわりと優しい風が吹いた。


それを浴びたロイ先生は、体と心が安らぐのを感じているような表情だった。魔法はちゃんと発動したようだな。


暫くの間その風を維持させた後、ロイ先生は「もういいぞ」と言って俺に聞いてきた。


「レオン、これはお前のオリジナル魔法か?」


「そうですよ。これは俺が作った魔法です」


俺はそう答えた。


オリジナル魔法とは、その者個人が作った魔法のことを言う。


オリジナル魔法を作るにはその者のセンス、イメージ、集中力、籠める魔力の量…この4つが欠かせない。


だからオリジナル魔法は普通の魔法とは難易度が違う。


それを、魔力の少な過ぎる出来損ないが使ったのだ。それは驚くだろう。


尤も、俺のオリジナル魔法は術式を細部まで解析すると実は大して凄いことじゃないのが露見したりするのだが。


「よし、もういいぞ。教室に戻ってくれ」


ロイ先生がそう言って椅子に座ったのを最後に、俺は教室に戻った。



―――――――――――


レオンが教室に戻った後、ロイは暫く考えていた。


(あいつは、出来損ないなんかではない。確かに魔力の量は極少だが、あいつの技量は本物だ。恐らくかなりの努力をしたのだろう…)


そう考えていると、次の生徒が来た。


「おっと…こんな所で浸っている場合じゃないな…」


そしてその生徒に


「あー、まずは体術からだ。こい!」


そう言って相手の生徒を相手取りながら、ロイは思った。


(もしもあいつの魔力が普通にあったら、もしかしたらあいつは―)


そこまで考えてロイは考えるのを止めた。


「まあいいか。取り敢えず今は、全員の力量を知る事が先決だ」


そう独りごちると、ロイは次々に生徒達の相手をしていった。

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