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設定をしっかり考える

 異世界ファンタジーとありますが、設定をしっかり練ることの重要性についての話です。なのでその他のジャンルにも通用する話だと思っています。

 今回は設定(特に異世界)について、です。

 例をあげてますけど、分かりにくかったらすみません。


★安易に異世界ファンタジーを選ぶのは危険!★

 書くためには知識というものが必要。……と、言ってしまうと語弊がありますね。書くだけならば想像でも書けます。


 でもリアリティのある、説得力のある文章を書くには、やはり書きたいことに関する知識が必要になります。


 スポーツについて書かれるならそのスポーツを熟知していないと書けません。歴史小説を書くのなら歴史を知らなければ話になりません。でも異世界だったらどうだろう? 自分で考え作った世界なのだから知識なんて関係ない?

 いえいえ、これが関係あります。知識がなくては世界を作り上げられないからです。え、どうしてかって? ではお聞きします。


 あなたの世界に住んでいる人たちは、何をして(職業)生計を立てていますか? 何を食べていますか? どんな服を着ていますか? 人口はどのぐらいですか? 国や政府はありますか? 文明は? 宗教は? 季節はありますか?


 もっとお聞きしたいことがありますがこれぐらいで止めておきます。

 こんな質問をすると「俺の話に一般人の生計などでてこない!」「人口など知るか」と思われるかもしれません。でもちょっと待ってください。あなたは世界を作る神様です。神様が自分の作る世界に無責任ではいけません。自分の作った世界です。ちゃんと愛して正面から向き合ってください。

 これらの設定は小説を書く上での“旨味成分”ともいえる大事な場所です。この設定を考えるためにはまったくの無知では書けません。


 なぜかというと……


 たとえば、機械文明が発達していない世界を書くとします。機械がない生活を細かく思い浮かべてみましょう。


 その世界に住む人たちは、朝何時ぐらいに起きるのか。どんなものを身につけているのか。気候は暖かいのか寒いのか。火はどうやってつけるのか。食べ物は何をどうやって食べるのか。トイレは、家の作りはどうだろうか。


 火打石なんてものがありますが、あれは石同士をぶつけても火がつかないことを知っていますか? 想像だけで知らずに使ってしまうと恥をかくことなんかも多々あります。

 なのである意味で、異世界を作り上げるのが一番大変だと思うんです。雑多な知識が必要ですからね。

 もちろん、知識がなければ異世界を書いてはいけないわけじゃないです。必ずしも『この国には●○人いて国民は皆これこれこういう格好をしてあれで生計を立てて』などと設定を説明する必要はありませんので。

 物語上必要な部分を作り上げ、必要な時に描写すればいいのです(それが難しいのではありますが)。


 で、結局それらを考えることがなんに繋がるのか。それらの細かい部分をきちんと作り上げることによって表現が変わると言うことです。

 例えば、


===== 例文ここから =====



・アサドという村に辿り着いた。百人程度の小さな村だ。



===== 例文ここまで =====


 という一文があったとします。ここで“百人”と“小さな村”について考えてみましょう。

 村がある世界の人口が一億人だとすれば、百人は確かに小さい村となります。ですがこの世界の人口が千人だったらどうでしょう。百人の村は小さいでしょうか?


 ……はい。

 大きいですよね。もし世界の人口が千人なら先ほどの一文はきっと、


===== 例文ここから =====



・アサドという村に辿り着いた。百人もいる大きな村だ。



===== 例文ここまで =====


 と変わることでしょう。

 そして百人も、と表現されることで読者は「百人が多いのなら世界の人口は少ないのか」と世界の人口を説明されずとも推測できます。このような書き方は作者が世界の人口を知っていなければできません。

 今の例は分かりづらかったでしょうか。もうひとつ例を。今度は情景描写です。



===== 例文ここから =====



・視界一面に田んぼが広がっている。



===== 例文ここまで =====


 想像してみてください。…………しましたか? では、これをいろんな表現で書いてみます。



===== 例文ここから =====



・視界一面に金色に色づく稲穂が揺れている。

・視界一面に水が張られただけの田んぼがある。

・視界一面に青々とした苗が植えられている。



===== 例文ここまで =====


 私の文章力がないのはさておき。

 どうでしょうか? ただ“田んぼ”と書かれているのと下の三つでは大分違うと思います。小説内に田んぼでないし、という問題ではないですよ。

 このようにちょっとした風景の描写を入れることで季節が分かります。これはちゃんと書く側が「今の季節は秋だ」と考えていなければ書けません。


 え? 異世界の話からずれている? いえいえ、そんなことはありませんよ。


 なぜなら季節をにおわす描写をすることで、その世界に季節があるのだと読者に教えてくれます。だって異世界ですもの。四季が当たり前にあるとは限りません。田んぼが当たり前にあるとも限りません。

 これを書くことで異世界人の生活も少しうかがえますね。農作業をしているということは、定住地があるということ。また主食はお米なのかな、と想像できます。

 田んぼの中に人を付け加えてどんな作業をしているかを書けば、文明も判明します。



===== 例文ここから =====



・腰を曲げて苗を植えていたその人は疲れたのか、一度背伸びをした。

・その人が操る田植え機が次々と苗を植え付けて行く。



===== 例文ここまで =====


 上は手作業で、下は機械。同じ田植えなのに全然意味が違います。これもまた作者が世界のことを熟知していないと書きわけることができません。

 そして手作業で田植えをするのが当たり前なら機械文明は発展していないと推測できます。なのできっとミシンやポットなんかもないでしょう。なのに突然「ポットでお湯を沸かした」という文章があれば読者は「アレ?」と思います。田植え機はないのにポットがあるのならその理由を考えねばなりません。

 ミシンがないなら服を作るのはどうやっているんだろう。お湯を沸かすのはなにでしているのだろう。そもそも布はどうやって作っているんだ。お金という概念はあるのか。お金があるならどこが作っているのか。国が違ってもお金は一緒なのか……etc。

 

 それとも面倒だから“魔法”という“マホウ”の言葉で解決しちゃいますか?


 魔法で服を作る。じゃあその魔法は誰にでも使えるのか。誰にでも使えるとしたら皆服なんて買いませんよね。自分で作ればいいのですから。

 服が作れるのなら大抵のモノは自分で作れそうです。となると、その世界で商売が発達すると思いますか? おすそ分け、なんて言葉もないでしょうね。だって自分で自分の分を作ればいい。すると人同士の交流が希薄になるかもしれない。国どころか村もないかもしれない。

 安易に魔法という言葉に頼ると世界が崩壊しかねませんので、あまりお勧めはしません。


 と、まぁ一つの世界を作り上げるわけですから、設定というのは奥深いことはご理解いただけると思います。なので作家さんは日々たくさんの本を読んだり、取材に行ったりして、蓄えた知識を世界設定に活かすのです。

 世界の創造というのは大変です。だからといってその大変な作業をさぼると世界に矛盾ができたり、内容の浅い物語になってしまいます。また読者の方に「この作者はろくに世界を作っていない」と思われかねません。

 もちろん設定を作るのはある程度でかまいません。細かく考えすぎたらいつまでたっても小説は書けませんから。設定作って満足して小説書けない、なんて落とし穴もありますからね(実際私もお蔵入りしたモノが多々……お恥ずかしい話です)。

 でも深く考えれば考えるほどそのお話には現実感がともない、矛盾も減り、読者を違和感なく異世界へいざなえるのは間違いないと断言します。文章力ももちろん必要ですけど、下地がないとたとえ文章が上手でもその世界に惹かれないと思います。最低でも物語を描く上で矛盾がない程度には作り込む必要があります。


 私が設定作りこんでいるなぁといつも唸るのは「十二国記」ですね。小野先生の世界は文句のつけどころがない。文章に独特な雰囲気のある方なので好き嫌いあると思いますが、本気で独自の世界を作り上げようと思っている方は一度読んでみるのをお勧めします。表現方法も秀逸です。


 偉そうに言った自分はどうなのかってお話ですよね。まったくです。精進します。

 ただ今回私が言いたいのは「異世界ファンタジーだと簡単そうだ」という理由で異世界モノに手を出さない方がいい、ということです。

 どうしても異世界モノが書きたい。私はこの世界を愛してる! という方はどんどん書いちゃってください。きっとあなたの世界こどもも喜ぶはずです。


 では皆さん一緒に創作活動を楽しみましょう! 日々精進精進!


 加筆修正(11・07・05)

 修正(12・05・25)

 例文範囲追加(16・09・17)

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