表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

わりとよくあるタイプの微妙

作者: へますぽん
掲載日:2026/03/08

麻衣はその日、怠惰で凡庸なありふれた昼下がりを過ごしていた。


洗濯物は乾ききらず、冷蔵庫には半端なセロリとヨーグルトがあり、スマホのニュースはどれも読む気にならない。人類史的にもわりとよくある午後である。


そのときだった。


額のあたりが、むず、とした。


虫刺されかな、と麻衣は思った。

ぽり、と指で触れる。


――触れた。


「……?」


皮膚ではない。

何か、細くて弾力がある、芯のあるもの。


麻衣はゆっくりと鏡に近づいた。


「え」


額の中央から、ちょこんと生えていた。


一対の触角である。


「……いや待て」


普通そこは猫耳やろがい!


最近は猫耳とか狐耳とか、そういう方向のファンタジー進化が主流ではないのか。

なぜよりによって触角なのか。

触角でもアホ毛っぽくはえるなどの配慮はどうなっている?


しかもそれは、蛾眉などにたとえられるような優美なものではなかった。


小指の先ほどのサイズ。

先端がちょっと膨らんでいる。


棍棒型。


というか。


「……マラカス?」


麻衣はそっと揺らしてみた。


ぴこ。


ぴこ。


「動くな、これ」


しかも色がひどい。

ビビッドなラスタカラーの横縞。赤・黄・緑。アクセントの黒が映える。


アイシャドウより自己主張が強い。


「レゲエ……?」


マラカスで、レゲエ?違うよね?麻衣はしばらく鏡の前で固まった。


「いや、待て。夢か?」


ほっぺたをつねる。


痛い。


触角も、ぴこっと揺れる。


「いやいやいやいや」


とりあえずスマホで検索してみる。


『人間 触角 生える』


検索結果

・昆虫の触角の役割

・コスプレ用品

・触角カチューシャ


「違う違う違う」


麻衣はもう一度鏡を見る。


触角は、なぜか少し誇らしげに揺れている。


ぴこん。


「……お前さ」


麻衣は額に向かって言った。


「何ができるの?」


その瞬間だった。


触角が、ぐいっと前に向いた。


そして――


冷蔵庫の方向を指した。


「……?」


麻衣は冷蔵庫を開けた。


すると触角が


ぶんぶんぶんぶん


激しく振れ始めた。


「え、なに」


中には

・水切りヨーグルト

・プチトマト

・昨日の焼き芋


触角は焼き芋にロックオンしている。


「……芋センサー?」


恐る恐る焼き芋を手に取る。細いけれどこれは『ベニはるか』なんである。とても甘くてしっとりした素敵な芋なのだ。


額で触角が歓喜のマラカスダンスを始めた。


しゃんしゃんしゃんしゃん(※音はしない)


麻衣は静かに言った。


「……」


「お前」


「ダイエットの敵だな?」


触角は、堂々とラスタカラーで揺れていた。


ぴこん。


まるでこう言っているかのようだった。


「炭水化物こそ、ジャスティス。」


その日から麻衣の人生には、

芋を見つける能力だけ異常に高い触角が加わったのだった。


人類の進化としては、

かなり方向性が怪しい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ