生姜焼き
高校生二人の短編です。日常ギャグを書いてみましたがどうも難しいですね。
キャベツ、生姜、豚のロース、味噌汁、醤油…醤油は流石のあいつの部屋にもあるだろう。
「あなたの作った料理が食べたいの」
一人暮らしで食には無頓着、総菜やコンビニのものしか食べない綾美なのに珍しい。
あまり料理は好きじゃないが綾美の頼みじゃ断れない。一応誤解されたくないので言っておくが、彼女がかわいいからとかではなく拒否すると滅茶苦茶騒ぎわめいて鬱陶しいからである。それはそれとしてかわいいのは本当だが。美人だし。
スーパーで必要な食材を一通りそろえて、彼女の家に向かった。
「遅かったじゃない!」
「居残りで補修させられちゃったんだよ 古文がダメダメで」
「馬鹿ねー。今度私が教えてあげるわ。まあ、なんでもいいから料理の方を早く作ってちょうだい」
鞄を適当なところに置いて、家から持参してきた調理器具を取り出す。キッチンを借り、それぞれの食品の包装を開けて、料理を始める。
キャベツを千切りにし、ショウガをすりおろして、肉を焼いている俺を綾美は興味津々で見てくる。しかも近い。少しドキドキするし火を使っているから危ない。
「火ィ使ってる今は危ないからあんまりちょこまかと動くな!」
「それもそうね。でもわたし、てっきりあなたは料理が下手だと思っていたからびっくりだわ。料理が食べたかったっていうのは建前で、本当はあなたが料理に挑戦しているところを嘲たかったの…でも失敗。下調べをしておくべきだったわね」
「お前そんなこと考えてたのかよ!」
「いつものことでしょう?」
真正の意地悪である。今の親友のような関係は心地がいいが絶対に彼女にはしたくない。そんなことを思いながら完成した料理をお皿に盛り付けていく。
「彼は焼き終わった生姜焼きを、予めお皿に敷いておいたキャベツにリズムよく載せていく。完成したその見た目はまるで、干し草の上で気持ちよさそうに眠る牛達のようだった。」
綾美は不敵な顔をしてそう言った。
「急にどうした」
「その通りだと思わない?」
「少なくとも気持ちよさそうではねえな。死んでるし」
「そういうことじゃないわよ!私はこの料理自体じゃなくて、この料理を見て浮かんできた情景のことを言っているの!本当頭が悪いわね!」
少し気を悪くしてしまったようである。難しい人だ。腕を組みながら頬を赤くしている。マンガみたいだなこいつ。
「ごめんごめん。あ、ランチョンマットとかお箸用意しておいてくれ」
「…」
綾美は無言でチェック柄のランチョンマットを広げる。この関係性ってなんだか親子みたいだ。俺はそこにご飯と生姜焼き、インスタントの味噌汁と麦茶を置いていく。
「「いただきます」」
「ん…おいしい…おいしいわね!あなたすごいわ!本当に料理が上手なのね!」
「おお、そんなにか?ありがとう」
さっきまでは怒ってたのに、すぐ笑顔になった。しかも綾美が素直に褒めることって少ないので、よほど美味しかったんだろう。でも生姜焼きって少し料理ができる人なら誰でも作れる気がするが。
「私、人の手料理ってほとんど食べたことないから…うれしくて」
「そうか」
急にこうしんみりされるとどういう言葉をかければいいのかわからない。BGM代わりにテレビをつけて、適当に話を逸らす。
「そういえば、前おすすめしてくれた本少しずつ読んでるけど、結構難しくないか?暗号文読んでるみたいだぞ」
「難しいのは字だけよ。内容は小学生でもわかるわ。」
なかなか厳しい。
「あ、私、あれ暗唱できるわよ!」
「お、おう、それはすげえな」
「ろうさいのりちょうははくがくさいえい…てんぽうのまつねん、わかくしてなをこぼうにつらね…
唐突に内容を諳んずる綾美。本当に変な奴だ。正直どうでもいいが、ちょっとは聞いてやろう。いやはや。
でもその誇らしげな顔、指をぴんと上げる姿はとてもかわいかった。
またなんか作ってやろう。ナポリタンとか、鶏のから揚げとか。




