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名揺奇譚  作者: 安杉旧作
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霧中の世界

ちょろっと歴史かじったものになります

名は体を表す、なら体は何を表す?

答えの出ない事柄を考えるのは好きだ

長い帰り道の暇つぶしに丁度良い。


真言まことは入院中の妹、翡翠ひすいの見舞いの帰路についていた。

普段は元気な妹がここ一カ月目を覚まさない。

医者曰く、目を覚まさない以外は健康そのものらしい。

看護師から聞いた話ではよく寝言を言うみたいだ。オン、ナントカやタケルがどうこうと。


何か悪いものを食ったのか?

三秒ルールだ!といい、落ちて確実に三秒経過しているであろう溶けかけたチョコを食べる妹を思い出す。

注意しても「別に、これで下してしまっても構わんのだろう?」と、どこぞの弓兵を連想させる台詞を吐きそのまま食べ、下す。

「この線はありえるな…」

真言は考えに耽りながら歩みを進める。



それにしても霧が濃くないか?

真言の住んでいる街は四方を山に囲まれている、その地形のせいか霧がかかることがある。

霧がかかるにしても普段は数メートル先でも誰がいるかまでわかる程度の薄霧だが、今夜は自分の足元が辛うじて認識できるくらいだ。

ここ数日は雨が降っていないにも関わらずここまで霧がかかっている事が引っかかる。

だが地面が見えるなら問題ない。

そのまま道なりに進めば我が家だからだ、真言は歩みを進める。

ジャリ…ジャリ…、靴の裏がアスファルトではなく小石を踏む音を返す、真言は違和感を覚えた

なぜなら病院から家までの道のりは全てアスファルトで舗装されているからだ。


違和感はそれだけではなかった。

足元ばかり気にしていたせいか、街灯の光源が自分の背丈より低いことに気付く。

いくら17歳成長期といえどこれはありえない。


恐る恐る光源に近づく、それは石で作られていた。

「……石灯籠?」

夢でも見ているのか?現代日本でそれがあるのは神社や庭園…のはずだ、

あまりの出来事に脳を直接揺らされたかのような感覚を覚えた。


「もし」

「そこに誰かおられるか?」

清流のような呼び声に自然と視線が向く

「はい!すみません。霧が濃くて知らずのうちにお邪魔してしまったみたいで…すぐ出ていきます」

「………。言うは易く、行うは難し。だったか?簡単にはいかぬだろう」


え?

その反応は予想だにしていなかった

「…家主の方ではないのですか?」

「家主もなにも、ここは…」

声の主は携えていた鞘から剣を抜き振りかぶる、そこから―――――

烈風が霧を裂いた、

あまりの強風に真言は耐えきれず腰を落とした。


「いや失敬。ただ、この方が手っ取り早い」

顔を上げるとそこに霧はなく、声の主が姿を現す。

顔立ちは女性のようだが、顔のパーツはどことなく男性のような、雅で、俗にいう中性的な容姿だった。

「まずは振り返るといい」

その言葉を受け自然と顔が動く





―――――――――え?


背後に見慣れた街はなく、そこは丘の上だった

そこから見下ろす景色は、想像上の“昔の日本の町”のようだった。

どこの時代が、など詳しいことは分からない。

ただ確信をもって言えるのはここは現代ではない、それだけだ。

それに―――

なんだあれは?その目下の町に上半身を左右へ揺らし徘徊している白い人影のようなものが見える、

その人影の群れはゆっくりとだがこちらへ向かってきているようだ、

現実とかけ離れた出来事の連続に唖然と口が開く


「事態の把握はできたようだね」

できていない。

「私はヤマトタケルノミコト。ようこそヤマトへ、私はキミを歓迎しよう」

ここまで読んでいただきありがとうございました。

感想いただけると嬉しいです!

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