第23話 なんだか…もっとかっこよくなった気がするね
【ギャグボール:500】
【気血薬(10/10):10000】
【乗馬(精通):50000】
【総合格闘技(達人):100000】
【魅力:100000】
ギャグボールなどというものは、恐らくガチャにおけるコモンカードのように、排出確率を下げるためのものだろうと、多崎司は悪態をついた。好奇心に駆られ、【気血薬】の詳細を開いてみる。
【気血薬:体質改善、免疫力向上、難病治療。(備考:毎月1回のみ服用可、個人服用上限3回、超過無効。)】
これは良い品だ、是非とも手に入れねばならない!
【気血薬1個購入、費用:10000】
【現在の利用可能資金:55000】
まずは一つ購入し、月末に資金が十分に貯まったら残りの九つも買うことにしよう。これほど良質なものはストックしておくべきだ。たとえ自分が三つしか使えなくても、余った分は将来の妻のために取っておけば良い。
多崎司の手のひらに現れた丸い小さな薬を口に放り込み、「ゴリゴリ」と数回噛み砕いた。目を閉じてしばらくその効果を味わい、ゆっくりと目を開ける。
感じたことといえば……味は悪くない、だろうか?
もしかしたら薬効が現れるまでに時間がかかるのかもしれない。
多崎司は残り資金を確認し、次に【乗馬(精通)】のスキル詳細を開いた。
【乗馬(精通):あらゆる種類の騎乗動物および乗り物を熟練して操れる。(備考:古代の二頭立て戦車から現代の陸海空交通機関までを含む。)】
なぜ二頭立てしか触れないのか?
ポニーテールでは駄目なのか?
少し残念だ、てっきり「騎乗」だと思ったら、ただの乗馬だった。
しかし、これも非常に実用的なスキルだ、何としても手に入れたい。
【総合格闘技(達人):俺が十人まとめて相手をしてやる!】
どの男子がこのスキルの誘惑に抗えようか?
「人は我を犯さずば我も人を犯さず、もし人を犯さば、その母親を殴り倒す」とはよく言ったものだ。
既に剣術(達人)を持っているとはいえ、このスキルも絶対に手に入れるべきだ、議論の余地はない!
最後の「魅力」については、多崎司は首を振った。もし「体力」なら確実に交換するが、「魅力」では見送る。
気血薬九つで9万、乗馬(精通)が5万、達人級総合格闘技が10万。
現在の利用可能資金は5.5万で、不足額は18.5万だ。
多崎司は時間を確認した。5月4日、残り27日。現状の数銘柄だけでは心許ない。新たな銘柄を何とか見つけ出す必要がある。
だが、どうやって見つけるかも問題だ。
システムが株を上場させる条件は、魅力値が6に達していれば低いものの、多崎司の生活と関連がある、あるいは関連する可能性がある株でなければならないという前提があった。つまり、街中で一日中美女を眺めていれば無数の新株が手に入るという甘い夢は、考えるだけ無駄だ。
加えて、もう一つ条件がある。
未婚の状態である者だけが上場対象となるため、島本先生のように魅力値が確実に6点を超えているであろう美婦人でも、上場は叶わない。彼女が離婚でもしない限りは、だが!
こうした制約を考えると、大規模に新株を増やせる場所は、どうやら学校しかないようだ。
多崎司は、吹奏楽部や応援部、文学部といった女子生徒が多い部活をいくつか回ってみるべきか、と考えていた。
寝る準備をしていた時、枕元に置いてあった携帯が光を放った。新しいメッセージがあることを知らせる通知灯だ。
携帯を開くと、ディスプレイの白い光が部屋を微かに照らし、LINEに二宮詩織からのメッセージが届いていた。
【二宮:kiki、風邪はもう治った?】
ん?
この奇妙な呼び方……多崎司は一瞬戸惑い、訝しげに返信した。
【多崎:kikiって……何?】
【二宮:あら……これは私だけのあなたの呼び方よ、可愛くない?】
【多崎:鳥肌が立つよ】
【二宮:(メンヘラちゃんハート.jpg)】
【二宮:風邪は治った?】
【多崎:そろそろね】
【二宮:よかった!じゃあ明日、時間ある?】
【多崎:僕に時間があるかどうかは、次にあなたが何を言うか次第だね】
【二宮:一緒に秋葉原に行きましょうよ】
【多崎:携帯の充電が切れた、おやすみ】
【二宮:(レオキック.jpg)】
寝ようとしていた多崎司の目が輝き、その場で携帯の充電をフルにした。
【多崎:これはレオだ!】
【二宮:え?どういうこと?】
【多崎:このウルトラマンはレオっていうんだよ。この画像はレオキックっていう技だ】
【二宮:……】
【多崎:教えてやるけどさ、レオは近接最強なんだぜ。怪獣を倒すのにレーザーは使わない、一蹴りで仕留めるんだ】
【二宮:kiki、あなたは論点を間違えていると思うわ……】
【多崎:ああ、そうか。君はウルトラマンの九年間の教育から漏れた落ちこぼれだからな】
【二宮:?まさかこの世界に本当にウルトラマンがいるとでも思っているの?】
【多崎:いや、この世界にウルトラマンはいない】
【多崎:でも、仮面ライダーはいる!】
二宮詩織は「愚か」を表すスタンプを送ったが、既読にはならなかった。
10分……20分……30分……
やはり既読にならない。
「ああああ……」
二宮詩織はクッションを足で挟み込み、拗ねたようにベッドの上で何度か転がった。
窓から差し込む月光が、薄い紗のように少女の溌剌とした体を優しく包み込む。彼女は横を向き、窓の外を見て呟いた。「東京の月は、やっぱり北海道よりも綺麗ね」
少女は窓の外の月に手を伸ばし、遠くからそれを掴む仕草をした。
5月5日、休日の最終日。多崎司は早朝に目を覚ました。
狭い洗面所で身支度を整えながら、鏡の中の自分をじっと見つめる時間が長かった。
**どうやら……また一段と格好良くなったようだ。**これはナルシシズムではない。断じてナルシシズムではない。
相変わらず文芸的な雰囲気を醸し出す乱れた前髪と、ギリシャ彫刻のように精緻な顔立ち。だが、顔色は以前のような不健康な青白さはなく、代わりに透き通るような白さと、ほんのりピンクがかった完璧な肌質がそこにあった。
このルックス……年下の小悪魔系男子、とでも言えばいいのだろうか?
多崎司はこれが【気血薬】の効果だと考え、体力が増加していることを期待してステータス画面を開いた。
【名前:多崎司】
【知力:8】
【魅力:9】
【体力:3】
【道具:なし】
【アクティブスキル:剣術(達人)】
【パッシブスキル:訛り矯正、筆跡端正】
何てことだ!
一体誰が【気血薬】が体力を増やさずに、代わりに魅力を増加させる原理を説明してくれるだろうか?肉体強化はやはり自力でやるしかないのか?
パジャマを脱ぎ、スポーツウェアに着替える時、多崎司の心には「システムにできないことなら、この多崎司が成し遂げてみせる!」という奇妙な闘志が燃え上がった。
5月5日、午前6時、東京新宿駅前。
初夏の涼しい風を感じながら、多崎司は息を切らして東の空をちらりと見た。橙色と淡いピンクの朝焼けは先ほどより薄れており、もうすぐ太陽が昇ってくるのがわかる。
信号が赤だったので、彼は信号柱に背をもたれて呼吸を整えた。信号が青に変わると、人々はスイッチが押されたかのように一斉に道路を横断し始める。多崎司はイヤホンを装着し、休日にもかかわらず大渋滞の甲州街道を人混みに続いて走り抜けた。
角を曲がると、漆黒の木々が密生する広大な森が突然視界に飛び込んできた。
ここは新宿御苑。新宿と渋谷にまたがる広大な国有公園であり、この付近で最も理想的な朝のランニングコースだ。
多崎司は自動券売機で100円の割引券を購入し、「公園内飲酒禁止」と書かれた大きな警視庁の看板を回り込み、入場券を改札に投入した。
「カチャン」という自動改札が開く音は、早朝の広々とした公園にひときわ大きく響き渡る。
「近いうちに年間パスポートを申し込まなければ……」
一度100円はたいしたことはないが、毎日来るつもりなので、積み重なると無視できない金額になるだろう。
「午後にでも証明写真を撮りに行こう。発行担当のお姉さんが、高校の制服を着たイケメンの僕を見て、半額にしてくれないかな?」
多崎司はそんなことを考えながら、公園の中心部へと走り込んだ。
小さな人工湖があり、湖畔にはヒマラヤスギがびっしりと植えられている。ここは外よりもずいぶん涼しく、鼻腔には木々と土の芳醇な香りが満ち、耳には野鳥の楽しげなさえずりが聞こえてくる。
まさにその時、見慣れた後ろ姿が多崎司の視界に飛び込んできた。
すぐ近く、目の前の池のほとりにある東屋にいた。
その女性は手に持ったペットボトルの蓋をひねり、まさに口元に持ち上げようとしていた。足音を聞きつけ、彼女は軽く多崎司の方を一瞥し、二人の視線はこの一瞬交錯した。
この瞬間、多崎司はふと思った。
彼は不意に、映画『言の葉の庭』で主人公の秋月孝雄が、まさにこの東屋で先生と出会い、そしてその足に触れた場面を思い出したのだった。




