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第11話 休みの初日、始まったばかりなのに……風邪をひいてしまった

意識の覚醒と睡眠の狭間を彷徨うような曖昧な状態で、おぼろげながら一つの情景が目に映った。


星野花見がプールの縁に立ち、顔を紅潮させて自分を見つめている。ごく面積の少ないビキニの水着がかろうじて彼女の胸と臀部を覆い、誘惑的な曲線が露わになっていた。


腹部には一切の贅肉がなく、長く伸びた脚は艶めかしく、白く滑らかな肌は真夏の太陽の下で魅力的なピンク色の光を放っている……。


「た……多崎くん……好き……ですか?」


先生は体をよじらせ、両手を上下させながら水着によって強調された豊かな肢体を隠そうとし、同時に笑顔で顔の羞恥を覆い隠そうと試みた。


しかし……その身振り手振りと表情が相まって、かえって彼女をより一層色っぽく見せていた。


多崎司は突然、抑えきれないほどの顔の紅潮と胸の高鳴りを感じ、体がひどく熱くなった。体内では何かが蠢動しており、まるで十数年間眠っていた猛獣が目覚めたかのようだった。


「す……好き……です……」


彼は思わず彼女に向かって足を踏み出した結果、足元が滑り、そのままプールに転落した。


そして。


多崎司はベッドの上で目を開けた。窓の外に広がるのは、風光明媚な春の朝の景色だった。


時刻は4月29日、午前8時半。


一体……なぜこのような夢を見たのだろう?


わずか15歳の少年には、あまりにも刺激的な夢ではないか!


多崎司は目を擦り、無理にでも先ほどの夢の光景を思い出さないように努めた。彼は起き上がって近くの新宿御苑へジョギングに行こうと考えていた。今日から体をしっかりと鍛え、今学期中に体力を5ポイントまで上げることを目指す。


だが、起き上がったばかりだというのに、全身がだるく、頭がぼんやりとしていた。


手の甲を額に当ててみると、本当に体がひどく熱いことに気づいた。


多崎司は畳の上に座り、窓外の晴れ渡った空を見つめ、思案に耽った。


まさか……栖川新浩は超能力者なのか?


昨夜の雨の目的は、自分が病気になることで戦闘能力を失わせることだったのか。でなければ……なぜ昨夜の雨は、自分が家に着いた途端に止んだのか説明がつかない!


世の中には、人知れぬ超常の力が存在するのか?


そして、その全てが謎の人物によって密かに操られている……。


枕元で鳴り響く携帯電話の着信音が、多崎司の頭の中の「世界を救う」という幻想を打ち破った。画面に表示されたのは見知らぬ番号で、指で受話アイコンをスライドさせると、受話器から栗山桜良の声が聞こえてきた。


「午前10時、剣道部。遅刻しないで。それから、これも私のLINEアカウントだから、追加しておくように」


言葉が終わるや否や、通話は切断された。


彼女は番号を間違えることを恐れないのだろうか?


多崎司はぼんやりとLINEの画面を開くと、二宮詩織のアイコンに未読メッセージが5件表示されているのを見た。


【二宮:一匹の異端な豚?あなたのアカウント名、すごく変だけど、あなたの雰囲気にぴったりだね(笑.jpg)】

【二宮:おはよう、スキ君、今日も元気いっぱいの1日だよ。】

【二宮:画像(少女が全身鏡の前に立ち、ピースサインをして、笑顔は活気に満ちている。)】

【二宮:30分も未読だなんて、まさかまだ起きてないの?】

【二宮:8時だよ……スキ君、怠けすぎだよ、早く起きて、もうお日様がお尻を照らしてるよ!】


春日香苗からもメッセージが来ていた。午前7時に送られたもので、内容は簡単な「おはよう」と、可愛らしいが意味不明な猫の顔文字が添えられていた。


栗山桜良については……ちぇ、誰が彼女のアカウントなんか追加したがるものか。


多崎司は重い体を引きずりながら起床し、簡単に身支度を整えて制服に着替え、家を出た。


細い路地を抜けると、少し広めの十字路に出た。道沿いには多くの商店が並んでいる。


240円の焼きおにぎりを買い、食べながら歩いていると、薬局の前で多崎司は少し躊躇した後、中に入って解熱剤を買った。


雨に降られたせいで、ただでさえ豊かではない家計に追い打ちがかかる。


会計の際、30代の女性店員が何度も彼をちら見し、今にもよだれを垂らしそうだった。


新宿駅に着き、混み合う電車の中に座ると、多崎司は電車の窓ガラスに映る今の自分の姿を見た。


髪はやや乱れているものの不快感はなく、文学的な雰囲気を漂わせる端正な顔立ちだ。


特にその無関心な眼差しは、世の全てを見透かしたかのような寂寥感を帯びた光を放っている。この老練な雰囲気がわずか15歳の顔に現れていることは、愛情深すぎる年上の女性たちにとってはまさに核兵器級の破壊力を持つに違いない。


風邪をひいたのに、かえって……格好良くなった。


ぼんやりと見つめた後、多崎司は自嘲的に笑った。ガラスに映る人影は、さらに足がすくむほど格好良かった。


「カシャッ」


耳元でシャッター音が響いた。


多崎司が音のする方を見ると、いかにも高校生くらいの少女が俯いており、耳の付け根が赤くなっている。背中に回した両手には、おそらく彼女の「犯行道具」が隠されているのだろう。


どうやら、自分の魅力は同年代の少女にとっても、同様に絶大な破壊力があるらしい。


しかし、彼女も随分とおっちょこちょいだ。日本のどのカメラもシャッター音を消すことはできないとはいえ、携帯電話でこっそり撮るなら、もっと簡単にバレずに済む方法がある。


シャッターボタンを押さずに、スクリーンショットボタンを押せばいいのだ。


多崎司は視線を戻し、車両を降りた。


四ツ谷駅を出ると、休日のためか、学校へと続く長い坂道はひっそりとしていた。校門をくぐり、高くそびえるけやきの木を通り過ぎると、遠くのグラウンドではサッカー部と野球部の部員たちが合宿に励んでいる。


確かに今日は良い天気だ。空は澄み渡り、新緑の葉が風に揺れてきらきらと輝いている。


時折、「パン」という音が聞こえてくるが、それがバットがボールを打つ音なのか、それともサッカーボールがゴールポストに当たった音なのかは定かではない。


校道に植えられた桜の木は、一夜の雨ですっかり花びらを落とし、かつての淡いピンクに彩られたキャンパスはロマンチックな色彩を失っていた。校門から部活動棟へと向かう多崎司は、ため息を禁じ得なかった。まだ一度も春の桜を堪能していないうちに、全てが散ってしまったのだから。


部活動棟に到着した時、LINEに新しいメッセージが届いた。


【二宮:スキ君、なんで既読無視するの?】


既読機能は世の中で最も悪質な機能だ。このアイデアを考えた奴は火炙りにされるべきだ!


多崎司は熟考し、携帯電話を手に取って彼女に返信した。


部活動棟3階の剣道部活動室内で、携帯電話の通知ランプが点滅するのと同時に、二宮詩織の瞳が輝いた。


【スキ君:今、電車に乗っていたところだよ】


暖かな春風が教室の綿製カーテンを揺らす中、二宮詩織は携帯電話を手に窓際へ歩み寄った。薄い雲間から差し込む陽光が、彼女の足元の木の床を照らし、柔らかな光沢を反射している。


【電車?スキ君って、他の女の子とデートに行ってたの?(泣き泣き泣き.jpg)】


【スキ君:学校に戻るところだよ】


【あなたの部活も合宿なの?】


【スキ君:剣道部に用事があるんだ】


【わぁ、最高!どこまで来てる?】


【スキ君:今、部活動棟に着いたところ】


【今、迎えに行くね!】


やったー!


携帯電話を置いた途端、二宮詩織は歓声を上げ、足取りも軽くドアの外へと駆け出した。ワックスがけされた木の床に白い靴下がほとんど音を立てずに吸い付く。


「待て!」


背後から聞こえてきた忌々しい声に、彼女は眉をひそめ、不機嫌そうに振り返った。


「今から稽古が始まるというのに、どこへ行くつもりだ?」


話しかけてきたのは、かなりの体格を誇る三年生の上級生、竹内拓実だった。


二宮詩織は唇を尖らせた。重度の顔面至上主義者である彼女にとって、この鼻が低く丸顔で、おまけに目が非常に小さい先輩には心底うんざりしていた。


だが、相手は高学年の先輩であり、剣道部の先輩でもある。今の学校の状況下では、高学年の先輩を避けて通れないことも多く、後輩は先輩に対して恭しく謙虚な態度を保たなければならない。


もし軽率に彼を怒らせれば、彼はすぐにでも自分が先輩を尊敬していないという悪口を言いふらすかもしれない。それによって高学年の先輩たちから敵意を向けられれば、高校生活は悲惨なものになるだろう。


「竹内先輩……」二宮詩織は心中の不不満を抑え、丁寧な口調で言った。「友達が剣道部を訪ねてくることになったので、迎えに行こうと思って」


「友達?」


「一年生の同級生です」


「フン!」


竹内拓実は鼻を鳴らし、腕を組んで、冷徹な雰囲気を保っていた。二宮詩織がクールなイケメンタイプを好むことを彼は知っていた。「イケメン」という生まれつきの属性は自分とは無縁だが、せめて後天的な「クールさ」で、彼女の好みの0.5人分にでもなれるかもしれない、と。


現在、彼は半年間「クール」な態度を貫き、その後、二宮詩織に大胆に告白するつもりでいた。


世の中には、「ブサイクでも構わない、もしかしたら彼女が目を瞑ってくれるかもしれない」という言葉もある。


そう考えながら、竹内拓実はゆっくりと頷いた。「行け。彼を連れてこい。我々剣道部の実力を見せてやれ!」


「ありがとうございます、先輩」


二宮詩織は言葉が終わるや否や、すでにドアまで駆け寄っていた。


竹内拓実が呆然と見つめる中、少女は慌ただしく下駄を履き、「カカカ」と音を立てながら階段を駆け下りていった。


その焦るような後ろ姿は、授業後に食堂へ駆け込む自分と瓜二つだった。

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