第六話(Carbon):医療革命
エルムヴィレッジの医師会が、柚紀の評判を聞きつけ、レイリーの診療所を訪れた。医師たちは、柚紀の驚異的な治療技術と、ペニシリンやアスピリンといった革新的な医薬品について、詳しく話を聞きたいと熱望していた。
「……柚紀様、あなたの開発されたペニシリンとアスピリンは、我々の医療に革命をもたらす可能性を秘めています。ぜひ、これらの医薬品の使い方や、あなたの医療技術について、ご教授願えませんか?」
医師会の代表が、丁重に柚紀に頼み込んだ。柚紀は、快く彼らの申し出を受け入れ、ペニシリンやアスピリンの使い方、投与量、副作用、そして現代の医療技術について、詳しく説明した。
「……ペニシリンは、細菌による感染症に非常に効果的な薬ですが、アレルギー反応を起こす可能性があります。投与前に、必ず患者さんにアレルギーの有無を確認してください。アスピリンは、解熱鎮痛作用がありますが、胃腸障害を引き起こす可能性があります。空腹時の服用は避け、食後に服用するようにしてください。」
柚紀は、医師たちに顕微鏡の使い方を教え、様々な細菌やウイルスのスケッチを見せた。医師たちは、顕微鏡を通して見る微細な世界に、驚きと感動を覚えていた。
「……こんなにも小さな生物が、私たちの体を蝕むことがあるなんて……。柚紀様の知識は、まさに神の領域です。」
医師たちは、柚紀の知識に深く感銘を受け、敬意を表した。柚紀は、これらの医薬品を多くの薬屋で販売し、誰でも製造できるように製法も伝えた。
「……これらの医薬品は、誰もが安く使えることが重要です。また、誰もが製造できるようにすることで、悪意のある者による妨害があっても、全てには影響が出ないと考えています。第一歩として、医師会のみなさんが出資して、量産体制を構築してくれませんか?」
柚紀は、医師たちに医薬品の製法を教え、量産体制の構築を支援することを約束した。医師たちは、柚紀の寛大な申し出に深く感謝し、彼の知識と技術を広めることを誓った。
医師会との会談を終えた柚紀は、エリン、スカーレットと共に、エルムヴィレッジの中央広場へと向かった。広場では、魔法ショーが開催されていた。
「……魔法ショー?面白そうだ。どんな魔法が見られるんだろう?」
柚紀は、興味津々でショーを見始めた。しかし、ショーの内容は、柚紀の科学知識を持ってすれば、ただの再現性のある科学だった。
「……炎の色が変わった?これは、炎色反応だな。金属の種類によって、炎の色が変わるんだ。」
「……紙が燃えずに黒くなった?これは、硫酸による紙の加水分解反応だな。硫酸は、紙の繊維を分解し、炭素を生成するんだ。」
柚紀は、ショーの内容を科学的に解説し、エリンとスカーレットを驚かせた。
「……柚紀様、あなたは本当に何でも知っているのね。」
エリンは、感心した様子で言った。
「…この世界には、魔法は存在しないようだ。少なくとも、俺が確認した限りでは。」
柚紀は、魔法ショーを最後まで見届け、魔法が存在しないことを確信した。彼は、この異世界の科学の水準をさらに詳しく知りたいと思った。