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第十七話(Chlorine):THE SOUNDS OF EARTH

春が来て、ラボの窓からは桜が咲き誇る美しい景色が見えた。柚紀たちは、窓から外を眺め、春の訪れを感じていた。


「……綺麗だなぁ。」


エリンは、桜の美しさに目を奪われていた。


「……この時代のガラスは、シリンダー法で作られているらしい。気泡はあるけど、大きな窓から見る桜は格別だ。」


柚紀は、ガラスについて説明した。シリンダー法とは、筒状にガラスを成形し、それを開いて板ガラスにする製法である。


ラボは、外から見れば木造の倉庫だが、室内は漆喰が塗られ、白い壁と天井に電球が輝き、現代的な雰囲気だった。壁には、排気システムを設置するための正方形の穴が開けられていた。


「……ここにダクトを通して、有害なガスなどを排気する予定だ。」


柚紀は、排気システムの必要性を説明した。


机は木製だが、天板にはガラス板が貼られ、薬品による腐食を防いでいた。ラボの奥には、寝泊まりや料理ができる部屋もあった。


「……いくら掛かったんだ、これ……。」


ヒューストンは、ラボの豪華さに驚いていた。


「……無理もない。彼らは、俺の発明がどれだけ利益を出しているのか知らないからな。」


柚紀は、心の中で呟いた。電球と電池の評判は国中に広がり、生産が追いつかないほどの人気だった。


柚紀から発明の利益について聞いたヒューストンとサーモンは、このラボで一緒に働くことを決意した。


ラボに来て最初に、ヒューストンの作ったモーターと建築業者に依頼していた水車を組み合わせ、ラボの近くにある小川に設置しにいった。しかし、水車で発電した電気を、ラボにある柚紀が研究していたバッテリーとそこからさらにさまざまな装置に届けるための電線が必要だった。この異世界で、まともに銅線を作る方法はない。そこで、まずは水車に鉄のロールを取り付け、圧延機にした。こうして、銅板を薄く伸ばし、さらに円形にまとめ、銅線を作ることができるようになった。この銅線に、絹糸をを巻けば、絹巻の電線ができる。


(日本でも、水車を使い銅を加工し、さらに絹糸を巻くことで、銅の電線が作られたことが、電線の始まりだった。)


「この電線をラボに繋げば.......電気の安定供給ができるようになる!......」


「……これで、色々な実験ができる。」


柚紀は、実験器具を見渡し、科学への情熱を燃やしていた。


次の日から、柚紀たちは実験を重ねていた。次に、通信機の研究を始めた。柚紀は、無線通信機を作るために、バッテリー、マイク、スピーカー、リレー、アンテナを作っていた。


(無線通信機の原理:マイクで音声を電気信号に変換し、リレーで増幅、アンテナから電波として送信する。受信側では、アンテナで電波を受信し、リレーで増幅、スピーカーで音声に変換する。リレーは、外部から電気信号を送るとオンになる電磁石でできたのスイッチである。これを応用すれば、小さい電気信号をより大きなものに変えられる。)


マイクとスピーカーは基本的に同じ仕組みであるため、同じものを作れば良いが、細かい作業が必要だった。また、永久磁石が必要になるため、今回はスカーレットに頼んで買いに行ってもらった。しかし、永久磁石はなかなか希少だ。ネオジム磁石のように、合金を作り、人工的に永久磁石を作るか、高電圧で磁石を作らなければ、後に大量に永久磁石を使う工作で苦労するだろう。


しばらくして、柚紀たちはアンテナを作っていた。送信側には棒にコイルを巻きつけたアンテナ、受信側にはパラボラアンテナをつけた。


(可変抵抗などで周波数を調整できる簡易的な無線通信機。)


完成した通信機を使い、通信を行おうと周波数を設定している時だった。


「……何か聞こえる……?」


エリンが、通信機から聞こえる音に気づいた。


「……これは……地球の無線通信だ!」


柚紀は、驚愕の声を上げた。通信機からは、地球の無線通信の音が聞こえてきた。


(短波帯の国際放送、アマチュア無線など、地球の電波が電離層を通過して別の星に届く可能性がある。)


「……まさか、こんなことがあるなんて……!」


柚紀は、地球との繋がりを感じ、感動していた。

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