第十五話(Phosphorescence):農業革命
柚紀は、新しく買った白衣を身につけて、朝から実験に没頭していた。その白い外衣を身につけている柚紀が珍しかったのをみたエリンは、柚紀に尋ねた。
「柚紀くん、その白い服はなんなの......?」
柚紀は少し照れくさそうに答えた。
「これは白衣といって、実験の時に汚れたり、危険なものがつかないようにするための服だよ。」
エリンは感心した様子で白衣を眺めていた。その後、エリンはいつも通りレイリーへと向かっていった。その後、柚紀とスカーレットは、硝酸とアンモニア水を反応させ、硝酸アンモニウムを得る実験を始めた。
(化学式:HNO3 + NH3 → NH4NO3)
硝酸アンモニウムは、窒素を豊富に含み、肥料として優れた物質である。窒素は、植物の成長に不可欠な栄養素であり、葉や茎の成長を促進する。
「……これで、作物の成長を促進できる。」
柚紀は、硝酸アンモニウムの生成に成功し、満足そうに頷いた。
次に、柚紀はリンによる肥料を考えた。リンも、植物の成長に重要な栄養素であり、根や花の成長を促進する。
「……リンを効率的に回収するには、尿を使うしかない。」
柚紀は、アンモニア生成と同様に、尿を強アルカリ性にしてアンモニアを発生させた。その後、残った尿にニガリを加えると、リンが沈殿した。
(リン酸マグネシウムアンモニウムの生成:NH4+ + Mg2+ + PO43- → NH4MgPO4)
この沈殿物から、リン酸アンモニウムなどの肥料を作ることができる。
(リン酸アンモニウムの生成:NH4MgPO4 + H2SO4 → (NH4)2HPO4 + MgSO4)
柚紀は、この手順でリン酸アンモニウムを生成し、肥料として利用することにした。
その間、エリンはレイリーの診療所を手伝っていた。彼女は、柚紀の代わりに患者の世話をし、診療所の運営をサポートしていた。
「……エリンさん、いつもありがとうございます。」
レイリーは、エリンに感謝の言葉を述べた。エリンは、笑顔で答えた。
「……いえ、私にできることがあれば、何でもします。」
柚紀が肥料の生成に成功すると、サーモンに肥料を渡した。サーモンは、柚紀が見つけた農業に適した土地で、肥料を使った農業を始めた。
「……これで、作物が豊かに育つはずだ。」
サーモンは、肥料を撒きながら、期待に胸を膨らませた。
そこでは、ヒューストンが作ったクワなどの農具も活用され、効率的に農業が進められていた。
「……ヒューストン、ありがとう。おかげで、作業がはかどるよ。」
サーモンは、ヒューストンに感謝の言葉を述べた。ヒューストンは、照れくさそうに笑った。
夜になり、柚紀は一人、ラボの設計図を考えていた。彼は、今後の工業の発展について考えていた。
「……早くコンピュータも飛行機も科学の全てをこの異世界に......」
柚紀は、地球にいた頃の科学技術を思い出していた。その中で、ふとこの異世界を調べることのできる決定的な手段が思い浮かんできた。そう、ロケットだ。ロケットで衛星を打ち上げられれば、この星について詳しい情報が得られる。しかも衛星があれば、付近の星も調べられるかもしれない。
「......ロケットがあれば......」
今後の科学の発展にラボは必要不可欠だ。だからこそ柚紀は、ラボの設計図を見ながら、未来への希望を膨らませていた。