第16話 新人戦の行方
俺の試合は一回戦の最後、つまり待ち時間が一番長い。その間に他参加者と雑談を交わしたりして、退屈はしなかったんだけどな。出会い頭は少しばかりアレな態度だったが、最終的にはどいつとも結構話せる仲になった。あ、けどカンニングの奴は例外な? あいつは真っ先に転送されたし、その後にここへ戻って来る事はなかったからな。
つか、転送された奴は誰も戻って来てねぇ。敗者側は戻る意味がないにしても、勝った方も戻らないってのは、どういう事だろうか。別の場所で待機してんのかね。まあ、トーナメント表がリアルタイムで戦績を更新してくれるから、誰が勝ったかは分かるんだけどよ。クロポニ? ああ、あんだけ自信満々に言っていただけあって、見事に勝利していたよ。で、いよいよ俺の番が回ってくる事になったんだが――
「さあさあ盛り上がってまいりました、本日の新・人・戦ッ! ご覧ください、アウトカーストの試合とは思えぬほどの盛況ぶりです! 新人戦は一部層に熱狂的な人気を誇る大会ですが、それにしたって観客が多過ぎだろ、この野郎! この新人戦に参加するカードマスター達が、それだけ注目されているのでしょうか!? うーん、分からん! お前ら、一体どういう事だ!? 叫んで教えやがれッ!」
「「「「「繝昴ル縺。繧?s縺瑚ヲ九◆縺?s縺倥c縺薙?驥朱ヮ」」」」」
転送が完了すると同時に聞こえてきたのは、闘技場全体に響き渡るアナウンスの声だった。まるでカード格闘技の試合を実況しているかのような弁舌である。いや、実際そうなんだろう。あの天使共、カードマスターには剣闘士的な側面もあるとか言っていたからな。大会とは言わば見世物で、だからこそ観客受けの良い行動が求められるって訳だ。
……にしても、だ。分かっていた事ではあるけどよ、その観客共も明らかに人間じゃないな。見るからに怪物そうな奴も居れば、巨人の如く馬鹿みてぇにデカい奴も居る。見た目だけなら人間のような奴らも居るには居るが、その本質は天使達に近い気がするな。まあ、つまるところ全員化け物だ。上位存在とでも呼べば良いだろうか。変な言葉使ってるし。
「新人戦らしく将来が楽しみな者、ルーキーらしからぬ活躍を見せる者、揃いも揃ってしょっぱい試合を行う者も居ましたが、本試合の彼らは一体どのような頭角を現し、或いは醜態を晒してくれるのでしょうか!? どっちにしたって楽しみだ! ではでは軽くではありますが、カードマスターの紹介を致しましょう!」
「うわっ……!?」
俺の相手となるカードマスターに、カラフルなスポットライトが当たる。あ、これって次に俺に来るパターン?
「レベル1の新人カードマスター、ベタブミ! 新人戦故に公式の戦績は省きますが、野良試合では3勝3敗と何とも言えない勝ち負けを続けています! 見た目も実力も、ザ・普通! この大会で成り上がるか、それとも地獄に落ちるかは、今後の彼の活躍次第です! まっ、平凡に期待しておきましょう!」
「……」
ベタブミ、表情が無になっているぞ。って、やっぱこっちにもスポットライトが来たよ。
「対するはレベル1の新人カードマスター・グラサン! なんとこの男、公式戦が開始される直前まで、野良試合にも参加していなかった肝っ玉です! 果たして見た目通りに気概のある男なのか、それともただの無鉄砲なのか、この試合で見極めると致しましょう! 実力を盛大に見晒せッ!」
ふう、変な事は言われなかったか。ただ、紹介の最中にどこからか変な視線を感じた。殺気、ではないと思う。どちらかと言えば、俺を見透かそうとしているような……スカウトが近いか? 単純に試合を楽しもうってタイプでないのは確かだ。上のエリアではカードマスターの派閥争いでもあるのかね? やれやれ、怪物社会も人間社会とそう変わらないのかもしれないな。まっ、今はそれよりも――
「双方、準備は良いですね!? それでは、バトル開始ですッ!」
「――バトルを楽しもうか、ベタブミ!」
「おう、爆走してやるぜ、グラおじ!」
「「バトルッ!」」
◇ ◇ ◇
「――『屋敷の護り手』でカードマスターを攻撃。これで仕舞いだ」
「うおおおおッ!?」
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トンカツ ライフポイント3⇒0
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「決まった~~~! 準決勝第二試合、グラサンの勝利だぁ~~~!」
「「「「「繝。繧、繝峨&繧灘シキ縺?∞縺?ャ?」」」」」
順調にトーナメントを勝ち進んだ俺は、準決勝で豚カツマスターであるトンカツと当たる事となった。まさか、デッキまでもが豚カツテーマだったとはな、完全に虚を突かれてしまった。爆走デッキ使いのベタブミが、勝手に自滅した時と同じくらい、いや、それ以上に驚いたわ。オーク系の【領主】が自身を調理して豚カツに【進化】するとか、一体誰が予想できるだろうか? 少なくとも、観客受けはとんでもなく良かったように思える。まっ、カードマスターや実況と違って、観客の声は相変わらずバグった風に聞こえるんだが……にしても、何かすげぇ腹が減った気がする。
「俺の負けか……グラおじ、ポニちゃんが言っていた通り、やっぱアンタは強いよ。決勝戦、俺の分まで頑張ってくれよな!」
「了解だ、全力を尽くそう。つかトンカツ、お前さんもあんなトリッキーなデッキ、よく扱えるもんだな? なんつうか、色々な意味で次に戦う時が楽しみだ」
「ああ、俺も楽しみにしているよ。よし、その時までには二度揚げができるように、修練を積んでおかないとな!」
「お、おう?」
カードの話、なんだよな?
「次の試合はいよいよ決勝戦です! 果たしてルーキーの頂点に立つのは、グラサンとクロポニのどちらでしょうかッ!?」
二度揚げについてはさて置き、今は実況の言葉に耳を傾けよう。ったく、結局あいつの宣言通り、決勝でぶつかる事になっちまったな。まあ、ぶっちゃけ俺もそう思っていたから、別に予想外な展開って訳ではないんだが。
って、トンカツの姿がねぇ! さっきまで普通に話していたってのに、マジで急だな。恐らく転送されたんだろう。で、一方の俺は転送されずにそのままって事は、つまり――
「――このまま決勝を始めるのか」
「みたいだね。グラおじさん、体力大丈夫? 連戦できそ?」
居なくなったトンカツの代わりに、向かいにはクロポニが立っていた。相変わらず生意気な小僧だ。自信満々の仁王立ちでの登場――なのだが、ぶっちゃけ子供の背伸びにしか見えない。
「「「「「繝昴ル縺。繧?s蜿ッ諢帙>?」」」」」
ただ、むしろそれが観客達に受けているのか、謎の喝采が巻き起こっていた。おいおい、今日一番の歓声じゃないか、これ。最下層の大会にこれだけの観客が集まったのって、ひょっとしてクロポニが影響してんのか? まあ、ガキのカードマスターってクロポニくらいしか見ねぇし、珍しいのかもな。
「ククッ……舐めんな、俺はまだまだ働き盛りだぜ? ただ腹は減ったからよ、上のエリアで豚カツでも食いたい気分なんだ。優勝したら、結構なGも手に入る事だしなぁッ!」
「フフッ、そうだね。でも、グラおじさんは準優勝止まりじゃないかな? 今日のところは豚カツを諦めて、鉱物バーをお腹いっぱい食べてよねッ!」
「おおっと、開始前から凄まじい舌戦が繰り広げられております! これは熱が冷めぬうちに、とっととバトルに突入致しましょう! 勝利を掴み、未来へのチケットを手に入れろ! 新人戦決勝戦、始めちゃってくださ~い!」
「「――バトル(だよ)!」」
コックピットが展開され、運命という名のコインが投げられた。




