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黒眼のカードマスター ~無頼漢の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
レベル5 闘技都市バトルオリンピア
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第116話 第一目標

「フンドシとデンガクは黎明期から活躍していたカードマスターでね、企業七騎きぎょうななつきと言う呼び名がなかった時代に正面からトップを打ち倒して、その座を不動のものにさせていったの。今でこそデンガクは第五席だけど、それ以降はツートップ体制で暫くライバル関係が続いていたわ。まあ、デンガクはその時から全身をマントで覆って、絶対に姿を表に出さなかったけれどね」


 ああ、そういや持っている雑誌にも、デンガクが正体不明の謎の人物だって紹介されていたっけな。その時代からずっとって事は、よほど徹底しているんだろう。


「デンガクの事を知っているのは、スポンサー企業のアース食品の社長、それとかつてのライバルだったフンドシだけっていう噂もあるわね。まあ、私はデンガクの中身になんて興味がないから、割とどうでも良い話だけど」

「かつてのライバルって事は、今は実力差があるのか。第一席と第五席じゃ、あって当然の話ではあるけどよ」

「それでも第五席、前にお主が戦ったというゴキョージュや、新鋭のオジョーよりも格は上じゃて。ワシに完敗するようなお主らが、侮って良い相手は言えんのう?」

「そ、そういうつもりで言ったんじゃないっすよ、オジキ」


 どんな分野でも、古豪には古豪の怖さがある。それを知らないほど、俺はバトルを侮っちゃいない。


「デンガクもそうだけど、やっぱり一番手強いのはフンドシでしょうね。彼はそんな時代から活躍しているってのに、未だに成長を続けているの。パワープレイで一気に第二席の座を掴み取った、チマミレっていう超新星が何年か前に現れてね。そんな彼女でさえも、第一席の座だけは奪い取る事ができなかった。そんなチマミレをなぞるように、今はオジョーがとんでもない勢いで成長しているけど……フンドシの実力に届くかどうかは、正直怪しいところなのよね」

「「オ、オジョーが、だと……!?」」


 声を合わせて愕然とする俺とシチサン。レイコ社長が嘘を言っているとは思わないが、それだけ俺達の中にあるオジョー像は完璧だったんだ。


「そこは予想通りの反応をしてくれるのね。まあ、私の知っている情報も今となっては古いかもだし、その辺りの考察は3週間後の順位戦を見てからにしましょうか。さて、我が社の目的の話に戻るけど、第一の目標として企業七騎への挑戦権を得られるレベル10へと到達する事、これを最優先事項とするわ!」

「レベル10? え~、まだまだ道半じゃん。第一の目標遠くない?」

「今までよりもレベルが上げ辛いのは確かでしょうね。もう分かっていると思うけど、レベルが上がれば上がるほどにカードマスターの価値も上がって、裏闘技場は活用し難くなる。元々ああいう場所って、割とどうでも良い人材が一攫千金を夢見る場所だったからね。もちろん、場合によっては大企業同士が水面下で賭けをする事もあるけど、実施される頻度は稀も稀よ」

「じゃ、これからは表の大会でレベル上げに勤しむ事になるのか? 俺、レベル1以来一度も参加してねぇから、よく分からないんだが……」

「別に無理に参加する必要もないんじゃないの? 野良バトルで連勝を続けていったら、そのうち経験値もマックスになるでしょ」

「あら、貴方達知らないの?」

「「「「?」」」」

「レベル5からはレベルアップ条件が1つ増えているのよ。大会に優勝して経験値をマックスにしない限り、次のレベルには上がらないの。まだ説明していなかったかしら?」

「「「「……はい?」」」」


 声を揃えて初耳話に反応する俺達。が、オジキとシチサンは無反応であった。


「お前ら、少しは情報収集をした方が良いぞ? 少し調べれば分かる情報だ」

「カカカッ、まあ初見殺しの類だったかもしれんのう!」

「そういう情報があるんなら、共有しておいてくれよ。オジキもそうだ、人が悪い……!」

「カッカッカ、すまぬのじゃ!」


 クッ、この1週間は今日の為のデッキ調整ばかりしていたから、その弊害が出ちまったか。


「そんな訳で、レベル5からは嫌でも表の大会に参加する必要があるのよ。一応確認しておくけど、全員参加条件である経験値50のラインは超えているわよね?」

「まあ、野良バトルはそこそこやっていたからな」

「僕なんて、もう90間際~」

「ア、アタシは割とギリギリだったり……」


 経験値の度合いは様々なれど、この場に集った全員が問題ないと申告する。


「そ。なら、全員その状態を1週間維持なさい。その時に大会に参加させるから」

「えっ、1週間も待つのか? アタシ的には、さっさと上に行きたいんだけど……」

「私だってそうさせたいわよ。けどね、ここはレベル5よ? カードマスターの母数が多くて連日連夜大会が開かれている下層と違って、表の大会もそう多くは開催されていないのよ。その代わり、規模は大きくなっているんだけれどね」

「ふむ、そこは裏と同じなんですね。思いも寄らぬ足止め要素があったものです」

「そうは言うけどね、これでもラッキーな方よ? タイミングが悪いと、オジキみたいに数週間も待たされる事もあるんだから」

「まあ、ワシはわざと待っていた節もあったんじゃがのう。皆と一緒にレベルアップしたいと、ワシの悪運がそう言っとるみたいじゃったし~」

「オジキ、遂に悪運に意思が芽生えて……いや、それは前からか」

「どういう確信の仕方?」


 経験則である。


「はいはい、脱線しない。兎に角、今月はレベル5の目玉とも呼べる大会があってね、それがこの場の全員を一度にレベルアップさせたい我が社にとって、色々と都合が良いの。そういう意味でもラッキーだったわ」

「都合が良いって、どういう風に?」

「同日立て続けに、5つもの大会が開催されるのよ。その名も『ファイブカラーズカップ』、参加条件として、決まった色のカードがデッキに入っている必要があるの」

「決まった色……ああ、カードの色は全部で5色、だからそんな名前の大会なのか」

「その通り。当日は赤、青、緑、白、黒の順で開催されるから、契約している貴方達5人がそれぞれの大会に出場し、優勝すれば――」

「――全員そろって、レベル6へ行けるって訳か」


 赤がオジキ、青がシラス、緑がシチサン、白が俺、黒がポニちゃんって感じで出場すれば、ちょうど出場枠が埋まる。なるほど、確かにこいつは都合の良い大会だ。


「ん? ん、んんっ……? えーっと、あの、アタシの枠は……?」

「クロマはアルバイトでしょ? 今回は観戦に集中なさい。そもそも貴女、レベル6でやっていける実力も足りていないでしょうし」

「えええええええええッ!?」


 本人を目の前にしてこう言うのもなんだが、少し安堵してしまった。まあ、今日の総当たり戦で全敗だった訳だし、こればっかりはな。


「レベル5の大会ともなれば、今までとは比較にならないくらいに注目もされるわ。レイコーポレーションのカードマスターとして、相応しい活躍を見せなさい。私が欲するのは優勝のみ、それ以外は死刑だからね♪」

「レイコ社長、全然冗談に聞こえないです」

「当たり前でしょ、冗談じゃないもの」

「ですよね~」


 とまあ、レイコ社長からいつもの無茶振りオーダーが下ったところで、俺達の次なる目標が定まった。偉大なる神様、レイコ社長に殺されないよう、精々頑張らせてもらいますかね。


「ああ、そうそう。最終的にはフンドシ達をぶっ倒してトップになる――いいえ、企業七騎を独占してやるのが目的になるから、それくらいの実力を目指して日々腕を磨きなさいよね。それができない場合も死刑だから」


 ……無茶振りの最終ラインはとんでもない事になりそうだ。

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