意味が分かるとゾクッとする話:呼んでますよ、トンネルさん。
「怖…」
友人に誘われて、霊が出るという噂のトンネルに男二人でやって来た。
辺りは鬱蒼と高い木に挟まれ、トンネル内は明かりも無く、どこまで続いているのかもわからなかった。
「行くぞ」
車の運転席から降り、友人はトンネルに向かってスタスタ歩き出した。
怖がりな俺も一人残されるのは嫌だ。
友人の後を追って車から降りた。
おっかなびっくり、ライトも付けず、トンネルを進んだ。
…どれくらい進んだろう。
「うわっ⁈おい、やめろ!」
突然友人が叫んだ。
「えっ⁈何⁈俺、何にもしてないよ!」
「うわっ…離せ!離せえー!」
真っ暗闇で何が起きたのかわからない。
俺は恐怖のあまり友人を置いて走り出した。
目の前に明かりが見えた。
ようやくトンネルを抜けたが、その先は行き止まりだった。
俺はあまりの怖さと疲労感でしばらく動けなかった。
どれくらい時間がたったろう。
待てど暮らせど、友人はトンネルから出てこなかった。
意を決してトンネルに近づき、
「おーい…」
絞り出すような声で友人を呼んだ。
だが、トンネルには俺の声が響いただけで友人の返事は無かった…。
〈解説〉
読んだ多くの人がこの友人はどうなったのか、と思った事でしょう。
でも本当に怖いのは、彼がこのトンネルを再び通って戻らなければならない、という事です。
トンネル内に何が待ち受けているのか、出られたとして、友人が彼を置いて帰ってしまっていたとしたら…。
彼に残されている時間はあとわずか…トンネル内と全く同じ、夜の闇が近づいているのですから。