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7話 少女と下着

「素敵な人だったね!桜さん!」


 あいちゃんは桜と親しくなれてよほど嬉しかったらしい。


「素敵な食器や小物も買えたし、また必要な物があったら買いにこよう!」


 あいちゃんはすっかりご機嫌だ。


「そう言えば、ガムと桜さん、仕事仲間って言ってたけど?何の仕事をやってるの?」


「ああ、それか?」


「そもそも、ガムの仕事って何なの?」


「あの店、アンティークも扱ってただろ?俺は、未調査の町の調査であちこちを回ってるからな。そこで見つけたアンティークを時々土産に持って帰ってたんだ。そうしたら桜のやつが、自分も探しに行きたいって言い出したんで、時々一緒に調査に行ったりするんだ」



「へえ!桜さんて、意外と行動的なんだね?あまり外には出ないタイプかと思ったよ」


「そうか?ああ見えて、結構アクティブに行動するぞ」


「へえ!アクティブな桜さんか!見てみたい!今度調査に連れてってよ!」


「仕事だからな、遊び気分で連れて行くわけにはいかない」


「えー!けちぃ!」


「・・・ついて来たかったら、ちゃんと仕事の手伝いが出来る様になるんだな。そうしたら連れて行ってやる」


「やったぁ!何をすればいいの?教えてよ!」


「そのうちな。とりあえず今日は買い物を済ませろ」



「はーい!・・・じゃあ、次は・・・あっ!下着屋さんだ!下着をそろえておきたいな!」




 あいちゃんが見つけたのは女性下着専門店だった。

 ここも量販店ではなく、このショッピングモールの最高ブランド店だ。




「じゃあ、俺はここで待ってるから一人で行ってこい」


「何照れてんの?別に他のお客さんもいないんだし、いいじゃない、一緒に選んでよ」


「なんで俺が選ぶんだよ?」


「だってさ・・・ガムが脱がす事になるかもしれないじゃん?脱がしがいのあるやつ選んだ方がよくない?」




「・・・そんな事にはならないから必要ない」




「あら!ガムちゃんじゃないの?どうしたの今日は?」


 店の前で、俺とあいちゃんが話していると、店員が声をかけてきた。




 ・・・・・身長2mはありそうな、筋肉隆々の巨漢の店員だ。


 シックなタイトスカートが今にもはち切れそうだ。




「ガムちゃんもついに女性下着の魅力に目覚めたってわけね!いいわ!アタシがガムちゃんに似合う下着を見繕ってあげる!」


 巨漢の店員は嬉しそうに俺に迫って来た。


「俺じゃない。今日はこいつが下着を買いに来た」


 俺は咄嗟に俺の後ろに隠れたあいちゃんを前に押し出した。


「あら!まあ!かわいいお嬢さんね!ガムちゃんってば、また新しい女の子引っかけてきたのね?」


店員の前に押し出されたあいちゃんは、おそるおそる自己紹介をした。


「あの、はじめまして、『愛』っていいます」


「あらぁ!シャイなお嬢さんね!アタシは『静』。ガムちゃんのお友達よ」


「『しずか』さんですか?失礼ですけど、男の方ですよね?」


「あらやだ!アタシはれっきとしたオンナよ!」


「ごめんなさい!てっきり女装が趣味の男の人かと!」


「ああ、この体の事ね?確かにボディは男性タイプよ。でもアタシのAEは女性として目覚めたのよ!」




「どういう事なの?ガム」


 あいちゃんが小声で俺に聞いてきた。



「AEは基本的に一級アンドロイドのボディに搭載したAIからでないと誕生しない。そして一級アンドロイドのボディは、明確に男性タイプと女性タイプの2種類が作られているから、AEは大抵はそのボディにマッチした性別になるはずなんだが・・・たまにこういう事もあるみたいだな」


「それって、ボディを女性タイプに交換すればいいんじゃないの?」


「そう簡単にはいかない。AEはデリケートなんだ。下手にボディを全交換するとAEそのものが消失する可能性があるんだ。特に性別の異なるボディへの交換はそのリスクが高くなる」




 AEがシステムエラーで初期化されてしまうと、自我を持たない、ただのAIに戻ってしまうのだ。


 ・・・それは、俺達エゴロイドにとっての『死』を意味する。




「そうなのよ!だからアタシはこんな体だけど、心は正真正銘の女性なのよ」


「そっかあ、それは大変ですね。ごめんさい、無神経に失礼な事を言ってしまって」


「いいのよ。初対面の人はみんな同じ反応だら。でも、初対面の人と会うのってずいぶん久しぶりよね?」


「そうだな、エゴロイドは基本的に、活動エリアを変える事は無いからな」


「行った事の無い場所に次々と出向く、もの好きなエゴロイドはガムちゃんぐらいしかいないものね」


「人を変人みたいに言うな」


「十分変人だと思うけど」


「静に言われるのはどうかと思うが、まあ、そのおかげでこいつを拾ってくる事が出来たからな」


「あら、そうなの?」


「この町の郊外で、動けなくなっているところをたまたま通りかかって拾ってきたんだ」


「だって、普通にきれいな街並みが続いてたから、お店もやってるかと思ったのに、全部閉まってるんだもの」


「この町みたいにエゴロイドが集まって都市機能を復活させているエリア以外は、街並みが整っていても都市として機能していないゴーストタウンだって事は、現代の常識だろう?」


「そう・・・なんだけどさ・・・ちょっとうっかりしてただけだよ」


「まったく・・・郊外に出る時は予備のバッテリーを持ち歩くのは基本だろうが」


「あはははは・・・・・そう、だよね?」




 あいちゃんは、この世界の常識に少し疎いところがある。


 今までどこかで隔離されていたのか、あるいは目覚めたばかりなのか?




「それよりもさ!下着買おう!下着!静さん、ガム好みの勝負下着ありますか?」


「ええ!とびっきりエッチなのがあるわよ!」


「普通の下着にしろ!」


「えーっ!色っぽい下着でガムに助けてもらった恩返しをしようと思ったのに!」




「・・・そんな恩返しはいらん」



 あいちゃん本人に任せると、おかしな事になりそうだから、あいちゃんの外観年齢にあった、健全なデザインのものを静に選んでもらった。



「なるほどー・・・ガムはこういうのが好みなんだね!」



・・・違う・・・だからそういう事じゃない!


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