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12話 少女と都心

 グリーン車には、2列シートと個室があるので俺とあいちゃんは個室に入った。


 貸し切りだから別に個室でなくても他には誰もいないのだが、対面で座れるのは個室だけなのだ。


「わあ!すごい豪華!電車でこんな豪華な席に座るの初めてだよ!」


「まるで電車に乗り慣れてるみたいな言い方だな?」


「えっ?ああ、たまにしか乗った事は無いんだけどね」


「別に乗りたかったら好きなだけ乗ってもいいぞ。今では結構遠くまで路線が復活してるからな」


「へえ!どこまで行けるの?」


「高速鉄道を使えば国内の主要な都市へはほとんど行けるな。さすがに田舎の方へ行く路線は全ては復活していないがな」


「そうなんだ!だったらいろんなところに行ってみたい!」


「多少問題はあるが・・・まあ、そのうち連れて行ってやるか」


「一人で行っちゃだめなの?」


「・・・ああ、場所によっては訳ありでな、俺が一緒の方がいいだろう」


「訳ありって?」


「少し危険な事があってな・・・必要になったらそのうち話してやる」


「まあ、元々一人で行く気は無かったけどね!」


 俺に頼る気満々だな・・・こいつ。




「そういえば、さっきから途中の駅をみんな通過してるけど、この電車って特急なの?」


「特急っていうか、貸し切りだからな。目的の駅以外に止まる必要は無いだろう?」


「そんな事できるんだ!」


「いや、そもそも、俺達がホームに立ったら迎えに来た電車だろ?」


「・・・そういえばそうだったね」


「この電車に乗る時に行先を指定しておいたんだ」


「そうだ!今日の目的地はどこなの?」


 そういや行先も知らないでついてきたんだったな。


「目的地はあそこだ」


 俺は窓から見える高層ビル群の更に向こうに見える超々高層ビルを指さした。


「えっ!なに?あれ?・・・・あんなビル知らない・・・」


 あいちゃんにしては珍しくガチで驚いている様だった。


 目の前の超高層ビル群の左手には、その2倍はある電波塔が見える。

 だが、これから行くビルは、その電波塔の更に2倍以上ある、この地域て圧倒的に一番高い建造物だ。


「この地域で一番高いビルだ。昨日は空気がかすんでいて見えなかったが、空気が澄んでいれば俺の家からでもはっきりと見えるぞ」


「へえ!あんなビルが出来てたんだ・・・」




 電車は目的の駅が近づくと次第に減速し、静かに停車した。


 地下の駅なので、この上にある超々高層ビルはその姿が見えない



「さ、降りるぞ」


 俺とあいちゃんは電車を降りて、誰もいないホームから階段を下りた。




「わあ!ひろーい!・・・そして、だれもいなーい!」


 俺達が下りたのは、都心でも一二を争う大規模な駅だったが、駅には人っ子一人いなかった。


「こんな大きな駅に誰もいないなんて不思議!」


「そうか?いつもこんなもんだが?」


「そうなんだ!ねえ、駅の中でかけっこしようよ!」


「するか!」


 あいちゃんは、はしゃぎ出すきっかけが良くわからん。


「えーっ、じゃあ一人で走って来るよ!」


 そして、あいちゃんは本当に駅の中を走り始めた。


 ・・・何やってんだ?あいつ。




「はあ、はあ、やっぱり広いや!この駅」


 しばらく待っていると、息を切らしたあいちゃんが帰って来た。


「ほんとに一回りしてきたのか?」


「うん、誰もいなかったよ」


「そうだろうな、俺達が乗って来た電車以外、他に電車が停まっていなかったからな」


「そっか!ほんとに電車を使う時は貸し切りなんだね」


「それよりもう行くぞ」


「ここからどこに行くの?」


「さっきのビルのエレベーターに乗る。エレベータホールまで歩いていけなくもないが、それに乗るぞ」


 俺は駅を出たところにたくさん停まっているカートの一つに乗った。


「へえ!おもしろい!これって電気自動車?」


「何言ってんだ?自動車は電気で動いてるに決まってんだろ?そしてこれは屋内移動用のカートだ。」


 カートは行先を指定すると動き始めた。


 人がいる時は速度制限がかかるのだが、誰もいないので、それなりにスピードを出していた様だ。

 

 カートは駅前から放射状に延びる地下通路を目的のビルにのエレベーターホールに向かって移動して行った。


 そして、30秒程度でエレベーターホールに着いた。


 

「俺はここの地下に用がある。そこには連れて行けないから用が済むまで最上階の展望室で待ってろ」


「うん!わかった!」


「じゃあ俺は下りのエレベーターに乗る。あいちゃんはそっちの登りエレベーターに乗れ」


「わかった!展望室で待っていればいいんだよね?」


「ああそうだ。こっちはそれほど時間はかからんだろう」


「じゃあ、また後でね!」




 このビルのエレベーターは登りと下りの乗り口が固定になっている。

 ワイヤー式ではなくリニアモーター式で、複数の昇降ボックスが登りレーンと下りレーンをそれぞれ巡回しているので、ワイヤー式エレベーターよりも効率良く多くの人を運べるようになっているのだ。


 もっとも今は、ほとんど利用者がいないので全く意味が無いのだが・・・


 この超々高層ビルで待ち時間なく使えるのがいい。


 


 あいちゃんが登りエレベーターで最上階に向かったのを確認してから、俺は下りエレベーターに乗った。




 下りエレベーターには地下5階までの表示しかない。

 俺は、エレベータの端末に特殊な方法でアクセスし、地下20階を指示した。


 エレベーターは降下を始め、結構な速度まで加速した。

 地下20階と言っても一階ごとが普通の高さではなく、かなりの深さを潜っている事がわかる。




 地下20階に到着すると、エレベーターホールの前に厳重に閉ざされた扉があった。


 俺はその扉の端末にアクセスし、扉を開いた。



 そうやって、いくつかの扉を進むと・・・その先はオペレーションルームになっており、コンソールと無数のモニターが並んでいた。


 モニターの向こうはガラス張りになっており、その奥には、夥しい数の四角い箱が並んでいる。




 そう・・・この場所には、この国の中枢となるメインコンピューターが設置されているのだ。


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