11話 少女と鉄道
「おはよう!ガム」
「おはよう、あいちゃん。朝食出来てるぞ」
昨日拾ってきた少女『あいちゃん』と同居する事になって初めての朝を迎えた。
とは言っても、昨晩は別の部屋で寝たので、何かあったわけでもないのだが・・・
「わあ!ハムエッグだ!いかにも朝食って感じだね!」
俺の用意したのはハムエッグにサラダ、クロワッサンにヨーグルトと果物だ。
「とりあえず洋食にしてみたが和食の方が良かったか?」
「どっちもOKだよ!好き嫌いは無いからね?早速食べてもいい?」
「その前に服を着てこい。下着姿でうろうろするな」
あいちゃんは早速昨日買った下着を俺に披露していた。
「えー!いいじゃん、この方が楽だし、二人しかいないんだから」
「その俺に気を使え」
「・・・下着も脱ごうか?」
「服を着ろ!」
「はーい!」
あいちゃんは部屋に戻って服を着てきた。
昨日買ったミニスカートだった。
生足がみずみずしい・・・
「ちょっと露出が多い気もするがまあいいだろう」
「生足が気になるでしょ?今足見てたもんね」
「その前に下着姿を見せておいて何を言っている?」
「ミニスカートから見える生足は、また格別でしょう?」
「まあ、確かにそうだが・・・ってそういう趣味の話をしているんじゃない」
「まあいいや、とりあえずいただきます!」
あいちゃんはそう言って朝ごはんを食べ始めた。
「わあ!この目玉焼きおいしい!絶妙な半熟具合だよ」
「目玉焼きの焼き加減にはこだわりがあるんだ」
「へえ!ガムも料理人なんだね?」
「せっかく食べるならおいしく食べた方がいいだろう?」
「それ!同感!」
あいちゃんはそう言って、朝ごはんをおいしそうにたいらげた。
「ふう!おいしかった!ごちそうさま」
「さて、今日は俺は用があって出かけるがあいちゃんはどうする?」
「ガムはどこに行くの?」
「都心に用があるんだ。電車に乗って都心に行ってくる」
「えっ!電車に乗るの?いいな!あたしも乗りたい!ついて行ってもいい?」
「ついて来るのは構わないが特に面白い事もないぞ?」
「電車に乗ってみたい!ちゃんと動いてたんだね?」
「ああ、利用者がほとんどいないから、必要な時しか動いていないが、運行は再開しているから線路が繋がっているところならどこにでも行けるぞ」
「へえ!そうだったんだ!走ってるのを見かけなかったから使えなくなっているのかと思ったよ!」
「じゃあ、出かける準備をしろ。準備が出来たら行くぞ」
「うん!すぐに準備をするよ!あっ!洗い物はあたしがするね!」
あいちゃんは食器を洗い始めた。
意外と食器洗いはうまいな。
結構器用に洗っている。
俺の住むマンションは駅のすぐそばだ。
だからマンションから外に出るとそこはもう駅前ロータリーだ。
一応、路線バスやタクシーも機能しているので、乗り場で待機している。
それぞれがAIで自動運転されているので運転手はいない。
もし運転手がいたとしても結局それもAIで動いているのだから、車両を直接AIで動かしても同じ事だ。
「タクシーで行ってもいいんだが、今回は行先も駅前だから電車で構わないだろう」
「うん!タクシーやバスはまた今度乗りたい!」
俺とあいちゃんは駅に入って、そのままホームへとエスカレーターで登っていった。
「あれっ?改札って無いんだ?」
駅の入り口には何のゲートも無く、そのままホームまで素通りできる様になっている。
「改札ってのは大昔の駅にあったという、料金を支払うゲートの事か?別に料金はいらないからそんなもの必要無いだろう?っていうか、何でそんな昔の情報を知ってるんだ?」
「あっ!そうなんだ!ここの電車乗るの初めてで」
「まあ、いいか。少し待ってろ」
「時刻表はないの?次の電車は何時なんだろう?」
「何を言っている?ホームで待っていれば勝手に電車がやって来るだろ?」
「えっ?どういう事?」
・・・あいちゃんはさっきから何を言ってるんだ?
そんなやりとりをしているとホームに電車が入って来た。
12両編成の電車だ。
「わあ!ほんとに来た!しかも始発電車だよ!他に誰も乗ってないよ!」
「当たり前だろう。俺達のために来たんだからな」
「えっ!ちょうどこの駅始発の電車が来たんじゃないの?」
「そんな事あるわけないだろう。電車を使う奴なんか滅多にいないんだ。ホームで電車を待っていればそいつのために車庫から電車がやって来るんだ」
「ええっ!これが全部あたしたちの貸し切りって事?」
「当たり前だろ。さ、乗るぞ」
「うん!こんなにガラガラの電車乗るのって気分いいよね!」
あいちゃんはそう言って横向きシートの普通車両に乗ろうとした。
「そっちじゃない、こっちに乗るぞ」
俺はグリーン車の方へ歩いていった。
「えっ!そっちに乗っていいの?指定券がいるんじゃないの?」
「俺達しか乗らないんだ、どこに乗っても構わないだろう」
「へぇ!この路線、グリーン車なんてあったんだ!」
「当たり前だろ?。俺はいつもこっちにしか乗らないぞ」
俺とあいちゃんはグリーン車の個室に座った。
そして電車が走り出した。




