表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/83

7


 朝、市場に着くと、すでに準備が始まっていた。現場を仕切っている人の指示に従い、作業に加わった。


 倉庫に荷車を運び込み、物資を積み込んでいく。芳醇な香りが漏れ出す大きな酒樽を載せると、声をかけられた。


「酒樽をそんな軽々と。強化の魔法を使えるのか?」


 俺と同じ年頃の冒険者だ。


 肉体を強化して、筋力を上げたり頑丈にする強化の魔法を、俺は使えない。魔法全般に才能がない。体を鍛えたらこうなった。


「鍛えたところでそうは……いや、そうか、何かの亜人だったか」


 見た目では何の亜人か判別できない人もいる。俺は、女神の恩恵のおかげで力持ちになれただけの、ただのサルの亜人だ。


「女神様? 女神様っていえば、まさか、女神の抱擁の? からかってるわけじゃないよな」


 確かに信じられない話かもしれないが、嘘ではない。


 ギーセという名の冒険者と協力して荷物を積み終えた。ギーセはこの仕事の先輩だった。


 荷車を引っ張る動物が見当たらない。すると、ギーセは自ら荷車の引き手を取った。


「動物は賢いから魂の迷宮に入ろうとしない。無理に引かせて暴れられても困るし、おかげで仕事にありつける」


 ギーセと二人がかりで荷車を引いていく。


「試しに一人で引いてみてくれ」


 ギーセが力を抜いても一人で難なく荷車を引けた。


「女神様の恩恵ってのは、とんでもないな。鍛えたって話、何をやったんだ?」


 荷物を持って、担いで、体に縛りつけて、山道を運んだ。故郷の村が山奥にあったからだ。そのうち荷物だけでは物足りなくなり、石を重りにして運んでいた。


「どうかしてるって」


 ギーセは笑った。


 魂の迷宮の奥へ進んだ。通路の脇道は塞がれている。行き止まりに設置された昇降機に乗って下層へ降りた。


 降りた先には、堅牢な砦が建っていた。


「ここが第一拠点だ。魔石漁りの冒険者の出発地点でもあるし、地上から潜ってきた人の帰還地点にもなる。金を払えば設備を利用できるし、俺たちが運んできた物資も買える」


 荷車を砦内に運び、物資を倉庫に下ろした。砦内には他に、従業員用の部屋や休憩用の大部屋、食堂、トイレがあった。


 輸送を終えると、従業員から賃金を貰えた。一食と安酒一本分くらいの額だった。


「いつもなら、もう一ニ回運ぶのが体力の限界だった。その様子ならまだまだ運べるだろ?」


 様子見のつもりだったので、あと一回で止めることにした。明日から魔石漁りに戻るつもりだ。


「魔石漁りをやってるのか。女神様の恩恵があるなら、そりゃそうだよな……」


 ギーセは何か思案する様子だった。


 次の物資は、第一拠点の更に下層にある第二拠点に運んだ。輸送を終えると、ギーセはおもむろに口を開いた。


「俺もお前のパーティに入れてくれないか?」


 探索は通常、冒険者同士でパーティを組む。女神の恩恵があることと、知り合いがいないので、他人とのトラブルを避けるために一人で行動していた。


「一人って、そんな無謀……でもないか。ってことは、パーティは必要ないのか」


 ずっと一人でやっていくつもりはない。熟練者のいるパーティもあるだろうに、なぜ俺を選んだのかが気になった。


「俺も余所者だからツテもコネもない。実力も、いくつか魔法を習得した他には、特別なものがない。何より、モンスターにビビってる。だから挑戦できなかった。

 だけど、もっと金が必要なんだ、どうしても。女神様に抱きしめられた、なんていう変なやつと出会えて、恐怖より興味が勝った。いい機会だと思ったんだ」


 俺は、自分が誰かの助けがなければ生きていけない人間だということを、身にしみて知っている。魔法を使えない身にとって、魔法を使える人と組めるのは心強い。


「これまで魔法なしで探索を? 聞けば聞くほど変わってるよ、本当に」


 ギーセとパーティを組むことになった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ