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美術館の次に、最寄りの魂の迷宮の有名な入り口に来た。
入り口は、荷車の隊列がすれ違ってもなお余裕があるほど広い。空気や水を送り込む配管が通され、魔石の明かりが奥まで連なり明るく照らしている。
見学していると、冒険者に声をかけられた。仕事を探していると思われたらしい。
誘われた仕事は二つ。迷宮内の拠点への物資の輸送と、迷宮内での掘削作業だ。
内部の情報を得られると思い、輸送に参加することにした。朝に近くの市場で集合とのことだ。
宿に戻るには時間が余ったので、エリクシル教会に立ち寄った。
エリクシル教団は、文明崩壊時に人々を救ったとされる賢者を信仰し、賢者が残した知識と技術を保有している。それらを利用して得る献金が主な運営資金だ。
俺は、俺を救ってくれた女神のように、人々を救った賢者を尊敬している。教団に対して信仰心はないが、貧しい人々への援助に感謝している。
俺のわずかばかりの寄付を、応対した修道女は、受け取るのをためらった。
「少しお話ししませんか?」
礼拝堂の長椅子に座った。
「この寄付金は、無理をなさっていませんか?」
無理はしていない。むしろ少なくて申し訳ないくらいだ。
「すみません。先日の炊き出しのときにお見かけしたので、いらぬ心配をしてしまいました」
あのとき俺にスープを手渡した人だった。冒険者として生活していく目処が立ったことを伝えた。
「感謝いたします。冒険者になられたのですね。危険な仕事ではありませんか?」
修道女は心配そうだ。魂の迷宮の様子や出来事を語ると、ハラハラしたりホッとしたりコロコロと移り変わって、感情が豊かな人だった。
教団に尽くす修道士にとっては、良くも悪くも自由な冒険者の日常が新鮮なのだろうか。どんな生活をしているのか気になった。
「雑務の他に、賢者様の御業を学び、人々のために正しく行使できるよう、御心を想い祈りを捧げています。私は、まだまだ至らない未熟者ですが」
もしかしたら、賢者もこういう人だったのかもしれない。炊き出しでも何でも人手が必要なら声をかけてほしいと言った。
「ありがとうございます。困ったときはお互い様だと、賢者様の教えにもあります。私にもできることがあればおっしゃってくださいね」
修道女の優しい笑みに癒やされた。