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Story From The Lethe  作者: 鳴セ カイ響
最終章
71/79

70.収束

 夜、エリアは家へと戻り、夕食を食べている。

 ゼノンは今朝と同じく無言で口に食事を運んでいる。

「それで、明日はどこへ聞き込みに行くの?」

 エリアの頭の中でセレーネの声が響いている。どういうわけか通信がエリアの意思では終了できないようだ。


「明日にはローデリアの居場所が分かるのよね?」

 この通信先の少女は海底都市が滅びると本気で信じているらしく、ビークルで帰る途中もずっと似たような話をしていた。しまいにエリアが無視を決め込むようになると、タイミング構わずこのように声をかけてくるようになった。

 エリアは無視しようとした。


「誰か目星が……」

 が、セレーネはしつこく話かけて来る。

「あ〜もう、うるっさい!」

 エリアの我慢はついに限界を迎え、テーブルに手を打ちつけると大声で怒鳴ってしまった。

 はっとして食卓の様子を見ると、兄が驚いた顔でこちらを見ていた。


「どうした……?」

「あはは、いや、ごめん。友達と喧嘩したときのことを思い出しちゃってさ……」

 エリアは苦しい言い訳をする。

 ゼノンは困惑した顔をしたが、何も言わずに食事を再開する。やはり、いつものゼノンとは違う。

 ゼノンの顎が食事を咀嚼する音だけが賑やかに食卓を満たしている。


「……あのさ」

 エリアが恐る恐る兄の方を見る。

「何だ?」

 ゼノンは忙しなく食事を摂取しながら聞く。

「例えば、だけど、海底都市の滅亡が迫ってるって言われたら、それを信じていいと思う?」

「何……? 誰かに言われたのか?」


 最近、そんな話をローリスとアマルティアから聞いた。偶然にしてはタイミングが良すぎる。さらにここのところ、海底都市で地震が頻繁に観測されていた。ここで人類が住み始めて以来、初めての観測と言われている。あまり大きなものではないので生活に支障はないが、町では話題に上がることが多かった。


「実は、ローリスの友達だっていう変な女の子が通話してきて、このままじゃ都市が滅ぶって言うからさ」

「変な女の子ですって? 失礼しちゃうわね」


 と頭の中で声が響いている。


「もしかして、その子もローデリア様を探しているのか?」

「え? どうして知ってるの?」

「ローリスたちから聞いた」

「え!? 会ったの?」


 エリアは驚く。


「声を抑えろ!」

 ゼノンは小声で鋭く言い、席を立つと、窓際に行った。とりあえず家の付近には姿が見えない。


 そして、部屋の中に姿を隠した教団兵が居ないかどうか目を凝らしてみる。教団兵の姿を隠す魔術は周囲の環境に合わせて体の表面の反射光を制御している。いわゆる擬態のようなものらしい。

 つまり、見えにくいものの目を凝らせば見つけることは不可能ではない。


「な、何? どうしたの?」

 エリアは驚いた顔で見ている。

 ゼノンは念入りに何度か家の中を見回した後、ため息を吐いた。幸い教団兵は家の中にも居ないらしい。


 ローリスと街の一角で会ったことが教団兵に知れて以来、ゼノンは動きを監視されるようになった。


「お前に何か怪しいそぶりがあれば、お前の家族を殺す」


 と警告されている。

 それ以来どこへ行くにしても教団兵がわかるように自分を尾行していることに気がついた。

 

「はぁ!? 何それヤバすぎ! 何で言ってくれないのよ!?」

 知らないところから脅威が迫っていたことを知り、エリアは驚愕している。


「言えるわけないだろうが! それをお前に言ったことが奴らに知れたら何をされるかわからんだろ」

「……でも、もう言っちゃったって訳ね」

「ああ、結局、お前もローリスと関わっているようだからな。伝えないと逆にマズい」


 ゼノンはため息を吐く。


「で? どうなの? 海底都市が滅びるって話は信じるべき?」

「ローリスも居候の少女も、そんな嘘を吐くメリットはどこにもない。それにローリスは妹も……」


 言いかけてゼノンは重々しい表情で黙り込んだ。

 ローリスに面と向かってそれを言われてから、ずっと考えていた。ローリスたちは真実を言っているのでは、と薄々感じていた。

「なら、やっぱりローデリア様を探さないと」

 エリアは言った。

「教会の友達はどこかのアクアリウムの中央塔に居るって言ってたの。もしかして、心あたりある?」

「中央塔? まさか……」

 ゼノンは、ふと何かを思い出したようで呟く。


「いつになったら終わるんですかねぇ」


 今日、兵士が呆れ顔で言った言葉が、ゼノンの脳裏に蘇った。


「二人とも何の話をしているの……? 喧嘩しちゃダメよ」

 事情を知らない母親が、洗い物をしていた手を拭きながら現れる。二人が喧嘩をしていると思ったらしい。


「エリア」

 ゼノンはエリアの方を見る。

「母さんと父さんを頼む」

「うん、何とかしてみる」

 エリアは頷く。

 母親は訳が分からず首を傾げている。


「俺はローリスに会う必要があるらしい」

 ゼノンは立ち上がった。

「恐らく、そのローデリアが居ると言う中央塔はここのアクアリウムだ」

「だって、聞いた?」

 エリアは誰も居ない方に視線を向けて言った。


「……? 誰に言ってるんだ?」

 ゼノンが怪訝な表情でエリアを見た。

「喧嘩した友達」

 エリアは意味深に含み笑いをする。

「ローリスは明日、このアクアリウムに来るらしいわよ」

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