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Story From The Lethe  作者: 鳴セ カイ響
第2章
46/79

45.赤の瞳

 とあるアクアリウムの街中。戦闘の音もけたたましい。



「おいおい! ここは立ち入り禁止だ」



 戦闘区域の端の往来を、治安軍の兵士たちが塞いでいる。そこを通り抜けようとした男が居たので、治安軍の兵士が制止した。



「おい待て」



 向こうからこの現場の指揮官と思しき男が現れた。この平兵士の心元ないものと比べて装備も豪華だ。中央本部から派遣されて来た兵士らしい。



「その方は大丈夫だ」

「は? しかし……」



 と問答している間に、制止されて足を止めていた男は通り過ぎて行ってしまう。

 制止した兵士は唖然とその背中を見つめている。



「カークス司祭だ」

 指揮官の男は言った。


「え、あれが?」



 兵士は驚く。カークス司祭は連日、戦闘区域となった場所に現れては、たった一人で敵陣地に乗り込み制圧するという噂だった。



 普段は水神教団の重要人物の警護にあたっていると聞くが、この事態を受けて派遣されたらしい、とだけは聞いていた。



「でも、防具も着けずに祭服ですよ? しかも剣一本腰にさしただけで……。本当に大丈夫ですか?」



 噂が事実よりも大きくなることは、ままあることだ。と思っている兵士は評判を信じられずに聞いた。

 指揮官の男は問答自体が煩わしいようで、無関心に小指で耳をほじっている。



「大丈夫だ」

「はぁ……」



 兵士は煮え切らない様子で、通りの先を見ている。




 突然、通りの先で炎が吹き上がった。あまりの火力に周囲が赤く染まっている。続いて一つの建物の中で爆発。そこはポリテイアのアジトとなっているはずのあたりだった。



 通りを封鎖していた兵士たちの間でもどよめきが起きた。

 兵士は何が起きたのかと唖然としていると、先ほど制止した男が、肩に少しかかった粉塵を叩き落としながら悠々と戻って来た。

 立ち止まると、男の赤い瞳が指揮官の方を見た。



「敵は殲滅した。後処理は治安軍に任せて構わないか?」

「は! 問題ありません」



 指揮官は姿勢を正して敬礼する。男は小さく一度頷くとその場を去ってしまった。

 彼が去った後、指揮官は未だに呆然としている兵士の肩を軽快に叩いた。



「さぁ、さっさと片付けて撤収だ」



 指揮官の男はからからと笑いながら通りに居る治安軍の兵士たちを動員して行ってしまった。

 兵士は開いた口が塞がらず、しばらくその場に立ち尽くしていた。



 

 多くの拠点を失ったポリテイアは、密かに生き残りの人員をひとつのアクアリウムへと集め、ある教会に突如押しかけた。水神教団関係者と、たまたまその時に居合わせた信徒十数名を人質に取って立てこもった。

 鎮圧に当たるために、各所の治安軍支部からも応援が派遣されることとなった。



「恐らく、これがポリテイアの最後の抵抗になるだろう」



 治安軍支部前、ゼノンが通りに並んだ五十余名の兵士たちに告げる。外部への応援部隊を仕切るのは、現場に強いゼノンが役割を担うことが多かった。



「敵は教会内の人質を盾に立てこもっている。我々の任務は包囲だ。教会内の対処は別働部隊が行うが、教会は繁華街の広場中心にあるため、周囲への戦闘区域の拡大は絶対に防がなければならない。全員、心してかかってくれ」



 兵士一同敬礼した。

 その中にローリスも居る。



 作戦の説明が終わると、隊は三台のプランクトスに分かれて乗船し、アクアリウム市街地を抜け、海底道路を通って隣接するアクアリウムの教会へと向かった。


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