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Story From The Lethe  作者: 鳴セ カイ響
第2章
41/79

40.正体

 やがてエレベーターが止まった。

 前に死霊術騒動で入った時と同じように、エレベーターは最上階の前室までだった。



 部屋の端にある回廊が傾斜して上へと続いている。

 二人はそこから最上階へと上がった。



「でっか……」



 ローリスは愕然とした。以前見た塔の最上階にあったラピスラズリよりもさらに巨大だ。最上階は部屋と言うよりも、ラピスラズリの周りに部屋があると言えるくらいのありようだった。



 ラピスラズリの周囲は狭い通路が囲っていて、端に手すりがある。

 通路を少し行くと、円形に開けた場所があった。そこに計測器らしき大きな機器がいくつか並んでいる。

 さらに、ローリスは上を見ると、あることに気がついた。



「これって地上の景色なのか……?」



 部屋の屋根は大きな窓になっており、そこに水はない。

 水に遮られてはいなくても、天は澱んだように暗い。



「そうよ。二百年以上前、地上に人が住めなくなった原因の大半は、この汚れた大気のせい」



 再び少女の声が聞こえた。

 ローリスは思わず体をびくりと震わせてしまった。景色に圧倒されていて、来た目的を忘れていた。



「約束通り来たぞ。何処にいるんだ?」

「ふふ、すぐ目の前よ」



 少女は笑う。

 ローリスとアマルティアは二人して周囲を見てみるが、この声の主になりそうな人物どころか、そもそも人影もない。



「いいわ。それなら……」



 少女の声が途切れる。

 突然二人の上から白い光が照りつける。



「な、なんだ!?」



 ローリスは眩しそうに手で光を遮る。

 だんだんと光が弱まってくると、その光が空中に収束し、やがて少女の形を成していった。

 そして、その少女はゆっくりと二人の目の前に降りて来た。



「これでどうかしら?」



 少女は微笑んだ。

 真っ白な髪。着ているワンピースは、髪の色と同じように真っ白に輝いている。色素の薄い少女の体から浮き出るような真っ青な瞳が、こちらを見つめている。



 ローリスもアマルティアも呆然とそれを見つめ返していた。



「……あなたが、声の正体?」



 アマルティアがやっと口を開いた。



「ええ、そうよ」



 少女は頷く。



「ここに、住んでるの?」



 アマルティアは聞いた。

 少女はおかしそうに腹を抱えて、体を丸めながら笑う。



「……ええ、自己紹介するわ。私は、大ラピスラズリ。今、あなたたちの目の前に居る。大きな魔法石、それが私よ。初めまして、ローリス、アマルティア」

「ラピスラズリが喋ってる……?」



 前代未聞の話にローリスは目を点にして驚いている。



「他のラピスラズリも、あなたみたいに意識があるの?」

 アマルティアはそれほど驚いているふうには見えない。



「それは違うわ」

 目の前の少女は首を横に振った。



「数あるラピスラズリの中で人間と同じような『意識』があるのは唯一、私だけよ。海底都市にある全てのラピスラズリは、私の目や耳のようなもの。それを通して私はあなたたちを見てた」



「なら、今、この目の前に居るのは……」



 ローリスは手を少女の頭に向かって伸ばすが、手は少女の頭をすり抜けた。



「これは、幻影よ。音声だけより、この方が私の感情が伝わりやすいでしょ?」



 少女は愛らしい笑みを浮かべている。



「この都市が作られて二百年以上の間に収集した『感情』のデータの中から人が好意を抱きやすい年齢、性別を考慮した結果、今のこの姿、音声が適当と判断したわ」

「私をここに呼んだのはどうして?」



 アマルティアは訊いた。



「最初に通話をした時にあなたに聞いた通りよ」

 少女は急に真顔に戻った。



「あなたは、何者?」

「え……?」



 少女の問いにアマルティアは動揺する。

 ちらりと視線を隣に動かすと、ローリスもこちらを見ていた。



「さっきも言ったけど、都市の中にある無数のラピスラズリは私の目と耳よ。全ては私、大ラピスラズリに繋がっている。記録されている全ての住民の情報、映像記録、魔性紋や細事に至るまで、あらゆるデータを私が処理しているわ。今、こうして話してる間にもね」



 でも、と少女は続ける。



「……あなたの記録はない。一つの情報もね。私があなたの存在を『記録』したのは、この都市の耐水性魔力シールドの外に佇むあなたを、ローリスが見つけた時よ」

「……私は」



 アマルティアの顔が不安そうに、もう一度ローリスの方を向く。



「神堕ち」

 聞いたこともない単語を、彼女の小さな口がつぶやいた。


「神堕ち……?」

 ローリスは呆然と繰り返す。


「どういうことだ?」

 頭は急速にアマルティアの出会いの時を思い出し始めていた。



 確かに、シールドの外、深海の海の中に居た。普通なら死んでいていもおかしくない状況にも関わらず、彼女は無傷であるなど不可解な状況がいくつもあった。

 しかも、海底都市の一切の記憶がないと言う。その時が初めて海底都市に来た瞬間だとすれば、それは合点が行く。



 が、それは同時にどこから彼女が来たのか、という新たな疑問を生んだ。

 ローリスは両手で頭を掻きむしった。

 疑問が多すぎる。



「……『神堕ち』という単語ついて記録された文献は二件存在しているわ」



 白い少女のまぶたが、不自然に数回早く瞬きをした。



「最も古い文献は二五三年前に作成されたもの。そして、この文献自体、古代史に関する情報みたいね。もう一件は一八七年前、これは最初の文献に関する解説を後年、他の人が別の書籍にまとめた内容みたい」

「……その神堕ちって一体なんなんだ?」



 アマルティアは重く口を閉ざしているので、ローリスが聞いた。



「文献によれば、太古に一人の人間が自らを『神堕ち』と名乗っていたことが記されているわ。人間離れした力を持っていて、人々と共に暮らしていたようね。ただ、この文献自体が昔話のようなものだから、根拠がない作り話と見られていたみたい」



 少女は淡々と情報を教えてくれた。



「神堕ちは……」

 俯いていたアマルティアがとうとう口を開いた。ローリスと少女の視線が彼女へと集まる。



「神の世界を追放された者……」

 アマルティアはローリスの手を両手で握ると、伏せていた顔を上げた。



「ローリス、私のこと信じてくれる?」



 目には不安の色が見える。

 ローリスは頷いた。



「当然だろ」



 アマルティアはぎこちなく微笑むとゆっくりと口を開いた。



「私は、水神と呼ばれる存在だった」

 

そんなことしている暇があったら続きを書け!と言われるかもしれませんが、

エッセイを始めてしまいました



どちらかと言うと独り言みたいなエッセイです

気が向いたら作者ページなどから見て頂けたら幸いです


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