36.お手伝い
やがて、岩肌に赤い光が点々と見え始めた。海底火山の噴火口のようだ。
この二機のアーケロンの他にも、同業者が海底の鉱脈を探しているらしい。遠まきにも照明魔法の白い光が点々と見えている。
そして、コニーが操作するアーケロンが岩肌に近づいた。
コニーはアーケロンの頭の先にあるくちばしのように尖った部分を岩に打ち付ける。岩が砕け、下から真鍮のような黄色を含んだ鉱石が覗く。どうやらこれが鉱脈らしい。
「ちょっと、手伝って欲しいの」
コニーは後ろのローリスに言う。
「え……?」
ローリスは突然のことに唖然とする。
「落ちた鉱石の回収をお願い」
「いや、操作の仕方がわからない……」
「簡単だから大丈夫なの。まず、壁面のスイッチを入れて、後部ディスプレイをオンにして……」
コニーに説明されるがままにローリスは作業を手伝う。
砕いた鉱石はアーケロンの体に収納しているようで、ローリスの座る後部座席の後ろにゴロゴロと音がする。
機体が大きいのに、コックピットが狭いのはそういうわけらしい。
少し離れた別の場所で、エセルも同じように作業をしている。ローリスと同じようにアマルティアも作業を手伝わされているようだ。
目の前の空間に仮想ディスプレイが表示され、外の映像が映し出される。指で画面内の回収したい鉱石がある場所を示してトラッキングすると、その場所に重力魔法が発生し、鉱石を船体へと運んでくれるらしい。
アマルティアは指示された通りに仮想ディスプレイの中に指をさして、鉱石をトラッキングしていく。
「これが、オリハルコン?」
作業を手伝いながら、アマルティアは興味津々のようだった。
「そうだよ。オリハルコンの原石だね」
エセルは答えながらも、操縦に集中している。
「熱で溶かしてから叩くと、すっごく硬くなるの。ビークルを作るのにたくさん使う素材だよ。このアーケロンもこの鉱石から取り出したオリハルコンで出来てるの!」
コニーとエセルは鼻歌まじりに作業を続け、小一時間経った頃に作業を終えて、浮上を始めた。
「いつもは鉱石の採掘と回収を一人でやるけど、今回は手伝ってもらえて助かったの」
往路を鼻歌まじりに操縦するコニーは、機嫌良さそうに言った。
「まさか、手伝わせるために一緒に来いって言ったのか?」
ローリスは呆れ顔をしている。
「もちろんなの! 相談料なの」
スピーカーからエセルが言った。
そして、二人の店、「コニー&エセル」に戻った。
コニーは念入りに顕微鏡で二人のアクセサリーに埋め込まれたラピスラズリを見ている。
「う〜ん、やっぱり異常は無いように見えるの」
顕微鏡から目を上げたコニーは言った。
「それにこんなに小さかったら、内部亀裂が入った時点で真っ二つなの」
側から見ていたエセルが言う。
ローリスはため息を吐く。
「やれやれ、頑張って働いたのに手掛かりなしか……」
「むぅ、ちゃんとできる限り回答したの! ニコラのお兄ちゃん失礼なの!」
コニーはぷう、と頬を膨らませる。
「そんなに気になるなら、その割り込んで来てる人に直接聞いたら? 何かわかるかもよ!」
エセルも同じようにぷう、と頬を膨らませている。
「うん、そうだね。次がいつになるか分からないけど、今度は呼びかけてみようかな」
エセルは適当に言ったのだろうが、アマルティアは案外真面目にそのつもりのようだ。
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