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Story From The Lethe  作者: 鳴セ カイ響
第2章
34/79

33.淡い期待


 ニコラは作業を再開した。



「あの、ところで……」

 とローリスは切り出した。

 ダミアンが「ん?」とこちらに顔を向ける。



「聞きたいことがあるんです」

 ローリスがアマルティアに目で合図する。



「ラピスラズリに不調ってよく起きるの?」

 ここからはアマルティアが話した。



「ん、と言うと?」

「前に通話をしてて、誰かの声が混じって聞こえたの」



 ダミアンは小首を傾げて宙に視線を漂わせた。そして、ゆっくりと視線を一往復させた後、



「う〜ん、聞いたことがないな。もし、気になるなら君たちのラピスラズリの中を見てあげようか?」


 と言うので、ローリスは自分のピアス。アマルティアはラピスラズリをあしらったイヤリングを外して渡す。



 ダミアンはそれを手に乗せたまま、数分ほど集中して目を瞑っていた。

 やがて目を開く。



「うむ……」

 何かありげに呟いた。


「やっぱり何か?」

 ローリスは聞く。



 ダミアンは俯いていた思案顔をゆっくりと上げる。



「君たち、通話しすぎだよ。よっぽど仲が良いんだね」

 彼はけらけらと笑った。



「それは見なくて良いんすよ!」

「どうして? 私はローリスのことが好きだよ」



 不意にアマルティアの透き通った瞳がローリスの方を見つめた。



「えっ……」

 ローリスは思わず言葉に詰まってしまった。ダミアンも思わず開いた口を手で覆っている。



「もちろん、ニコラのことも好き!」

「あ〜……やっぱ、そういうことね……」

「あれ、どうしたの、お兄ちゃん」


 ローリスががっかりしていると、背後から、ニコラがジト目でこちらを見ていた。


「あれ、ニコラちゃん作業は!?」

 ダミアンが慌てた。



「ご心配なく。今度はちゃんと終わりました」

 すまし顔でニコラは答える。



 気を取り直して、ダミアンは二人のラピスラズリをじっくりと確認した。



「見てみたけど、やっぱり中に記憶されている魔法におかしなところはないね」

 彼はずり落ちた眼鏡をくい、と上げた。



「そう……」 

 アマルティアの表情には心のもやもやが滲み出ている。



「魔法の方じゃくて、ラピスラズリ本体に傷があったりした場合はどうですか?」


 作業台に座って、こちらを見上げているニコラが言った。



「たとえば内部に亀裂があったりして記録した魔法が上手く機能しない可能性も考えられなくはないね。ラピスラズリは繊細だから……」


 ダミアンは続ける。


「ただ、ラピスラズリの石本体に関しては、僕は専門じゃないから調べ方がわからないな。誰か他に詳しい人が、この工業区に居るとは思うけど」


「ダミアンさん、知らないですか?」

 口ぶりで無駄そうではあるものの、ニコラは聞いてみる。



「いや、生憎だけど知らないよ。特に宝石職人は無口なやつが多いから苦手なんだよねぇ……」


 ダミアンは苦い顔をした。

 アマルティアは淡い期待を込めて、ローリスの方を見る。



 しかし、ローリスも肩をすくめた。

 普段、兵士として街中を巡回しているが、担当の地域から出ることはない。それに仕事と家の往復で非番の日もあまり外出することもないので知り合いもそれほど多いわけではない。



「もしかしたら…」

 考え込んでいたニコラが口を開いた。



「詳しい人を知っているかも」


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