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Story From The Lethe  作者: 鳴セ カイ響
第1章
27/79

26.帰宅

 エリアの家から、細い小道を通って帰る。


「なんか、可哀想だったね」


 その帰り道の最中に、アマルティアは言った。


「今まであんなに反省した姿を見たことないし、これに懲りて無茶なことは止めてくれたら良いんだけどな」


 ローリスは苦笑いしながら言う。


「ところでアマルティア。あれ、何だったんだ?」


 ローリスは足を止めた。


「え……?」


 アマルティアは振り返る。


「あの、エリアの怪我を治したやつとか、水の剣? みたいのなので敵を倒したりとか……」


 普通の魔術は型があって、戦闘に魔術を用いる魔術師となれば、過去に確立された攻撃用の魔術を、確立された練習法で鍛錬し、そして習得する。

 しかし、あの水の剣での攻撃も治療術も、過去に全く見たことがない。


「わ、私にも、分からない」


 アマルティアは、身体の前で思わず握り合わせてしまった両手をもじもじとさせて、目を泳がせる。その様子から明らかに嘘だとは分かった。


 ローリスはしばらくアマルティアを見ていたが、ふっと表情を緩めるとまた歩き出した。


「ま、言いたくないなら良いけどさ」


 彼女のことはまだよく分からないが、少なくとも事実として分かることは、彼女は自分と幼馴染の命を救ってくれたと言うことだ。


 とりあえず今はそれで十分だろうとローリスは思った。

 気が付くと、街中の照明は夜間用に切り替わって、街灯に灯りが灯っていた。




 家に戻ると、円卓に顔を伏せていたニコラが立ち上がって、ローリスの胸に飛び込んだ。


「どこ行ってたの? 心配したんだから! 連絡しても応答もないし……」


 ローリスの胸に顔を埋めたまま、涙声でニコラは言った。


「あぁ、ちょっとトラブってさ」


 ローリスは、はぐらかした。

 帰って来ないだけでもこの反応なので、詳しくは話そうと思わなかった。


「ばか! お兄ちゃんのばか!」


 しかし、ニコラは生きた心地がしなかったに違いない。彼女にとって唯一の家族である、ローリスを失うことほど絶望的なことはない。

 ニコラは握りしめた拳を突き上げて、ぽかぽかとローリスの頭を殴る。油断していたが、これが結構痛い。


「悪い、謝るから……いでっ! ……止めてくれ」


 そんな騒ぎの中、二人の耳に聞こえるほどの大きな音で、アマルティアの腹の虫が鳴いた。

 ローリスとニコラは、目を点にしてアマルティアの方を見ると、彼女は恥ずかしそうな顔をする。


 二人は顔を見合わせて声をあげて笑った。


「さ、ご飯にしよ。お姉ちゃん」

「お姉ちゃん……?」


 アマルティアは聞き返す。


「うん、何だか家族が増えたみたいで嬉しいな」


 ニコラは笑顔で言うと、軽い足取りでキッチンへと向かう。

 アマルティアは、胸の奥に不思議な感覚がして口元を綻ばせる。

 ローリスはその様子を見て微笑む。


「ほら、突っ立ってないでさっさと飯にしようぜ」


 ローリスはアマルティアの肩を叩くと家の奥へと入っていく。


「今日も仕事は順調だったか?」

「うん、今日はまた三台仕上げたの」

「ニコラはどんなお仕事をしてるの?」

「乗り物に乗せるラピスラズリを生産する工場だよ。今度、お姉ちゃんも連れて行ってあげる」


 食卓での会話は賑やかだった。

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