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Story From The Lethe  作者: 鳴セ カイ響
第1章
13/79

12.プランクトス

 三人はサラヒマンダ、通称マンダに乗り、中央アクアリウムと呼ばれる場所を目指している。

 アマルティアがこの海底都市のことを知りたいと言ったからである。

 中央アクアリウムはその名の通り、海底都市セレーネの中心に位置している。

 その立地的利便性から各所で生産した商品が集まり、自然と街は様々な専門商店が連なるようになる。場所によっては露店などもあり、大通りに限らずどこも連日賑わいを見せる。


 アマルティアは窓から通り過ぎていく景色を飽きることなく眺めている。 

 ビークルの上にごつごつとした岩のような鱗を持つ魚の群れが、通り過ぎようとしている。

 ローリスは隣の座席のアマルティアに笑顔を向ける。

「あれ、昨日食べたやつだぜ。アーマーフィッシュ」

 アクアリウムの周囲ではよく見られる。


 しかし、アマルティアの視線は別の所を見ている。

「ねぇ、あれは何?」

 と前方を指を差した。

「私たちが乗ってるのと違う」


 そこには、ウリクラゲをモデルとした六角形で細長い箱型の乗り物が通り過ぎようとしていた。六面の側面は水の抵抗を小さくするために尖っている。

 六つの面の真ん中にそれぞれ真っ直ぐ線が伸びており、その線の上を小さな板状の金属のヒレが無数に並んでいる。そして、進行方向から後ろに向かってその線の上を青い光が走ると、その光になびくように無数のヒレが水を掻いて推進力を生み出す。


「あれはプランクトスだな」

 ローリスが言い終わった時には、そのプランクトスは向こうに過ぎ去っている。

「プランクトスは業務用だよ。大きな貨物スペースがあって、人や物を搬送するときによく使うんだ。あと、公共交通機関としてアクアリウム間を循環してるから、もしあんたが他のアクアリウムに一人で行きたい場合は使えるぞ」

 ローリスは丁寧に説明した。


「で、」

 とローリスは前に座るエリアに顔を向ける。

「なんで喧嘩した?」

 ゼノンとのことである。


「……大体わかってるでしょ。いつものことだし」

 エリアは答える。後方座席からエリアの顔は影になって見えないが、声で不機嫌そうな顔をしているのが目に浮かぶ。


 ローリスとニコラは幼くして親を失ってから、ゼノン、エリアの兄妹一家に引き取られ、一緒に過ごしていた。二人の両親はかつてこの海底都市セレーネの議員であった。そして、ローリスの両親もまた、その議員の一人だったらしい。


 親を失った二人を引き取って育てたのも、その時のよしみがあったからだ。

 そんな訳で、ゼノンやエリアと一つ屋根の下に暮らしていたローリスは、兄弟喧嘩が勃発すると仲裁に入るのがお決まりだった。


「別にお前が悪いとか思ってないけどさ。普通、十五過ぎて働きもせずに居たら心配するって」

 この海底都市セレーネでは、十五歳を迎えると働く年齢とされている。

 そんな中でエリアは働きもせず、この三年間、暇さえあれば街をほっつき歩いている。


「あーもぉ! あんたまでそんなこと言うわけ?」

 エリアは言ったきり、そっぽを向いて口も利いてくれなくなった。


「ねぇ、ローリス! あれは何?」

 二人の間に気まずい沈黙が流れる中、景色に夢中なアマルティアの明るい声が響く。

 おかげでローリスは救われた気がした。

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