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少女はいつも一人だった。朝も夜も、たった一人でいつも街をウロウロしていた。彼女が出没するのは繁華街の路地か、薄暗い公園や神社などの目立たない場所が多い。一度見たら忘れない格好。しかし、彼女が一体どこの家の子なのか、どのあたりに住んでいるのか、この街で知っている者は誰もいなかった。
少女は足元に落ちている小さなメモを拾い上げる。先ほどの男の子が落としていったのだろうか。何となく拾い上げて、眺めてみる。
何と書いてあるかは、分からない。
「君、どうしたの? 迷子?」
人間の男性の声。先ほどの男の子とは違う、もっと大きな個体。不自然なほどににこやかな笑顔だった。
「……お母さんがいない」
少女は顔を曇らせて男を見上げる。
「そうなんだ。僕、さっき君のお母さん見たよ」
「えっ、本当?」
「うん、お兄ちゃんが連れていってあげる。こっち」
男は少女の手を握る。少女も抵抗なく手を握り返し、男と連れ立って歩く。
「お嬢ちゃん、幾つ?」
「9歳」
「へえ……。お名前、なんて言うの?」
「セニア」
「へえ、せにあちゃん。珍しい名前だね」
他愛も無い会話をしながら歩いていくが、「お母さん」は一向に見つからない。それどころか、どんどん人気の無い場所に入っていっている。
「お母さんは?」
少女は聞くが、男は答えない。代わりに息がどんどん荒くなり、握りしめた手はどんどん力が込めらている。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「せにあちゃん、ホントに可愛いね」
その瞬間、男は少女に上から覆いかぶさった。少女は抵抗しない。怖くて体が動かないのだろうか。柔らかな髪に顔を埋めて、服の上から少女の体をまさぐる男。
「ああ、いい子だね。大きな声を出しちゃダメだよ。そうしたら無傷でお母さんのところに返してあげるから」
男は彼女の繊細な服の間から器用に手を入れ、内部をまさぐる。
「ああ、これ……しっかり膨らみかけてるね」
興奮した男は、しつこく少女の胸の先を摘み、弄んだ。触るだけでは飽き足らず、服のリボンを解き、スマホで少女のあられもない姿を撮影し始めた。
「信じられない……すげえ、これがホンモノの……」
今、誰かにこの光景を見られれば終わりなのは男も分かっていた。だが、それでも溢れ出る欲が止まらなかった。抵抗しない少女、それもかなりの上玉。9歳は男にとって「ちょうど良い年齢」だった。少女が9歳であると聞いた時は、それだけで下半身に血が集まった。
「せにあちゃん、お願い! これ握ってくれない?」
男はついに、ズボンを下ろし、少女に勃起したモノを見せる。少女はぼんやりとソレを眺める。ソレが何だか分かっていないのだろう。これはチャンスかもしれない。男は少女の手を握り、自身にあてがった。力の入っていない小さな白い手を無理やり上から握りしめて、欲望のままに反復運動させる。少女はされるがままになっているだけで特別な刺激があるわけではないが、自分のものとは違う、柔らかな皮膚の感触に悶絶する。何も知らない真っ白なキャンバスを汚している感覚。
「ああ、ヤバい……次はお口だよ。お口開けて!」
「お口?」
「そう。これを口に入れて欲しいんだ」
「お口に入れるの?」
「そう。そうしたらお母さんの居場所教えてあげる」
「本当? じゃあ分かった」
ぐちゃり。
肉が抉れる音がした。男は何が起きたのか初め分からなかったが、次の瞬間、剥き出しの下半身に激しい衝撃と熱のようなものを感じた。少女は彼のを口に含んではいない。彼の汚いモノは、一瞬にして消えた。正確に言えば、「食いちぎられた」のである。
「あ、あ、ああああ! 何を! 何を……ああ痛ア……」
少し遅れて、体中から集まっていた血液がそこからドバッと噴き出た。
「あら、もったいないわ」
少女は—いや、ソレを少女と言って良いのだろうか—両脇腹のあたりから伸びた、2本の緑色の長い触手を操り、溢れ出る男の血を受け止めた。男の血に触れた瞬間、先端のつぼみのような丸い物がパックリと割れ、ギザギザの歯のついた口が現れる。そして美味しそうに、丁寧にこぼれ落ちた血を吸い始めた。
「あああ、俺の……俺の!」
あまりの痛みに、男は股間を押さえながらのたうち回る。
「あなたが言ったからやったのよ。「口に入れて」って」
少女は男を無表情に見下ろしながら言う。
「私の「口」は、こっちなの」
言いながら、先ほどの触手の口が男の血まみれのペニスをむしゃむしゃと食べる様を少女は示す。男は痛みと恐怖で何も返事ができない。
「ば、化け物! 助けて! 誰か」
「大きな声を出しちゃ駄目よ。そうしたら、なるべく苦しまないようにしてあげるわ」
「や、やめてくれ! 殺さないで!」
「それは無理よ。ごめんなさい」
次の瞬間、少女から伸びる二つの触手が男の胴の周りに絡みつき、一気に力を込めた。バキバキと何本もの骨が砕かれる鈍い音がした。アルミ缶をプレス機でぺしゃんこにした時のように、一瞬にして小さくなって男は死んだ。最後は声も無かった。
「だってあなたは、私が食べても良い数少ない人間だもの」
少女は小さく舌なめずりした。人を殺めたにしては随分と落ち着いた様子であったが、新鮮なエサを確保した達成感からか、幾分か高揚しているように見えた。
メキメキという音を立てて、少女の体が腹の真ん中からパックリと割れる。そこには、幾重にも重なる尖った歯が並ぶ、三つ目の大きな口が。少女は器用に触手を操り、「食事」を口に運んだ。




