5：わしの縄は不思議縄
レベルアップした事でウキウキしながら歩いていると大きな物音が背後から聞こえた。
「なんじゃ！なんじゃ！？」
振り返ると大きなイノシシが木々を倒しながらこちらに向かってきている。
（この森はスライム以外も出るのか！？あのイノシシは強そうじゃ！ピンチじゃな。）
逃げるか戦うか一瞬迷ったわしじゃが、
レベルアップして調子に乗っていたわしは戦う事にした。
「いでよ！緊縛縄！！！」
縄を出現させたわしは大きな輪っかを作りカウボーイのような動作でイノシシに縄をかける。
「投げ縄イノシシ縛り！！」
しかし、イノシシは消滅せずにわしに向かって突進してくる。
（何故消滅しないのじゃ！？）
わしは焦りながら心の中で叫ぶ。そして、イノシシの突進をギリギリ横に避ける。
縄を持った状態なのでイノシシに引きずられそうになるが、イノシシが急に減速し始めた。
イノシシが減速したかと思ったら、完全に動きが止まった。
そして横たわるイノシシ。ジタバタしていたが次第に動かなくなりイノシシが消滅し石だけ残った。
（何が起こったか理解していないが、完全に助かったなぁ。
ここは危険すぎる森じゃ！！今回も死ぬかと思ったわ。）
イノシシが残した石を触ると頭の中でレベルアップのお知らせが鳴る。
［レベルがあがりました］
［レベルがあがりました］
（連続でレベルアップしたのか、という事は強敵だったのか。）
（スライムは縛った瞬間に消えたが、イノシシは縛ってから時間が経って消えた。
うーん。イノシシは強敵じゃったから消えるのに時間がかかったって事かな。
これは検証が必要じゃな。）
試しに木を縛ってみるが何も起きない。
石を縛ってみても何も起きない。
試しに自分自身の腕を縛ってみる。
「あぁ～体力が奪われてるぅ～」
すぐに縛るのをやめる。
（危ない！危ない！自縛して自爆する所じゃった。そして消滅する所じゃった。）
（これで完全に理解したぞ！緊縛すると相手の体力を奪うという事じゃな。
スライムは体力が少なかったから一瞬で消えたが、
イノシシは体力があったから時間がかかったって事じゃな。）
（前の世界で緊縛していた時も相手の体力を奪っていないか、血の巡りが止まっていないか確認して縛ってたからなぁ。それがこの世界でも反映されているという事じゃな。かしこまり！！）
自身の能力を理解したわし。その時、近くから悲鳴が聞こえた。
