26:こ、こ!?コッコくん
これはわしが実際に体験した恐ろしい話である。
コッコという名前を聞いた時からどうせニワトリじゃろ!
ニワトリの世話をするだけの簡単な依頼だと思っていたのじゃ。
しかし、依頼主がいる小屋に行くとニワトリとは似て非なる生物がいた。
大きさはひつじ程の大きさ、白いフサフサした毛に大きな羽。
大きなクチバシに鋭い目、一本の角が生えた頭。尻尾は蛇になっており敵意を剥き出しにしておった。
初めてコッコを見たわしは驚きと恐怖を隠せなかった。
隣にいるアーチ少年は泣きそうな顔をしてわしの顔を見てくる。
コッコのガァァァという鳴き声を聞く度に体をビクつかせていた。
恐怖心を抱いていたわしじゃが、
アーチ少年の怖がっている姿に可愛いと思ってしまった。
そんな事を思っているわしにさらなる恐怖が押し寄せる。
小屋の中から筋肉バキバキな肉体に赤いトサカヘアーのニトというおじさんが出てきた。
ニトという可愛い名前から可愛い少年が現れると思っていたわしの想像は一瞬にして裏切られた。もちろん、お主の髪型こそニワトリのようじゃな。と心の中でツッコミを入れた。
名前だけで人を判断してしまったわし。恐ろしや。
そのニトおじさんから指示を受けて、
コッコ小屋の掃除をするように言われたんじゃ。
それはそれは言葉に出来ない程の、モザイクが必要な程の大変な掃除じゃった。
これは冒険者に依頼を出してでもやって欲しい掃除ベストワン大賞にノミネートされるのもうなずける。
もちろん、そんな大賞は無いがそれくらい大変な掃除という事じゃ。
掃除好きそうなアーチ少年も泣きそうな顔をしながら掃除をしていた。
次にニトおじさんはコッコを小屋に戻すように指示をしてきた。
近くで見れば見るほど凶暴そうなコッコ。
ガァァァという鳴き声をあげて近づいてくる。
いっそのことわしの縄でコッコを縛ってひょいと出来れば良かったんじゃが、
万が一にでもニトおじさんのコッコを消滅させてしまったらコッコと触れ合うより恐ろしい事が待っていそうな気がしたので縛るのをやめた。
コッコがわしとアーチ少年を追いかけてくるのでそのまま小屋に逃げ込み、
コッコを小屋に戻す作戦でどうにか数十羽のコッコを小屋に戻した。
アーチ少年は悲鳴をあげながら逃げ回っていて、とても可愛いと思ってしまった。
そして、最後にニトおじさんはコッコに餌をあげるように指示をしてきた。
コッコの餌は《きっとゴブリン》と決めつけていると
大量の大きな芋虫をニトおじさんに渡された。
大きな芋虫にアーチ少年は可愛いとはしゃいでいたが、
次々と餌になる芋虫を見て完全に泣いていた。
モザイクが必須なコッコの食事風景にわしも泣いた。
わしとアーチが泣きながら全ての芋虫を生贄にして恐怖のコッコ晩餐会は無事終わった。
晩餐会が終わるとニトおじさんが来て依頼遂行書を渡してくれた。
そして、コッコの卵ももらった。コッコの大きな体と裏腹な小さな卵。
ニトおじさんが卵はとても美味しいと言っていた。
卵を初めて見たアーチは泣いていたのが嘘のように興味津々な様子で嬉しがっていた。
しかし、わしはその時気づいてしまったのじゃ。
卵を持つアーチ少年の後ろで睨みつけるコッコの顔を。
ヒャっと驚き、睨みつけるコッコの顔を見ているとその後ろから無数のコッコがガァァァ!と一斉に鳴き出した。
鳴き声に驚き振り返るアーチ少年はまた泣きそうな顔をしてわしの腕をギュッと掴む。
わしはニトおじさんにお礼を言って、すぐさま小屋から離れた。
コッコの鳴き声は小屋から離れてもしばらく聞こえ続けた。
コッコが美味しかったからコッコを実際に見てみたいと安直な考えで依頼を受けたわし。
物事には浅はかな考えで挑むと恐ろしい事が待っている場合もあると考えさせられた体験じゃった。
アーチ少年も言っていた。
「コッコはしばらく食べない。」
わしも同意見じゃった。
次の更新は8月29日16時ぞい!!




