17:異世界の車窓から
(勢い良く発車した馬車じゃったが、馬車の大きさに対して馬一頭・・・
思いの外、遅すぎる。乗り心地は悪くないが、これは歩いた方が早いのではないか。)
揺れる馬の大きな尻を見ながらそんな事を思っているわし。
「僕、馬車に乗るの初めて!楽しいね!源五郎!」
すると、アーチ少年がニコニコでこちらに話しかけてくる。
「そうじゃな!楽しいなぁ!」
(アーチ少年の笑顔を見ているとわしも楽しいぞ。)
「お二人は馬車に乗るのは初めてでしたか。馬車旅を楽しんで頂けて何よりです。」
(そうじゃった。ローレンもいたんじゃった。今すぐにでもわしの縄で縛って身動きがとれないようにしようかな。)
「お二人はどちらからグロースに向かっていた最中でしたか?」
「ステラ村っていう所だよ。」
「はて?ステラ村?初めて聞きましたなぁ。」
「小さな村だからおじさん知らないんだよ。」
「どんな目的でグロースに向かってるんですか?」
「お母さんとお父さんを探す旅をしてるんだ。」
「なんと!それはそれは。私は感激しました。お力になれる事がありましたら私を頼ってください。」
「本当?ありがとう!ローレン優しい!!」
わしを放置してアーチ少年とローレンは楽しげに会話を続けている。
放置されたわしは空と馬の尻を交互に見ながら食べ物の事を考え始めた。
(お腹空いたなぁ。大きな街だから食べ物屋さんいっぱいあるかな。)
(オーク肉美味しかったからなぁ。大きな街だともっと美味しい異世界肉がありそうじゃな。お米はあるのかなぁ。美味しい異世界肉で食べるお米も美味しそうじゃな。)
「ねぇ、ねぇ!源五郎!聞いてる!!」
アーチ少年に肩を揺さぶられ、声をかけられている事に気づくわし。
「なんじゃ!全然聞いてなかったぞ!」
「ローレンが助けてくれたお礼を僕たちにしてくれるって。」
「ローレン殿!お礼ですか!?お気持ちだけでお礼は結構ですぞ。」
「そうはいきません。命の恩人ですから。お二人が来なかったら今頃、ゴブリンにやられて・・・。想像するだけで恐ろしい。」
「かしこまりぞ。それではお言葉に甘えてお礼を受け取る事としましょうぞ!」
「わーい!お礼何かな?」
(ワクワク目を輝かせているアーチ少年。まるで子供のようじゃ!)
「それではグロースに到着して3時間ほど経ちましたら私の館までお越し下さい。
街の奥にある大きな館で私の銅像が目印です。すぐに分かるかと思います。」
(自分の銅像があるのか!?ローレンは色々な意味ですごいなぁ。)
「かしこまりぞい。時間になりましたら伺いますぞ!」
こうしてローレンのお礼を受け取る事となった源五郎一行。街まではまだまだ先・・・。