161:黒
「確認したいんじゃが、魔王が黒魔法を使えると知った人はどうやって死んだんじゃ?」
魔王に命を狙われることになったわしはラージャとマウリに質問した。
「それはっすね・・・。」
「マウリ話したくないならいいぞ。俺も出来れば話したくない話だからな。」
マウリとラージャはわしの質問に難色を示した。
「答えづらいことを聞いて申し訳ないなぁ。答えなくても大丈夫じゃ。なんとかなるじゃろ。それにアーチの記憶喪失の原因が魔王じゃったら魔王のところに行かないとならないじゃろ。殺される前になんとかするぞ。」
「源五郎さん・・・。」
「先輩いいんじゃないっすか?話しても。」
「・・・。そうだな。それでは死の要因だけ伝えよう。死の要因は心臓発作だ。しかも全員、死ぬ前に黒いコートの男が見ている。」
「なんじゃ!それは黒いコートの男が見えるのか!?」
「あぁ。そうみたいだな。」
「ちなみにラージャもマウリも魔王が黒魔法を使えることを知っておるが何故無事なんじゃ?」
「俺とマウリも黒いコートの男を見たが、黒いコートの男はこう言ったのだ。黒魔法を使えることを知っているやつは全員殺そうかと思ったが、お前たちは生かしてやると。そして黒いコートの男は消えたのだ。」
「黒いコートの男は相当やばい男なんじゃないのか?黒魔法を使えることを知っているやつを殺そうとしているということはそいつが魔王なんじゃな。」
「魔王を見たことが無いですが、黒魔法を使えることを知っただけで殺そうとしてくるということは魔王に違いないと思います。どういう意図があるのか不明だが俺とマウリは助かりました。」
「そうっす。先輩と自分は助かったっす。」
(魔王といえば黒魔法を使いそうなのは常識っぽいが・・・。それを知っただけでそうなるとは。わしも黒いコートの男を見るということじゃな。そいつが現れて魔王ならそいつを縛ってアーチの記憶喪失のことを聞けばいいか。そうじゃな。そう考えたら早く黒いコートの男に来て欲しいな。)
「黒いコートの男が現れたら縛るので大丈夫じゃ。」
わしが笑顔で発言した事に対してマウリがこう言った。
「源五郎さん。それは無理かもっす。死んでいった人たちもかなりの凄腕だったんっす。」
「そうなのか。わしなら大丈夫じゃよ。そういえばラージャとマウリは魔王が黒魔法を使えることを知ったんじゃ?」
「それは秘密裏に魔王を倒すべく行動していたからだ。」
「そうっす。魔王の部下を倒したときにその部下が魔王は黒魔法が使えると言ったのを聞いてこんなことになったっす。」
「そうじゃったのか。」
(わしはマウリから黒魔法が使えるのが魔王と聞いたがなぁ。まぁ、わしは知りたかったし良かったんじゃが。)
「あとひとつマウリに確認じゃが、いつアーチが忘却魔法を使われたんじゃろ?」
「忘却魔法も呪いと同じように色々手段があって接触して魔法を使用するか忘却魔法の効果を宿した物を身につけるとかっすね。」
「そうなんじゃな。マウリは詳しいなぁ。ということは記憶喪失の原因の魔王と遭遇していない可能性もあるのか。物を身につけると言ったら・・・ゴンゾウからもらった指輪か!?」
「源五郎さんも身につけているアーチさんとお揃いの指輪っすか?」
「そうじゃ。これじゃ。これに忘却魔法の効果がかかっているかマウリは分かるか?」
「自分も先輩も鑑定は使えないので分かんないっすね。でもあのゴンゾウなら可能性はあるっすね。」
「マウリ。確かゴンゾウは黒魔法は使えないんじゃないのか?」
「先輩、そうっすね。なので黒魔法が使える人間か魔王と繋がっている可能性もあるっすね。源五郎さん。一応その指輪外しておいた方がいいんじゃないっすか?」
「でも、これはアーチとお揃いじゃし。記憶の無くなったアーチとの唯一の繋がりというか。なんというか・・・。」
「そんなことを言ってる場合じゃないっすよ。もし忘却魔法だけじゃなく、他の効果もあったら大変っすよ。」
「マウリの言う通りだ。」
「・・・分かったぞ。指輪を外すとしよう。アーチは指輪を外すと記憶が元に戻るのか?」
「指輪を外したら忘却魔法の効果が薄れてくるのですぐに記憶が戻ると思うっす。」
「そうか・・・。」
わしはゴンゾウからもらった指輪を外した。外した指輪はマウリが保管することになった。
「ラージャの父上はいつ呪いにかかったんじゃろ。」
「呪いは遠隔でも出来るんで。正直分かんないっすね。」
「そうなんじゃな。」
(あとはアーチに指輪を外すように言って、解決じゃな!!良かった。良かった。・・・って指輪じゃなく接触で黒魔法が使われている場合は全然解決じゃなかった・・・。記憶がすぐに戻らない場合は魔王と会って何とかしないとなぁ。でも、魔王が黒魔法が使えることが分かってるから待っていれば来るじゃろ。とりあえずアーチの所に行くとしよう。)