145:さようなら
わし達はエルフの塔の螺旋階段を降りて地上に戻ってきた。エルフの塔の出入り口にはエルフ王キノがいた。
(うわっ、キノがおる。ずっと待ってたのかな。)
「あっ、アーチくん!源五郎くん!そろそろ降りて来る頃だと思ってさっき来たんだよ。僕の可愛い子が教えてくれたんだよ。って、あれ?アーチくんと源五郎くんのお友達は?」
「色々話し合って2人は異空間に残るという事になったんじゃ。」
「そうなんだね。確かに塔の中にも人の気配は無いね。せっかく助ける為に来たのに残念だねー。」
「無事を確認出来ただけでも良かったですぞい。わし達はオロッパの街に戻って無事だった事を知り合いに報告しに行きますぞ。善は急げと言うからなぁ。」
「えっ、アーチくんも源五郎くんもまだエルフの国に居ていいんだよ。まだ2人が食べていないお菓子もジュースもいっぱいあるのに。」
「お菓子もジュースも気になるけど、心配しておると思うから早く戻った方がいいと思うんじゃ。アーチもそう思うじゃろ。」
「うん。お菓子とジュースは気になるけど・・・。」
(アーチはエルフの国のお菓子とジュースが完全に気に入った様じゃな。いっぱいおかわりしていたからなぁ。)
「そっかぁ。悲しいなぁ。じゃあ2人はまたエルフの国に来ていいから、その時にお菓子とジュースをいっぱい食べてね。」
「やったぁー!また来るよ!キノ!!」
「そうじゃな。また来ますぞ。エルフの国は結界で覆われていて普段は認識出来ない状態なんじゃろ?」
「そ、そうだった。2人が近くに来たら分かるようにしておくから、そしたら迎えに行くね。」
「助かりますぞ。嬉しいなぁアーチ!」
「うん!今度はヴァルゴとマールも連れて来ていい?」
「もちろんだよ。アーチくんと源五郎くんのお友達ならウェルカムだよ。」
(マールはいいとして、ヴァルゴは大変な事になりそうな気が・・・。いきなり処刑とかならなければいいけど。まぁキノが良いって言うから大丈夫か。)
「それじゃあキノまたね!!」
「本当にありがとう。2人が来なかったら世界樹が大変な事になっていたからね。2人はエルフの国の恩人だよ。」
「それじゃあキノまた会いましょうぞい。」
「絶対にまた来てね。お菓子もジュースもたくさん用意しておくね。」
わし達は悲しげな顔をしながら手をふるキノを前にオロッパまでの転移石を使用した。
そして、わし達は一瞬でオロッパの街まで転移したが、オロッパの街を見たわしは自身の目を疑った。
「何じゃこりゃ。」
1日ぶりのオロッパの街は変わり果てた姿になっていた。大きく響く警報音。外部からの攻撃を完全に防ぐ強固な作りの大きな壁は朽ちていた。そして、低層のビルが立ち並んでいた街の中は建物が崩壊していた。
「源五郎・・・ここってオロッパだよね?」
「オロッパの転移石を使用したからオロッパじゃと思うのだが・・・。」
「ゴンゾウは、ラージャは無事かな。」
「とりあえず中に入って探すとしましょうぞ。」
その時だった。上空から高笑いと共に黒いフリフリの服に黒い翼が生えた姿、ピンクのツインテールに大きな2つの角が生えた人物が降りてきた。
「ひゃはははは!遅かったね!源五郎にアーチ!!あれヴァルゴとマールは?いないって事は死んでたみたいだね。ひゃはははは!!」
「お主、ゴンゾウか?」
「そうだよ!僕はゴンゾウだよ!!見て見て!この街の姿!僕がしたんだよ!!凄いでしょ!!自分自身を開放するって気持ち良いね。生きてるって感じがする!」
「オロッパの街をゴンゾウが破壊したのか?」
「だからそうだって言ってるじゃん。そんな事する訳ないって思ってるよね。2人が考えている事は僕には丸見えだよ。」
「ゴンゾウはそんな事する訳ない!ゴンゾウはどこ!?」
アーチが怒りながら叫んだ。
「だから僕がゴンゾウだって。まぁ、ゴンゾウじゃなくフェリスゾーラって名前なんだけど!そもそもゴンゾウって名前おかしくない?こんな可愛い僕にゴンゾウって!なんかイライラしてきた!ついでだから君たちも殺しちゃうね!!」
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同時刻、異空間にて一人叫ぶ男がいた。
「やべぇぜぇ!!!まじでやべぇぇぇぜぇぇぇ!!なんでだよぉ!急がねぇとぉぉぉ!!!」
その男は暗い異空間で明かりに照らされた手紙を見て叫んでいた。
「叫んで。どうしたんですか?」
「これをよぉぉ!!見てくれよな!!!」
『この手紙が届いたって事は2人は無事だって事だね。良かった。
僕はもうだめそうです。何度も頑張ったけどだめでした。ごめんなさい。
PS。最初、変なやつって思ったけど僕に優しくしてくれてありがとう。ゴンゾウっていう名前をつけてくれて嬉しかった。みんなにもよろしくね。』
「大変じゃないですか。今すぐゴンゾウさんを助けに行かないと。」
「そうだろぉぉ!!今よぉぉ!行かねぇぇぇとよぉぉ!!ゴンゾウがよぉぉ!!」
「あんた達、落ち着きなさい。今、行っても間に合わないわよぉ。それにあんた達が行っても逆に大変な事になるかもしれないじゃない。源五郎ちゃんとアーチちゃん、聖獣もいるんでしょ。どうにかなるわよぉ。信じるしかないわよぉ。こっちはこっちでやる事があるから急ぎましょ。」
異空間の暗闇の中で3人の男達がゴンゾウの手紙を見て会話を繰り広げていた。