134:お菓子とジュース
わし達は空を飛び、エルフ王のキノと一緒にエルフの城に到着した。
エルフの城は大樹の根本にあった。白色を基調とした自然と調和した古城でスタイリッシュな造りの大きな城。入り口にはレッドカーペットが敷かれていたが、わし達はエルフ王の部屋の窓から城に入った。
「ど、どうだった?お空を飛んでみて?」
「すごかった!楽しかった!!」
「確かにすごかったぞ!どういう原理で飛んだんじゃ?」
「それはまだ秘密だよ。それより僕と一緒にお菓子とジュースを楽しもう。」
「やったぁー!」
(アーチはお菓子とジュースに夢中じゃな。エルフ王を信じて大丈夫なんじゃろうか。お菓子とジュースに変なものが入っていたら大変じゃ。)
「お待たせ致しました。エルフの国でしか味わえないゴッドハニーで出来たお菓子とジュースです。」
見た目が10代の黒髪少年エルフがお菓子とジュースを持ってきた。
「隊長くんはお仕事が早いねー。ぼ、僕嬉しいなぁ。」
エルフ王のキノはニコニコしながら黒髪少年エルフに声をかけた。
(隊長という事はさっき、わし達を捕まえようとしていたやつかぁ。こんな見た目じゃったのか。)
「じゃあお菓子とジュースを一緒に食べながら僕とお話しよう。」
「ありがとうございますぞ!こんなにおもてなしをしてもらって悪いなぁ。しかもこんなに美味しそうなお菓子とジュースもいただいて・・・。」
「いいんだよー。だってこんなに可愛い男の子たちだからーいいんだよー。早く食べてー。」
エルフ王キノがそう言うとわし達を凝視し始めた。
(やはり怪しい気もするが・・・。)
「本当に美味しそうだねぇー。いただきます!!」
「あっ・・・。」
わしが考え事をしているうちにアーチがお菓子を食べた。
「う、う、うまーい!!」
「でしょ。でしょ。美味しいでしょ。」
わし達を凝視していたエルフ王キノが嬉しそうに言った。
(まるで孫が来た時にとっておきのお菓子を孫に食べさせ、喜んでいる爺さんのようじゃ。これなら食べても大丈夫そうじゃな。それではお菓子から食べるとしよう。サクサクな生地の中に濃厚で美味しい蜂蜜。他で例えようが無いとても美味しいお菓子じゃ!ジュースは・・・フルーティーで上品な甘さ!これも美味しい!!)
「源五郎!美味しいねー!!」
「そうじゃな!!」
「2人とも喜んでくれてありがとう!君たちはエルフの国に用事があったって言ってたけど、どういう用事かな?」
わしとアーチでエルフの国に行く事になった流れを説明した。
「ほーらね。やっぱり君たちが犯人じゃないねー。それにしてもそのお友達達も大変だねー。あと、北の塔に入るには色々手続きが必要だからすぐには入れないんだよ。」
「どれくらいで手続きが完了するんじゃ?」
「明日には完了すると思うよ。だからお城に一泊して楽しい夜を過ごそうね。」
「それは助かりますなぁ。」
「うん!!」
「お楽しみのところ失礼します。結界が壊れた隙に侵入者の人間が3名を捕らえました。」
「せっかくアーチくんと源五郎くんとお話してたのに・・・。隊長くん、その人間の性別と年齢は?」
「3名とも男性。年齢はおそらく30代。野盗のような姿です。」
「それじゃあ処刑。」
「かしこまりました。」
(え、え、何このやり取りは・・・。捕らえられた人の話も聞かず処刑しおった。)
「ぼ、僕、美しいエルフの国に野蛮な人間が入るなんて許せないよね。君たちは可愛いから大丈夫だよー。」
(これがライオが注意するように言っていた事なんじゃないか。エルフって血の気が多い危険な存在なんじゃ・・・。ラージャとマウリを連れて来ていたら全面戦争になっていたんじゃないか。というかヴァルゴを助けて大丈夫なんじゃろうか。ヴァルゴを助けた瞬間、全面戦争になる未来しか見えない・・・。)
わしがそう思っているとアーチがわしの手をギュッと握ってきた。
(アーチは怖がっているのか。確かにこの状況は怖いからなぁ。)
「そういえばなんで結界が壊れたんじゃ?」
「ぼ、僕もねぇー分からないんだよー。結界が壊れたせいで世界樹が見えるようになって野蛮な人間がエルフの国に入ってきたら嫌だから、僕の可愛い子達に調べてもらってるよ。」
「そうなんじゃな。」
「で、でも。結界が壊れたお陰でアーチくんと源五郎くんと出会えて僕、嬉しいなぁ。これも天に愛されているお陰かなぁ。」
(アーチが怖がって一言も話さなくなったなぁ。楽しい話題に変えないとなぁ。)
「美しいエルフの国は他にも美味しい食べ物があるんじゃろ?」
「よーく分かったね!他にもいっぱい美味しい食べ物があるからディナーに一緒に食べようね。」
(食べ物の話をしておけばアーチも元気になるじゃろ。)
「お楽しみのところ度々申し訳ございません。緊急事態です。モンスターの群れがエルフの国を目指してやってきています。」
「ぼ、僕の美しいエルフの国に・・・。そ、それは許せないね。アーチくんと源五郎くんと楽しい時間を過ごしたいし、ぼ、僕が一瞬で終わらせるよ。僕のカッコイイところを君たちも見ててね。」
(なんかとんでもない時にエルフの国に来てしまったんじゃが。)