本当にあった婚約破棄エッセイ
こんばんは。
なろうに来て半年になりました一布です。
ハーフバースデーおめでとう。
なんかエッセイが流行ってるって話も聞きますし、記念日だし、一布の過去の婚約破棄話を投稿しようかなー、なんて思ってキーボード叩いてます。
なお、当時法律知識もなく、なおかつ実際にあったことをそのまま書くので、YouTube等である慰謝料請求等はありません。興信所にも依頼してません。
でも、一布的には面白おかしく、かつ、自分の性癖の新たな扉を開けた出来事でもあります。
ではでは。
その当時、一布は、会社で転勤の話を出されました。都心部への転勤。三ヶ月ほど借り上げ社宅に入って仕事に慣れた後に、自分で部屋を借りてそこに住むように、と打診されました。
そのときの彼女とは、付き合って一年半。まあ、事情が事情だし、いい機会だから結婚するか。そんな話をしたら、あっさりとOKでした。
仕事の合間を縫って両家の挨拶を済ませ、式を挙げるかはおいおい考えるとしてウェディングフォトだけでも、なんて話もし。
その間にも、職場では転勤の準備等をし。
現地に発ったのは、年明けすぐの一月六日でした。
あ、このエッセイをお読みのみなさん。この日付、実は重要ですから。赤線引いておいて下さい。一月六日ですよ。
転勤先に旅立ち、社宅で届いた荷物を解き、そこに暮らす準備をしていました。
当時の職場は、二十四時間体制。午前九時から午後九時と、午後九時から午前九時の交代制だったんです。あ、ビル管理なんですけどね。当時は若かったとはいえ、結構キツかった。なんてったって、夜勤のときは夜通し仕事に入るわけですから。
それでもなんとか仕事に慣れ、二月になり、三月になり、四月になって。
社宅を出て暮らす家を探し始めました。
もちろんこの間、彼女には会っていません。これからの結婚生活を考えながら、とにかく彼女が来たときに苦労させないように、残業なども積極的に引き受けて金を稼いでいました。
ちなみに、十二時間拘束の後、ひとり欠員が出た分だけ穴埋めのために仕事を入れたことがあります。夜勤の後の日勤で、合計二十四時間拘束です。
労働基準法なんてなんのその。そんな言語が通じる会社じゃありませんでした。
とはいえ、彼女との連絡を欠かしたことはありません。仕事前、仕事終わり、就寝前。日課のように連絡を取っていました。
もっとも、三ヶ月も離れていると、気持ちは落ち着いてくるんですけどね。彼女への気持ちが「冷める」ではなく、「落ち着く」といった感覚。それでも、大切だったことに変わりはないんですが。
そんな、ある日。
彼女へ連絡したときでした。
言われたんです。
「生理、来てないんだ」
このエッセイのタイトルから結末は想像がつくでしょうが、それはちょっと置いておいて。
一布は普通に「そっか。子供ができたんだな」と思っていました。
転勤前のベッドでの運動会でコウノトリを呼び寄せたんだな、と。
はっきり言って、結婚が決まってから避妊もしてませんでしたし。
一瞬ね、テンションが凄い上がりましたよ。俺もパパかよ、って。
息子だったら、一緒に何かスポーツしようかな。
娘だったら、将来彼氏を連れて来たときに、とりあえず彼氏に左フックかな。
そんな、パパになった自分を思い浮かべましたよ。
でね、妊娠話をされて気になるのは、今が何ヶ月か、じゃないですか。
んで、妊娠期間の計算って、最後の生理が終わった日から計算するんですよ。
なので、彼女に聞きました。
「最後に生理きたの、いつ?」
「二月の最初頃」
……。
…………。
………………。
……………………。
はい、ここで思い出してみて下さい。
一布が転勤先に来たのはいつでしょう?
正解は、一月六日ですね。さきほどの赤線が役に立ちましたね。
もちろん転勤してから家を探し始める四月まで、一度も帰省なんてしてません。そんな暇ありませんでした。
さて。
どうやって一布は、彼女と子供を作ったのだろう。
その1。どこ〇もドアで帰省した。
その2.タンポポみたいに種を飛ばした。
その3。時空の扉を開いてアレとアレを……。
うん、無茶言うな。
何か悲しいかって、彼女は、一布がいつ転勤先に行ったのかも覚えてないんです。覚えていたら、こんなアホなこと言いませんからね。少なくとも、最後の生理が二月の最初頃なんて言わないでしょうからね。
今となれば、アホでよかった。
とりあえず、色々とカマを掛けました。
「ああ、じゃあ、あの時かな。ほら、ホテル行っただろ?」
彼女は実家暮らしでした。
ので、浮気するとしたら、浮気相手の家かホテルです。
で、浮気相手の家に行ったのだったら、その時期に一布と子作りしたなんて思うはずがない。
案の定でした。ホテルでカラオケしたことを話してました。浮気相手と一発運動した後にカラオケしたんでしょうね。それを、一布としたと勘違いしているんでしょうね。
もうこの時点で、彼女の心における、一布と浮気相手の比重が理解できます。一緒にホテルに行ってアレやコレしたのが、どっちとだったか。それをはっきりと覚えていないんです。
つまり、彼女にとって、浮気相手と一布の比重は概ね五分五分。きっと、アッチの方も五分五分だったんでしょうね。
それどころか、どっちと行ったか区別つかないくらいだから、一布と浮気相手はもの凄く似てるのかも。今となっては真相は分かりませんが。
もしかして、生き別れの兄弟だったりして。
まあ、別の意味では兄弟なんですけど。
それはさておき。
そんなふうにカマを掛け、色々と喋らせた後に、一布が転勤した日を教えました。一月六日だ、と。最後の生理が二月初旬で、どうやって一布と子供を作るんだ、と。
追い詰められた彼女は「あれ? あれ?」とか言いながら、泣き始めました。
さらに問い詰めると、泣きながら浮気を告白しました。
ところで一布は、決して寝取られ性癖の持ち主ではありません。もちろん、この時点で、彼女とは別れ一択です。
ただ、ね。「ごめんなさい」だの「許して」だの「離れてて不安だったの」言いながら泣く彼女の声を聞いて、妙に興奮してしまいまして。
ちょっと気付いてしまったのです。
追い詰めて泣かせるのって、楽しい、と。
新しい扉を開いた瞬間でした。
夜勤明けにも関わらずテンションマックスで、やり直しを臭わせながら浮気相手とどんな風にヤッたかを暴露させ、その内容をメールで送らせ、自白証拠を残しつつ、最後に「やっぱ無理」と告げました。
彼女は、電話の向こうで大泣きしました。
一布は、ケータイを耳元にゾクゾクしていました。
ゾクゾクしながら、つい、コメディめいたことも口走りました。
「俺が夜通し仕事に入ってるときに、お前は、夜通し別の男のチンチ〇入れてたわけだ」
彼女は、電話の向こうでさらに大泣きです。こんなギャグめいた言葉でも大泣きです。
一布もさらにゾクゾクしてました。
そんなわけで彼女とは別れたわけですが。
その転勤先の現場は、一年程度で他の管理会社が管理業務を入札しまして。つまり、一布の転勤先業務がなくなったんですね。
結局、地元に帰ってくることとなりました。
すると、あらビックリ。
どこから一布が帰ってきたことを知ったのか、元婚約者が連絡してくるようになりまして。
「地元にいるなら、もう寂しくなることはない」
「もう一回、結婚の話を進めよう」
なんて寝言を言い出した挙げ句、一布が断ると、こんなことまで言う始末でした。
「その程度の気持ちだったんだ」
いや、お前が言うなよ。
一布がいつ地元を発ったかも分からない程度の気持ちだったんだろうが、お前は。
まあ、断り続けたら、見事にストーカー化しまして。
最終的には、一布の実家の家電にまで連絡したり、一布のオカンにまでメールをしてきまして。
さすがに苛立って、電話で言っちゃいました。
「もうさ、二度と会いたくないし、話したくないし、顔も見たくないし、とにかく関わりたくないんだわ」
本心です。泣き喚く声にはゾクゾクしましたが、それだけのためにヨリを戻すつもりなど毛頭ありません。
「だからさ、いっそ俺と絶対に関わらないところに行ってくれないかな。ブラジルとかさ」
ここで「あの世に行け」とか言わないあたり、我ながら優しいなぁ、なんて思います。地球の裏側とはいえ、日系人がそれなりに多く、カーニバルまである国ですからね。
でも、元婚約者は、そんな一布の優しさにも気付かずに泣いてました。電話の向こうで号泣です。
元婚約者の泣き声を聞きながら、一布は「超キモチイイ」なんて気分になっていました。
この元婚約者の話は、今では一布の鉄板自虐ネタとなっています。酒の席では九割以上の確率で披露しています。
で、この鉄板ネタを披露すると、ごくたまーに言われるのです。
「その彼女のこと、好きじゃなかったんじゃないの?」と。
あまりに面白おかしく別れた話をするからでしょうね。
でも、そんなことはありません。
好きでしたよ?
ただ、ね。
転勤で、三ヶ月も会わない時間があると、冷静になれるのです。
元婚約者が自分にとって大切にすべき存在か、冷静に判断できたのです。離れていた時間のお陰です。
なので、もし。
もしも、これを読んでいる貴方が、恋人や婚約者、配偶者の浮気で悩んで、苦しくて仕方がないのに「好きだから離れられない」なんて思っているのなら。
三ヶ月ほど、会わない時間を作ってみましょう。
会わない時間が自分を冷静にさせ、相手の不誠実さを実感できるんじゃないかと思います。「好き」という気持ちに邪魔されることなく。
近過ぎて見えないものが、離れてみるとよく見えることがあるのです。
冷静になって、浮気している相手の不誠実さが見えて。
それでも、一緒にいられるか。
縋ってでも関係を続けるべきか、別れるべきか。
自分にとって、より正しい答えが導き出せるんじゃないかなー。
そんなふうに、恋愛黒星先行の一布は思うのです。
おしまい。
ちなみに、この元婚約者。
別れてから約七年後に、なぜかFacebookで一布に友達申請してきました。
色々しつこい。