表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/403

月塊、琴箭に貢ぎ物にされること②


「はァ? 冗談じゃないぞ! なんだって俺が······」


 突然声を荒らげた妖は、無意識に立ち上がろうとしたか、縛めに足をとられてそのままゴロリと床に転がった。

「──いいか、俺はソイツを狩りにきたんだ!」


 足元で無様でもがく妖に、琴箭はあきれ声で応じる。

「あのねぇ、いまさらそんな嘘がとおると思っるんですか? 妖なんて珍しい存在(もの)、そんなにいるわけないじゃない。だいたいなんです、狩るって。仲間同士傷つけあうの? なんのために」

「きまってんだろ」地面に腹ばいになりながらも、誇らしげにまっすぐ顔をあげてその妖はいい放った。


「仙人になるためだ。俺は悪事をやらかす妖を退治して、昇仙するんだ!」


 ··········


 遠くで牛の間伸びした声がきこえる。これだけ分厚い壁に閉ざされたところに、よくまあひびいてくるものだ。

······ああ、そっか、明り窓からはいってくるんだ。



「はっ」



 どこかへ散歩にいきかけた精神を、琴箭はあわてて呼び戻した。

 それじゃなに······人違い、いや、妖ちがいだったっての? そんなことってある?


「······おい、こいつは···」

「······あ、ああ」

少年たちもうっすらと、事情をのみこみはじめている。

 マズイ。


「あー、ちょっと御免なさぁい。みなさん、すこしだけ出ててくません? 私とこのヒト、ふたりにして?」

「えっ? いや、それは危ないだろ?」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。みてくださいよ。こんなのにどうこうされっこないです」

 琴箭は強引に、少年たちの背中をぐいぐい押しながら、全員そとへと追い出してしまった。



「ちょっとぉ、なに言ってくれてんの? アンタが犯人じゃないと、私が困るのよ!」

 ふたりきりになった途端、コロリといいコの仮面を脱ぎ捨てた琴箭に、妖はあきれ顔で鼻をならした。

「ふん、知るか。俺はなにひとつ嘘はいってない」

 しばらくじーっとその妖を凝視してから、琴箭ははぁ、と溜め息をついて俵の山にもたれかかった。

「······えー、なにー? これじゃ、私の作戦が台無しじゃん···」

 だが、この琴箭。生来頭の回転がとにかくはやい。このときも、瞬く間に第二案をひっぱり出してしまった。


 そうよ、まだ。冴えてる。えらいぞ私。


 くるりと振り返ると、琴箭はにこにこしながら、妖へと歩みよった。

「······ところでさぁ。貴方、名前は?」

「······月。(あざな)は塊」

「──んと、月塊ね。ちょっとさぁ、相談があるんだけどね?」

怪訝そうな面をうかべる月塊に、琴箭はかがみこんで顔をよせた。



誤字を修正しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ