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【完結】月琴伝  作者: 雲野 蜻蛉
太平要術論
63/403

月塊、太賢良師より果実弾を喰らうこと②


 何事だろう。手にもっていた分を籠におさめると、琴箭はそれをしょって駆け出した。



 庵のまえ、広々とひらけたところに畑などこしらえたあたりまで出て、彼女は思わずうれしい声を上げた。


「月塊!」


 庵の質朴な門の外に太賢良師と小賢がたっているが、その向こうから歩いてくるのは、間違いなく、彼女の専属衛士の姿だ。

 琴箭はふたたび籠をごとごとゆらして駆け、彼の前へと出る。


「よくここがわかったわね。ずいぶん探したんじゃない?」

「······琴箭〜っ、てめぇ············」


 ジロリと睨まれて、琴箭はたじっとなった。

 久しぶりに見る気がする月塊は、ボサボサになった髪から木の枝がとび出ていたり、あちこちと汚れたりで、なんだかだいぶんに風采(ふうさい)が落ち込んでしまっていた。


「あ〜······御免っ! ついうっかりしてて。ほんとになんかもう······あちこち汚れちゃって。あれっ、そのお尻どうしたの? 衣が破けちゃってない?」

「じゃかましい! ちょっとそこどけ!」


 月塊は乱暴に琴箭の肩をおしやってのけると、袖に腕をつっこんで見物していた太賢良師へと怒り顔をむけた。


「やいやい、このかっ(さら)い野郎! 仙人のくせにガキをくすねるとはどういう了見してやがるんだ、ああッ? きっちり説明してもらおうじゃねえか!」


 まず理路整然と説明しても入っていかぬだろう額に、はっきり青筋をたてている。誰ぞに八つ当たりしなければおさまらぬといったあたりに、味わった相当な労苦が察せられる。なんかもう、本当にごめんなさいだ。

 だが相対する太賢良師のほうは、そんなことは知らぬとばかり、大欠伸をしていった。

「ワシは方士だ。まあいい。よくここまで自力で来たもんだ。この童の朋らしいな、歓迎するぞ」

「······歓迎? ほぉーっ、歓迎ねえ······」


 月塊は顔をひきつらせながら、右肩を、具合を確かめるようにぐるぐると回した。

「じゃあ遠慮なく馳走になろうかい。ところで俺は、食い物より好きなモンがあってなぁ」

「ほぅ。それは何だ」

「それは······反省もしねぇ方士の平伏を拝むことだ!」

 言うか早いか、いっさんに打ってかかる。

「ちょっと月塊っ!」





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