月塊、太賢良師より果実弾を喰らうこと②
何事だろう。手にもっていた分を籠におさめると、琴箭はそれをしょって駆け出した。
庵のまえ、広々とひらけたところに畑などこしらえたあたりまで出て、彼女は思わずうれしい声を上げた。
「月塊!」
庵の質朴な門の外に太賢良師と小賢がたっているが、その向こうから歩いてくるのは、間違いなく、彼女の専属衛士の姿だ。
琴箭はふたたび籠をごとごとゆらして駆け、彼の前へと出る。
「よくここがわかったわね。ずいぶん探したんじゃない?」
「······琴箭〜っ、てめぇ············」
ジロリと睨まれて、琴箭はたじっとなった。
久しぶりに見る気がする月塊は、ボサボサになった髪から木の枝がとび出ていたり、あちこちと汚れたりで、なんだかだいぶんに風采が落ち込んでしまっていた。
「あ〜······御免っ! ついうっかりしてて。ほんとになんかもう······あちこち汚れちゃって。あれっ、そのお尻どうしたの? 衣が破けちゃってない?」
「じゃかましい! ちょっとそこどけ!」
月塊は乱暴に琴箭の肩をおしやってのけると、袖に腕をつっこんで見物していた太賢良師へと怒り顔をむけた。
「やいやい、このかっ攫い野郎! 仙人のくせにガキをくすねるとはどういう了見してやがるんだ、ああッ? きっちり説明してもらおうじゃねえか!」
まず理路整然と説明しても入っていかぬだろう額に、はっきり青筋をたてている。誰ぞに八つ当たりしなければおさまらぬといったあたりに、味わった相当な労苦が察せられる。なんかもう、本当にごめんなさいだ。
だが相対する太賢良師のほうは、そんなことは知らぬとばかり、大欠伸をしていった。
「ワシは方士だ。まあいい。よくここまで自力で来たもんだ。この童の朋らしいな、歓迎するぞ」
「······歓迎? ほぉーっ、歓迎ねえ······」
月塊は顔をひきつらせながら、右肩を、具合を確かめるようにぐるぐると回した。
「じゃあ遠慮なく馳走になろうかい。ところで俺は、食い物より好きなモンがあってなぁ」
「ほぅ。それは何だ」
「それは······反省もしねぇ方士の平伏を拝むことだ!」
言うか早いか、いっさんに打ってかかる。
「ちょっと月塊っ!」
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