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月塊、琴箭に貢ぎ物にされること


 一夜があけた。


 取り調べは、里共有の物置小屋のなかでおこなわれることになった。

 琴箭がまるで、朝議にのぞむ県令さまのごとく、薪の山に明り窓を背にして腰をかける。

 その左右を、琴箭よりは歳上の、十四、五歳の少年たち数人がかためていた。みな、少々引け気味の腰をなんとか虚勢でとりつくろっていた。

 それも当然。妖が昨夜のように地力をふるえば、こんな小屋、あっけなく崩れさてしまうだろう。いくら里内でいちばん堅固な建物だといったところで、気休めにもなるまい。

 その正面、お情けであたえられた(むしろ)のうえに、太縄でぐるぐる巻きにされた妖が座らされた。

 あぐらをかいた両足首をからめる縄が、後ろ手にされた手首から首へととおり、とにかく力が入らないようにされている。さらに、首からは里人の誰かがもらってきた、大賢良師さまの「ありがたい」木札がかけられていた。



 琴箭は、得意気に大上段から指をつきつけて第一声を発した。

「わかってるとは思うけど、貴方はもう動けないわ。伝説にあるようにカタチを変えられれば別だけど、そんなふうでもないし。貴方が人の身体を模してる以上、要所を抑えちゃえば、動けなくするなんて簡単なんです」

「······偉そうに。チビっ子め」


 ふてぶてしい態度をまったく崩さない妖に、とりまきの少年たちが口から泡をとばさんばかりにまくしたてる。

「何いってんだ、このお嬢はすごいんだ! そこいらの大人なんかよりずっと賢いぜ!」

「この歳で五経はおろか、兵書なんかもそらんじれるほどに読み込んでるんだからな!」

「······なんでお前らが、こんな昼日中にこうしてるのか、わかる気がするよ」

 おほん、と場をあらためるように、琴箭はひとつ咳をした。


「貴方がこの里にきた目的はもうわかっています。観念して白状するのね」

 妖は顔をあげる。

「ずばり、私達を襲って石にしちゃおうって魂胆ですね!」

その眼が、おおきく見開かれた。


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