表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】月琴伝  作者: 雲野 蜻蛉
殷秋史
38/403

麟解かれ、朱硯、あがなうこと②


「麒麟! もう一体いやがったのか!」

 あわてて構えをとる月塊に、その麒麟は、かぶりを横にふった。争う気はない、そういいたいらしい。


「······どけ。いまからソイツにとどめをさす。邪魔はさせねえ」

 やはり麒麟は首を横にふる。

 月塊はじれて一歩詰めよった。

「このおバカっ!」

「いってえッ!」


 だしぬけに、右のくるぶしを固いもので思いっきりすくわれた。堪えかねてその場にうずぐまる。

「···なにしやがる! って···琴箭? オマエ」


 なんと、肩を刺されて苦しんでいたはずの琴箭が鼻息もあらく、「く」の字になった柱かなにかの残骸をポイとすてて、手をぽんぽんとはたいているではないか。みるかぎり、まったく傷にはひびいてなさそうだ。

 まさか重症のフリをしていたのか。

「アンタ、私をそんな風におもってるのね。そんな芸当もってないわよ、まだね」

 将来おぼえる気はあるのか。

「そんなことより」琴箭はツカツカと麒麟と月の間にわってはいる。


「殺すなんて駄目! せっかくの義行を台なしにする気?」


 月塊は心底わからぬ、といった顔で、口を半開いたまま、眉根をよせる。

「仙人は殺生しない! しちゃ駄目なの!」

「あぁ?」

 なんとしたものか、月塊は目を見開いて琴箭をみつめる。

 またひっかけているんじゃないか。そんな顔色だ。が、琴箭の瞳が真剣でゆらぐことのないのをみて、後ずさった。

「そんな······アイツはそんなこと一回も······じゃあ、いままで俺は······」


 なにか衝撃をうけたように立ち尽くす月塊をひとまずおいて、琴箭はもう一体の麒麟にむきなおった。

「あのとき、夢のなかで私と話したの、ひょっとして貴女(あなた)ですか?」

 肯定するように麒麟はひとつうなずく。

「いま私の傷をふさいでくれたのも?」

 肯定。

「······あの麒麟様がこんなことをしたの、貴女のため?」

 答えはなかった。

 麒麟はゆっくり膝をおると、倒れ伏しているもう一体の麒麟を愛おしそうに撫でた。



つづきを明日正午、更新いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ