琴箭の功を得、月塊、本懐を成就すること④
「まったく、どいつもこいつもこのようなものを······」
朱硯は手にもった巻物を、まるで薪をみるような目でみ、床にほうり投げる。
「いま必要なのは書ではない、兵だ! そのための財と糧だ! 乱世がすぐそこまで迫っているというに、なにを悠長な。こんなものでは何も護れはせぬ!」
「······が、かり、ね」
足下からした小さな声に、朱硯はギロリと眼を怒らせた。
「···なに?」
琴箭は痛みに顔をあおくしながらも、涙いっぱいになった眼で、朱硯を睨みあげる。
「きっと立派なかただって、おも、たのに······書を、かろんじるな、て。やっぱ、り」
「······」
「···父上が、い、てた······書を、害す、ひとはみな、滅ぶ。貴方、な、か、始皇、帝と比す気にもなら、な、けど、ねっ」
「···小娘がぁあ。この私に講釈をたれるかッ!」
「──おい···てめェ! それ以上やりやがったら!」
たまらず月塊が一歩ふみ出すと、朱硯はするどくそれも制した。
「貴様もだ! うごくな! 人の世にまぎれこんだ異物が! 俺の大義の邪魔はさせん!」
そう一気にまくしたてると、朱硯はさすがに頭に血がのぼったものとみえ、フ──と大きく呼吸し、気を落ち着かせる。
冷静さをとりもどした朱硯は、あらためて麒麟にむかった。剣を床におちた殷秋史にむける。
「お主がそこまで夢中になるのなら、始めからこうしておけばよかったわ。さあ! さっさとその凶賊を片付けてしまえ!」
怒りをあらわにし、こちらを睨みつける麒麟に、朱硯は威をもって命じた。
「······できぬのか? ならば······こうだ!」
片手で柄をもちあげ、逆さにかまえた刃先をまっすぐ書に突きだした。
つづきを明日正午、更新いたします。




