琴箭の功を得、月塊、本懐を成就すること③
その場の視線を独り占めにして、この家の主にして游徼の長、周朱硯は足をすすめる。
「この様は? いかにすればこのようになる」
痛撃をうけたせいなのか、麒麟の術もとけたらしい。朱硯は玉の床を踏んで容易に殿へとたどり着いた。
「······治安官さま」
朱硯を見上げながら、琴箭はそのままの格好で息をのむ。朱硯はくるりと振り向くと、麒麟にはっきりとむかって今一度問うた。
「答えてくれ!」
「······」
麒麟は黙して応えない。
······奥方としてより添っていた人が、まさか妖だったなんて。動揺して当然だ。
「治安官様、これは」
「いつまでかかっている! 天獣ともあろうものが情けない!」
──え
ふたたびこちらを向いた朱硯の瞳は、身がすくむほど冷たかった。ズラリと手にさげた剣を抜く。
「眼前の成果に拙速に心揺さぶられるなど、長生の者らしくもない。こうすればいいだけだろう、違うか?」
そのまま剣先をフイと動かし、琴箭の手から小刀をはじきおとす。
「あっ」
慌てた琴箭の肩先に、剣先が食い込んだ。
「ぁぁぁッ!」
「朱硯! お主!」
「···てめェッ!」
肩を抑えて倒れこんだ琴箭を、朱硯は一瞥すらせず麒麟につげる。
「そんなに気になるのなら私が見張っておいてやる。さっさと収めてしまえ。それとも」
ふと視線にとまった殷秋史のひと巻きを無造作につかみ上げる。
「こいつを質にしたほうがやる気になるか」
「······朱硯ッッ!」
麒麟の表情が一変した。




