琴箭の功を得、月塊、本懐を成就すること②
琴箭はゆっくりと、木簡を削るためにもってきていた小刀をとりあげ、深呼吸した。
こんな戯言、通じるとはおもえない。けどもう待ってても好機はこないんだ。
「まって! 麒麟様!」
さけぶと、スッと小刀を自分の喉に押しあてる。
「もう月塊をくるしめないで! でないと······私は喉を突きます!」
なにをいいだすのか。麒麟は愚か者をみる目つきをこちらへむけた。
「幼稚な。そんな虚言を私がとりあうと思うのか」
月塊が這いつくばりながらも、また身を起こすのを視界の端でとらえながら、麒麟は冷徹につげた。
「···いいの? 私の魂が必要なんでしょ?」
「汝に固執する必要などない。済めばまたつぎを探すまで」
だよね、わかってる。けど······
琴箭は麒麟の言を思い返す。
『我が身にもかえるだけの悲願があるということだ』
あんな口ぶり。麒麟だってずっと、たぶん私たちよりも長い間想いを抱えてきたはず。まったく気にならないわけがない!
「ホントにいいのかな? ホントに? 目の前に積年の大願成就があるんだよ? むざむざ見逃すってわけ?」
「······悪童が。賢しいぞ」
──仰るとおりだぜ。
月塊はハッと息をはきだすと、痛みで言うことをきかない全身に鞭うってたて膝をつく。
まったくアイツは。最初っからずっとああだ。小娘のくせに腹算用がきいて、悪賢くて。心底タチが悪い。妖をナメくさってる。
「······でも、ま。それだけに分かりやすい······か」
行き詰まったからって、そんな可愛げのある真似するわきゃない。なにか企んでやがるな。
「どうしたことだ、これは!」
誰のものでもない声がだしぬけにし、生まれつつあった緊張をはらった。三者はおどろいて視線をむける。
「周朱硯······?」




