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【完結】月琴伝  作者: 雲野 蜻蛉
殷秋史
32/403

琴箭の功を得、月塊、本懐を成就すること


「ぐあああッッ!」


 麒麟の顔が苦痛に歪んだ。とっさに月の手をふりほどいたものの、苦心の蹴りはたしかにその実体をとらえたのだ。

 足をふり抜いた月塊は、勢いそのままに回転と両腕の力で身軽に体勢を持ち直すと、すかさず体当たりをしかける。麒麟は傷めた右脚側の横腹を衝かれる格好となった。


 また入る!


 しかし、その予感はまさしく肩透かしに終わった。

 思いもかけぬ負傷に棒立ちとなってしまった麒麟だったが、月が突っ込んでくるのと同時、巧く後脚を抜く。

 呼び込まれるかたちとなった月塊は、蹴り出しの力が目一杯こめたられた後蹴りを喰い、今度は左へと吹き飛ばされた。

 一方の麒麟もいったん間をあけるように後方へと退いた。


「ッ······くそ」

 く、ぬかった。奴がもっと疲弊していなければ、右脚をもがれていた······!

 麒麟は腿でもちあげたまま、ぶらりとさがった右前脚をみつめる。

 気を落ち着けると、活をいれた。と、その傷から玉が湧き、痛手をおぎなうかりそめの甲冑と化した。

「だが、やはり決め手にはならぬ。汝の疲弊は極まれり。もはや術をなすことも叶うまい」


 ドォン······!


 麒麟の指摘をうらづけるかのような間で、月塊が放り出していた戟が、もとの大岩へと姿を戻した。

「終局だ」



 駄目だ。このままじゃホントに月塊は敗ける···! そうなれば、私もまたあの冷たい玉に逆戻りだ。

 琴箭は胸中の焦燥感に必死で抗う。

 私達の願いが潰えてしまう!

「······もう、こうするしかない···!」


今回も読んでくださって、ありがとうございました。

応援してくださった皆様にも、かさねて感謝もうしあげます。励みになります。

とりあえずのひと区切りまであとすこし。お付き合いいただければ幸いです

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