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【完結】月琴伝  作者: 雲野 蜻蛉
殷秋史
31/403

月塊、窮地にたつこと④


「たって! たちなさい、月!」

 琴箭は声のかぎりに叫んだ。


「アンタ、仙人になるんでしょ! その願いは誰よりも強いんでしょ! だったらたちなさいよ! 私がついてるから!」


「······へ···っ」


 月塊の口もとに、かすかな笑みが浮かんだようにみえた。ガシッと、その左手が麒麟の脚をつかんだ。


「······」

 無表情のまま、麒麟がその頭をより一層の力で地面に押しつける。

 勢いに負けたか、その脚をつかむ力はよわまり、わずかに指先にかかるほどとなって、いまにもほどかれるかに見えた。だが、


「!」


ふたたびその指先に力がともる。

 爪をたて、必死にくらいつくその左手は、ふたたび麒麟の脚を握りしめてくる。今度はどんなにその頭を地面にめり込ませようと、決して離れはしなかった。


「おのれ······ッ」


「······私がついてるから···ってか。言ったろう。相手は妖だ、人間なんかが何の役に立つもんかってよ······」


「へへん、おあいにく様。私は将来、天下の史実をあまねく書き留めるコなんだから。妖の一匹や二匹、面倒みてやるわよ。夢のなかでもそう言ったでしょ?」


「······? 夢、だ? なにを、能天気なこと···いってやがる」



 スウォォォォォォ───



 麒麟の右脚に印が浮きではじめた。


「······そんな体勢でまともに拳を振るえるとでも? いい加減我が仁も尽きはてた!」


 言のとおり、目標をすり潰すには充分であろう巨大な玉の杭が中空に出現し、月塊の頭にぴたりと狙いを定める。



「···拳? 誰が拳だけといったよ」



 グワッ。

 一気に麒麟の脚を持ち上げる力が加速する。


「なっ!」



「蹴るのはテメエだけの流儀じゃねえぜ!」



 身体が持ちあがった一瞬の間を逃さず、月の左足がしたたかに麒麟の脚を打った。



「ぐあッ······!」



読んでくださってありがとうございました。

以降は、また来週の火曜日から、ということにさせて下さいませ。

······なんだかちっとも進みませんね。反省します。

それにしても、毎日投稿なさっておられる方は、ホント、神ですね。

情けない限りですが、私にはムリです。

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