月塊、窮地にたつこと④
「たって! たちなさい、月!」
琴箭は声のかぎりに叫んだ。
「アンタ、仙人になるんでしょ! その願いは誰よりも強いんでしょ! だったらたちなさいよ! 私がついてるから!」
「······へ···っ」
月塊の口もとに、かすかな笑みが浮かんだようにみえた。ガシッと、その左手が麒麟の脚をつかんだ。
「······」
無表情のまま、麒麟がその頭をより一層の力で地面に押しつける。
勢いに負けたか、その脚をつかむ力はよわまり、わずかに指先にかかるほどとなって、いまにもほどかれるかに見えた。だが、
「!」
ふたたびその指先に力がともる。
爪をたて、必死にくらいつくその左手は、ふたたび麒麟の脚を握りしめてくる。今度はどんなにその頭を地面にめり込ませようと、決して離れはしなかった。
「おのれ······ッ」
「······私がついてるから···ってか。言ったろう。相手は妖だ、人間なんかが何の役に立つもんかってよ······」
「へへん、おあいにく様。私は将来、天下の史実をあまねく書き留めるコなんだから。妖の一匹や二匹、面倒みてやるわよ。夢のなかでもそう言ったでしょ?」
「······? 夢、だ? なにを、能天気なこと···いってやがる」
スウォォォォォォ───
麒麟の右脚に印が浮きではじめた。
「······そんな体勢でまともに拳を振るえるとでも? いい加減我が仁も尽きはてた!」
言のとおり、目標をすり潰すには充分であろう巨大な玉の杭が中空に出現し、月塊の頭にぴたりと狙いを定める。
「···拳? 誰が拳だけといったよ」
グワッ。
一気に麒麟の脚を持ち上げる力が加速する。
「なっ!」
「蹴るのはテメエだけの流儀じゃねえぜ!」
身体が持ちあがった一瞬の間を逃さず、月の左足がしたたかに麒麟の脚を打った。
「ぐあッ······!」
読んでくださってありがとうございました。
以降は、また来週の火曜日から、ということにさせて下さいませ。
······なんだかちっとも進みませんね。反省します。
それにしても、毎日投稿なさっておられる方は、ホント、神ですね。
情けない限りですが、私にはムリです。




